センタ−ニュ−ス

治験管理ニュース 第21号
平成18年1月16日
 例年になく寒さ厳しい日が続きますが、皆様輝かしい新年のスタートを切られたことと思います。治験管理センター一同、気持ち新たに今年も治験の推進に全力投球していく所存です。ご協力よろしくお願い致します。
 昨年の秋から12月にかけ、センターでは学会、研修生受け入れと大忙しでした。今回はその内容を盛り込んでいます。また新年にふさわしく、いつも大変ご尽力いただいてる地域医療連携推進部長の加藤先生の「治験・・・医師にとってのインセンティブ」を掲載しています。

治験・・・医師にとってのインセンティブ
地域医療連携推進部長 加藤道夫
  以前、この欄に拙文を載せてもらってから、早2年半が経ちました。その間、組織は独法化し、様々な職種横断的なプロジェクトがスタートし、それなりの成果が上がってきています。治験の分野においても、これまでの企業主導の治験だけでなく、医師主導の治験も行われるようになりました。また、国立病院機構による多数の大規模臨床研究もスタートしています。このような状況下において、多くの国立病院で次々と治験センターが開設されています。小生は舞鶴および姫路医療センターの治験センター開設にあたっての医師対象治験研修会と当院での平成17年度第2回治験研修会で「医師にとってのインセンティブ」と題する講演をさせて頂きました。
  臨床医にとって治験を行う大きな魅力は、より有効な薬剤を早期に使用できることと、研究費が取得できることですが、逆に診療に時間がかかりますし、治験症例報告書の作成にも多大な労力を要します。消化器科では平成15年に13件もの多数の治験を行いました。現在も7件が走っています。これらの治験にはきわめて順調に進むものから、まったくエントリーが進まず、途中で中断してしまうケースまで様々です。治験の成否に係わる最大のポイントは治験のデザインの良し悪しで、具体的には患者さんのインセンティブにどれだけ応えられるか、ということになります。それでは患者さんのインセンティブはといいますと、@最先端の治療が受けられる、A経済的負担が軽減される、B被験者負担軽減費が得られる等が挙げられます。A、Bは各治験ほぼ同様ですが、一番のインセンティブである@が得られるかどうかが最大の問題です。特に、RCTでは対照群の設定がきわめて重要になってきます。ヘルシンキ宣言の前文にもあります「被験者個人の利益が、科学的、社会的利益より優先する」という意識で治験デザインを作成することが強く望まれますし、そのように作成された治験を多数遂行していきたいと考えています。
  「医師にとってのインセンティブ」もまさにこのことであります。すなわち、@患者さんにより有効な治療をより早期に提供できる、ということですが、A受託研究費を取得できることも現実的な大きなインセンティブであることに間違いありません。さらに治験責任医師としては、CRCのみなさんや関係諸部門のみなさんと共通の意識ですが、B当該治験薬を一日でも早く世に出すことに貢献できるということが治験に係わる者としての最大のインセンティブではないかと考えています。


今回の特集は、自主研究申請時の注意点をまとめてみました。

 当院では疫学研究に関する倫理指針、臨床研究に関する倫理指針の適用となる研究(以下自主研究とする)は、治験審査委員会(以下IRBとする)で審査しています。新規自主研究の申請件数は年々増加し、審議時間も増加しています。今後も課題数の増加が予想されます。IRB審査の効率化をはかるため、平成16年度に審査申請のあった自主研究75課題についてIRB議事録から指摘事項を抽出しましたので、今後の申請時のご参考にして下さい。この内容は、「自主研究に対するIRBの指摘事項の分析」で、12月1〜3日に別府で開催された臨床薬理学会で発表しました。

 自主研究75課題中65課題(86.6%)に指摘があり、総指摘数は335件ありました。「説明文書の誤記」(114件)、「説明文書の追記・削除への指摘」(85件)が圧倒的に多くありました。(表1)これは、誤植や当院の定型文、フォームの不使用による修正が多く占められているためと思われます。
「説明文書の追記・削除に対する指摘内容」(85件)(表2)の約半数が「試験の方法」であり、ついで「利益と不利益」「プライバシーについて」でした。IRBは、患者様の研究への協力内容、被験者保護についての理解の2点を重視していると考えられます。

