センタ−ニュ−ス

治験管理ニュース 第23号
平成18年7月11日
そろそろ梅雨も明けそうですね。日差しも真夏を感じられるようになってきました。皆様夏のEnjoy Planに気分ははじけていることでしょう。
 今回は治験管理センター副センター長で、電子カルテの導入にも奮闘している是恒先生の寄稿をはじめ、特集では治験のQ&Aをとりあげました。どうぞご覧ください。

 最近、新しい経口抗凝固薬治験の医学専門家的アドバイザリーを引き受ける機会が増えている。対象疾患として心房細動が大きなターゲットであり、当院では全国でもユニークな専門外来を開設していること、外来の最も重要なテーマとして血栓塞栓予防を掲げていること、日本循環器学会の心房細動治療ガイドライン作成委員であることなど、いくつかの理由が考えられる。だが、一番大きな理由(と私が思う)は、経口抗トロンビン薬のキシメラガトランの国際治験に参加し、多くの患者さんにご協力いただいた結果、日本で最も登録数の多い医師となったことである。
今は、東京に行ってしまった森下コーディネータとの(迷?)コンビで80才代の患者さんにも多数参加いただいた。なぜ経口の抗凝固薬開発が多くの製薬メーカーですすんでいるのか。多くの方々はご存知であるが、今現在使用できる唯一の経口抗凝固薬ワルファリンが、使いにくいお薬だからである。食べ物の影響、他の薬剤との相互作用があり、しかも安全で有効な薬物濃度の幅が狭いため、原則月1回の採血による効果判定での調整を行なわなければならない。開発中の経口抗凝固薬は、食物の影響はほとんどなく、投与量も一定で採血による効果判定は通常不要である。
 現在、そのほとんどが日本では第2相試験、海外で3相に入るか入らないかの段階であるが、今後第2相試験の結果、日本が国際試験の一部として参加できるか、あるいは独自に試験を組む必要があるかによって、日本で承認される時期が大きく異なってくる。1日1回投与でも可能なのか、出血合併症に対する具体的な対策はあるのかなど、課題も多い。一日も早く、より安全で使いやすい経口抗凝固薬が承認されることを切望する。

 治験の素朴な疑問にお答えします!Q&A

入院治験に対する質問!
Q1.入院治験と外来治験の違いはなに?
A. 治験は科学性、安全性を高めるためにプロトコールに遵守して行うものです。
入院、外来はそのプロトコールで決められているもので、特に違いがあるわけではありません。一般に、安全性がある程度確立し、投与後の副作用(有害事象)の観察が外来通院で十分カバーできるものは外来治験で行なわれます。しかし、外来での観察では不十分な場合や予測される副作用の対応で入院が考えられる場合などは、入院で実施することになります。また、入院治験になる理由の一つとして、薬物血中濃度測定が必要な試験で、「より正確な時間に採取する」「検査回数が多い」ために入院で行うことがあります。

Q2.治験薬の投与時間や採血時間が細かく決められているのはなぜ?
A. 治験では薬物動態試験が行なわれることが多くあります。薬物動態試験とは、薬物が体内でどのように吸収・代謝され、体外に排泄されるのかを確認する試験です。血中濃度や尿中・糞中濃度等を測定し有効量を検討し、安全性を確認していきます。この薬物動態試験では、内服〜採血までの時間が大きく影響します。そのため、薬剤の投与時間や採血時間がプロトコールで規定され、時間の把握も求められます。

Q3.指示の時間どおりに検査、処置ができなかった場合どうしたらいいの?
A. 試験である以上、全ての症例の条件を可能な限り同じにする必要があります。時間通りに検査採血ができなかったということは条件が変わってくるので、大変なことです。必ず守っていただきたいのですが、万が一、時間がずれた、採取できていないということに気づいた時はすぐにCRCにご連絡ください。「このくらいの時間のずれならいいか・・・」と自己判断はしないでください。検査には許容範囲があります。投薬も注射なら有効期間、内服なら全服薬回数の△%以上内服していれば可というケースがあります。プロトコールの確認や依頼者との調整をCRCが行います。

Q4.入院をしたにもかかわらず投与に至らなかった例があるのですがなぜ?
A. プロトコールによっては、患者様に治験参加の御同意をいただいて、スクリーニング検査を実施し、プロトコールで決められた基準内の結果が出て初めて試験に参加できるものがあります。スクリーニング検査を実施する時期はプロトコールで決められています。今回のケースは入院してスクリーニング検査を行ったものの、除外基準に抵触する結果が出たため参加できず、そのまま退院になったのです。患者さんの安全を担保できるよう、どのプロトコールにも除外基準が決められています。

Q5.採血の検体をバーチカルに入れず、CRCが検査科まで運ぶのはなぜ?
A. 基本的にバーチカルでの搬送も可能です。中には血清分離などの検体処理が、採血後、一定時間内に実施する必要があるものについてCRCが搬送している場合があります。外注の検体は、カルテ番号や氏名は記載せず、被験者識別コードを使用し匿名化され病院外へ出て行くので、検体の取り扱いについてはCRCも慎重に対応しています。