(表1)指摘事項(335件)の内容
説明文書の誤記 114件
説明文書の追記・削除 85件
説明文書のレイアウト 26件
研究方法 22件
連絡窓口の記載不備 22件
個人情報保護、匿名化 19件
プロトコールの誤記 19件
ICについて 9件
倫理委員会での検討 6件
費用、補償内容 3件
研究目的、研究背景、根拠 2件
研究対象 2件
統計学的考察 2件
提出書類の不備 2件
プロトコールのレイアウト 2件
(表2)説明文書の追記・削除(85件)の指摘内容
試験の方法 41件
利益と不利益 12件
プライバシーについて 12件
費用について 5件
疾患と治療のこと 4件
健康被害の補償 4件
自由意思 3件
倫理的配慮 2件
試験の目的 1件
ICについて 1件




 以上のことから、説明文書作成時は他の臨床研究の説明文書を参考に、当院の定型文、フォームについては治験管理センターにお問い合わせください。研究申請書類提出時、再度説明文書を読み返して提出してください。
 また、平成17年度より使用している「研究申請時チェックリスト」の利用を徹底してください。自主研究をされる先生方にお渡ししている「臨床研究様式」のフロッピーに「研究申請時チェックリスト」がありますので、自主研究申請の際にはチェックをした上で、申請書類とともにご提出をお願いします。

平成17年度CRC養成研修
 医薬品医療機器総合機構主催に当院から参加した二人に研修での学び、感想を聞きました。
治験コーディネーター養成研修を受講して
薬剤科 高原 由香

 「なぜ、治験が必要か?」、「人体実験≠ニ言われたら?」「臨床試験と一般治療の違いは?」という3つの問いかけ。CRC業務を経験したことのない私には、この講義を受講するまでえはどれも十分に答えることができなかったように思います。
 9月5日から10日までの1週間、CRC養成研修(講義)に行かせていただきました。治験は、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則、GCP省令を遵守して行わなければいけないこと、その科学性と倫理性を確保した治験実施のためにCRCに求められていることなど、治験に関わったことのない私には興味深く講義を受けることができました。
 特に一番大きく得るものがあったのは、インフォームドコンセントのロールプレイです。今、当センターでも注目されてますよね!患者を治験チームの主要メンバーとして正しく位置付けるために行うインフォームドコンセントの難しさを実感し、治験においてそのICが重要なわけ、実施に際しての留意点、大切なのはコミュニケーションなんだということも改めて考え直しました。
 1月には3週間、実習期間をいただいています。最初の問いかけの答えを私なりに考えてみて、CRC業務を実践で勉強してこようとおもっています。

治験コーディネーター研修に参加して
看護部  小野 恭子

 この9月から10月にかけて、日本薬剤師研修センター主催の治験コーディネーター養成研修に参加しました。私はこれまでは、「治験」について院内研修に参加するのみ(といっても1回ですが…)で、実際臨床で関わったことがありませんでした。その私が研修に参加したのは就職以来ずっと何か専門分野を持ちたいと思いつつ勤務していた中、先輩から誘われたのがきっかけでした。コーディネーター業務の内容を聞くと、私には荷が重すぎると一度は思いとどまりました。でもこれも違う視点で患者さんを看ることができるチャンスかと思い参加することに決めました。
 研修に参加し、実習を終えた今、患者さんに治験の説明をすることの難しさを実感しています。治験とは、薬の効果を確立するための試験であり患者さんにとっては疾患に罹患しただけでも不安なのに試験段階の治療を受けていただくということで不安を増強させてしまうことがあるのです。だからこそ患者さん自身が納得できる説明が必要となってきます。治験に参加するというのはあくまでも患者さんの自由意志ですが、白衣を着た人が説明するというだけで、参加を強制しているというイメージを与えてしまいがちです。いかに患者さんの立場に立ち考え、説明するかということが重要になるのです。「インフォームドコンセント」とは「説明と同意」と言われています。これは医療者側の理解で、患者さん側からすると「理解と選択」であると教わりました。なるほど、そのとおりだなと思いました。これまで、看護師として、たくさんの場面で患者さんに説明することはありましたが、その説明で理解が得られていたのだろうか…と今までの自分を振り返ることができました。それだけでも私にとって大きな習得でした。
 バイオ技術が進む現代次々と新しい薬や効用が発見されています。治験を推進することは、当院の目指す「より多くの患者により安くよい医療を」につながると思います。まだ実務をしていないので自分がどこまでできるかはわかりませんが、患者さんをはじめ医療スタッフから安心感を持ってもらえるようなコーディネーターになりたいと思っています。患者さんにより近い看護師であったという経験を活かし、常に患者さんの気持ちに立ち、より正確なデータになるように豊かな発想、確実な知識を持てるように自己研鑽していきたいと思います。