〜昨年度の入院治験のご紹介〜 
昨年度の入院治験の件数は4件で、ご協力いただいた患者様は12名でした。今年度は6月で既に2件の契約が成立しています。昨年度行われた入院治験の一部をご紹介します。
治験の種類 入院病棟 入院期間 症例数 治験の概要
肝性浮腫に対する治験
東10 約2週間 1例 利尿剤を投与していても肝性浮腫の残る患者様を対象に3日毎に効果と安全性を評価し用量を漸増して経口投与し、用量反応を検討しました。日本で初めて患者様に使用し、高用量では3000ml/日以上の尿量があることから安全性を確保することと、毎日の正確な蓄尿を設定しているため入院が必要でした。
病棟では採血、蓄尿・内服の確認に加え、特殊な機械を使い、体内水分量を測定しました。
心性浮腫に対する治験
東7 約2週間 2例 治験薬は肝性浮腫に対する治験と同じでした。利尿剤を投与していても心性浮腫の残る患者様を対象に、プラセボを含む4群の比較試験でした。
病棟では採血、蓄尿・内服の確認を行ない、特に投与1日目は投与時間を基準に採血や心電図の時間が規定されており、測定ポイントも多かったため、設定時間内に実施できるよう調整が必要でした。
進行再発結腸・直腸癌に対する治験
東10
東9
東6
東5
2泊3日 4例 この薬は既に承認され一般診療に使用されていますが、安全性確認のための治験であり、48時間持続化学療法であったため入院が必要でした。一般診療で使用される時は1000mlの希釈液でしたが、治験では500mlの希釈液であったため注意が必要でした。

入院治験に限らない質問!
Q6.治験途中に患者さまの病状が悪くなった場合でも、治験は継続しなければならないの?
A. 治験中は、診察を受けていただく頻度が多くなり体調の変化に早急に対応できます。 あくまでも患者さまの病状が優先ですので、中止になることもあります。

Q7.空シートや空容器をなぜ回収するの?
A. 服薬コンプライアンスの確認と向上のためです。治験の解析は、通常治験薬を完全に内服したと仮定して行なわれます。服薬率が何%になるかでデータの解析に影響を与えます。患者様の服薬状況を正確に把握することが信頼性のあるデータにつながります。

Q8.同じ項目なのに、院内検査と院外検査を両方するのはなぜ?
A. 治験では検査の測定条件を同様にするために外注検査指定をされます。しかし、外注検査の結果が返ってくるのは約3〜7日要します。医師が結果を早く知る必要があると判断した時は、同じ検査項目であっても、治験とは別にオーダーすることがあります。

院内治験担当者会議開催
 今年度より「治験管理センター運営会議」を改め「院内治験担当者会議」となりました。この会議の目的は責任医師・関連部門(薬剤科、放射線科、検査科、看護部、事務部)が集まり、治験実施の状況や問題点について意見交換を行い治験体制の整備をすることにあります。
 今年度は、4月21日(金)に開催しました。今後も年1回開催予定です。
 議題は
1) 平成17年度治験管理センターの活動について
人事異動、契約状況、実施率について報告をしました。
2) 逸脱事例について
実際当院であった事例を紹介しました。今年度のセミナーでも紹介し、注意を喚起しています。
3) 治験費用について
治験費用算定方法を説明しました。また、院長の采配で使える病院収入分より、関連部門への分配を院長にお願いしました。このお金は各部署の必要物品に使えます。
4) 臨床検査科より
ほとんどの治験には何らかの検査があり、検査を受ける患者数は増加の一途をたどっています。現在までの検査を受けた患者数の報告がありました。
治験に参加している患者さんが受診されると、各診療科だけではなく看護部、薬剤科、検査科、放射線科等関連部門の協力が必要です。みなさんの協力があってこそ、より正確なデータにつながります。これからもよろしくお願いいたします。

 治験管理センターでは、5月29日、6月29日に治験セミナーを開催しました。治験に必要な基本的事項と毎回トピックスとして、治験責任医師・分担医師の先生に講義をお願いし、より実践に即した知識を習得できるようにしています。治験責任医師・分担医師となる先生方には受講を必須としています。
第1回、第2回セミナーで、延べ57名の出席でした。その内訳は、医師33名、薬剤師15名、検査技師7名、看護師1名、事務職員1名でした。次回は患者様のケアに携わる看護師、特殊な治験費用の算定でお世話になる事務の参加が増えるよう案内していきたいと考えています。
第1回・2回セミナー講義内容
  「GCPについて」「CRC業務について
  「治験にかかわる診療費と被験者負担軽減費」
 《トピックス》
  第1回:「治験実施のための体制−関連部門との連携−」
         〜臨床検査診断部長 真能 正幸先生〜
  第2回:「治験責任医師の責務」
         〜脳神経外科医長 中島 伸先生〜
 未受講の先生方は第3回セミナーを秋に開催する予定ですので必ず受講してください。また治験の円滑な実施には関連部門との連携が欠かせません。コメディカルの方もこの機会に是非参加され、治験の基礎知識を身に付けてみてはいかがでしょう。

 

発行:独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター
    治験管理センター


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