 治験管理センターでは、医薬品医療機器総合機構主催の「CRC養成研修」の実習生を計4名(薬剤師2名、看護師2名)を昨年11月7日〜11月25日、11月28日〜12月16日の期間、受け入れました。期間中、各CRCに同行し患者様との対応や責任医師・分担医師とのやりとり、検査科等他部門との調整の実際を見学してもらいました。また、CRC業務を項目に分け、担当を決めCRCが説明を行っています。研修生の方には知識と実務の統合が少しでもスムーズにできるよう研修プランを考えています。
 さらに、インフォームド・コンセント(IC)、スタートアップミーティングのロールプレイを組み込んでいます。研修生の方からは「今までの自己のICの振り返りができ、言葉遣いや話すスピードなど考えていきたい。」「被験者の方が今何を考えているか、不安に思っているか、患者様に合わせた説明の必要性を感じた。」また「通常の診療との相違点、対象者に的を絞った効果的なスタートアップミーティングを実践していきたい。」という言葉をいただきました。限られた期間でしたが、事務局業務、CRC業務、被験者対応について様々な感性で多くの学びを得ていただいたと思います。その学びを自施設で活かし、治験の推進にご尽力いただくことを願ってやみません。研修生を受け入れることで私たちCRCが自己の業務を振り返るよい機会にもなりました。
 期間中、他部門の関係者の方にはお忙しい中ご協力いただきありがとうございました。

「医療機器治験のための研修会(眼科領域)」の報告
 平成17年4月より「医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令」が施行され、医療機器の分野においてもGCPに準拠した治験の実施が求められており、機構本部主催で「医療機器治験のための研修会」が開催されています。第1回「骨・運動器対象」、第2回「循環器領域対象」に続き、昨年11月28日から3日間にわたり、「医療機器治験のための研修会(眼科領域)」がありました。最新の眼科医療と医療機器の動向にはじまり、眼科疾患の診断・治療、医療機器治験に関わる法制度、感覚器疾患を有する患者のケアと幅広い内容の講義でした。医薬品GCPとの相違点は、治験協力者、実施医療機関における専門的知識を有する職員の要件に「臨床工学技師」「臨床検査技師」「診療放射線技師」が追加され、治験機器概要書に「構造・原理に関する概要」が追加されたこと、治験依頼者の情報提供義務として、機器の取り扱いについて十分に習熟する必要があることから、必要に応じて教育、訓練を実施する旨の規定が追加されました。そして治験審査委員会の委員には、当該治験機器に関する専門的知識を有するものが含まれることが望ましいとされています。当院でも機器治験の特性をふまえながらGCPを把握し、標準業務手順書を作成し、依頼があれば受託できる体制作りを実施していかなければならないと考えています。
 東京医療センター・感覚器センター所長の三宅先生のお話では、感覚器疾患の医療費は比較的安価であるが経済的損失は失明によるものが1815億、低視力によるものが4000億にのぼるということでした。視力、聴力の低下は著しくQOLを低下させるということを学び、感覚器医療の重要性を再認識できたことも大きな収穫でした。

異動のお知らせ
起塚 聡(おきづか さとし)事務主任
平成18年1月より、神戸医療センターに転勤することになりました。わずか3ヶ月間でしたが、治験について多くのことを学ばせていただきました。ありがとうございました。

浜先 佳奈子(はまさき かなこ)事務
平成18年1月より、産休に入らせていただくことになりました。
治験管理センター事務業務に携わり、多くのスタッフに支えられてきました。ありがとうございました。

ニューフェイス紹介
池田 和靖 (いけだ かずやす)
 1月より事務の後任として配属になりました。
センターの事務は特殊なことが多く、日々奮闘中です。よろしくお願い致します。

編集後記
 今回のセンターニュースいかがでしたか?ご意見、感想がありましたらどうぞ治験管理センターへお寄せください。
 記録的な大雪に見舞われている昨今です。どうぞ皆様ご自愛ください。

 

発行:独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター
    治験管理センター


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