センタ−ニュ−ス

治験管理ニュース 第25号
平成19年1月23日
 謹賀新年
  本年もよろしくお願いいたします。

昨年は各種治験の実施にご協力いただき有難うございました。今年度もあと残すところわずかとなりましたが、まだまだ新規の治験が動く予定です。治験管理センター一同、気を引き締め適正な治験の実施に向け邁進していく所存です。引き続き、暖かいご支援をよろしくお願い申し上げます。



治験専門職の立場で、今考えること
国立病院機構本部医療部研究課治験推進室
治験専門職 森下典子
 皆様こんにちは。ご無沙汰しております。私が東京に異動して、早いものでもうすぐ3年目を迎えます。現在私は、大阪でのCRC実務経験を生かし、治験専門職としてCRCの研修会の企画・開催や国立病院機構の各施設に対する治験の啓発・教育、CRCの実践指導、治験依頼者との対応等を行っています。
 これまで大阪医療センターしか知らずに働いてきた私にとって、毎日、とても貴重な経験をさせていただきながら、広い視野と世間を知ることの重要性を学んでいるところです。
 皆様もすでにご存知の通り、治験推進は国立病院機構が掲げている運営方針の1つであり、その目的は治験を通して臨床研究の質の向上にも貢献するというところにあります。これを実践するために各施設の基盤整備や人材育成の支援を行っているわけですが、施設訪問の際にはただ単に治験推進を一方的に説明するのではなく、各々の施設がおかれている状況(診療、看護、経営の現状)を事前にできるだけ情報収集した上で支援することを心がけています。全国の病院を訪問し多くの方々との出会いの中では、日本最大のネットワークである国立病院機構の職員であるという一体感を感じ、まさに「組織は人なり」であることを実感します。一方的に依頼ばかりしていては人を動かすことは難しいですが、相手の立場も理解した上で「なぜ治験を推進する必要があるのか」「これからどうして行くべきなのか」という本質をきちんと伝えて説明し、理解を得ることが本部と施設との信頼関係の維持にはとても重要な要素であると考えています。
 今、日本の治験環境はグローバル化の波を受けて大きな転換期に差しかかっています。来年度からは「治験次期活性化5ヵ年計画」が始動する予定です。この施策は国立病院機構の治験のあり方にも大きな影響を与えることは必至であり、国立病院機構本部と146施設との一層の連携が必要です。各施設のご努力のおかげで、国立病院機構の治験ネットワークも順調に機能しており、治験依頼者からも年々高い評価をいただいています。平成18年4月から平成19年1月現在までに国立病院機構のネットワークを通じた治験の依頼は42件でした。貴院を初めとするCRC定員化の施設には事業計画のための研究費のノルマが課せられており、治験を担当する医師の方々には多忙の診療の中で治験を実施するという厳しい状況ではありますが、医学の発展には臨床研究は不可欠であり、医療職の使命でもありますので、どうぞ今後ともご協力の程よろしくお願いいたします。また、大阪のCRCの皆さんは、これからも治験推進のために遺憾なく優れたコーディネート力を発揮してくださいね。東京から応援しています!





特集 医師主導治験と企業治験の違いと実施状況
 「薬事法の一部を改正する法律」の施行により、H15年7月より医師が主体となって行う臨床研究の実施に際して、医薬品・医療機器メーカーが未承認の薬物・機器をその実施者に提供することが認められ、医師主導治験の実施が可能となりました。医師主導治験では、実施者である医師が、企業治験での依頼者と同様の責務を負わなければならず、その責務は多岐に渡ります。医師主導治験、企業治験の違いを見てみることにしましょう。
 治験の実施までの流れは右に示すように、医師主導治験ではIRB審査の承認後厚生労働省への治験の届出となります。
 自ら治験を実施しようとする者の責務としては、各種手順書等の作成、治験実施計画書の作成、治験薬概要書の作成、総括報告書の作成、説明同意文書 の作成、モニタリングや登録業務など業務委託をする場合は、第3者機関との契約締結を行う必要があります。また、治験薬管理や副作用情報の収集、健康被害の補償措置についても講じておかなければなりません。説明同意文書の作成、治験薬管理以外は、すべて企業治験では依頼者が担うべき責務です。それを自ら治験を実施する者が担うことになるのですから、大変な労力と期間を要します。
 安全性情報の取り扱いに関しては、医師主導治験では薬の適応拡大については一部軽減されています。企業治験では、「検査及び画像診断、治験薬の同種同効薬に係る費用」が保険外併用療養費(以前の特定療養費)の支給対象にならず、治験薬投与中に限り製薬会社が負担をすることなっており、被験者の負担はありません。しかし、医師主導による治験では被験者が負担することになります。また被験者負担軽減費についても、医師主導治験では必ずしも支給されるわけではなく、被験者に金銭的負担が増えることがあります。
塩酸ベプリジル治験
 本剤の保険適応は心室性の頻脈性不整脈であり、心房細動への適応は承認されていません。しかし、これまでの研究から上室性の頻脈性不整脈にも有用であることが確認されており、抗不整脈薬ガイドラインでも、心房細動のリズムコントロール及びレートコントロールいずれにも有用とされています。実際の臨床でも治療に抵抗性の心房細動に対して、専門医によりしばしば使用されているのが現状です。平成16年に日本心電学会が心房細動に対する効能追加を厚生労働省に要望しましたが、妥当性を示すデータ不足により認められませんでした。そこで、日本医師会治験促進センターの支援を受け、医師主導治験として計画されたのが本治験です。

 平成17年11月にIRBで承認され、1例目の患者様がエントリーしたのは平成18年7月でした。エントリーまでに期間を要した理由は、@すでに塩酸ベプリジルを使用している症例が多いこと。A全例にワルファリン投与が必要であること。B1年以内の持続性心房細動に限定されているが、当院では慢性の心房細動の方が多いこと。C毎日、電話電送心電図の送付とチェックが必要であり、対象の患者様が少ないことがあげられます。現在試験は継続中で、ICを4名の方に実施し、4名全員にご同意をいただきました。すでに1名は終了となり、1例はご本人の希望で中止、2名の方は継続中という進行状況です。

新型インフルエンザワクチン治験
 鳥インフルエンザの感染で養鶏場の鶏が大量死したことは皆さん記憶に新しいことだと思います。香港等で高病原性鳥インフルエンザのヒトへの感染が認められ、新型インフルエンザの出現の可能性が高まっています。わが国でもパンデミックへの対策が急務となったことが背景にあり、国の政策の一環として実施されました。

 8月10日にIRB申請を行い、12月28日に治験終了届を規制当局に提出するという予定でスタートしました。そのためICを開始してから同意取得、治験薬の接種、その3週間後に事後検査(採血)を実施し、症例報告書の提出という過密なスケジュールでした。
 限られた期間で健常人の被験者募集を行い、職員の参加も可能であったためポスターを作製し、参加を募りました。結果、29名の職員と1名の一般の方にご協力いただきました。全国で300名の方にご協力をいただき、無事年末に治験終了届が提出されました。




医療のIT化については、2001年12月に厚生労働省より「保険医療分野の情報化に向けてのグランドデザイン」が出され、以降、多くの医療機関において電子カルテの導入等が進められています。当院も2006年4月に電子カルテが導入されました。治験はGCPで規定されていることも多く、診療録も原資料として扱われるため、通常の診療とは違った保存上の注意が必要です。これら治験の実施に及ぼす影響を検討することは重要と考えられ、「電子カルテ環境における治験の現状と問題点」と題して、臨床薬理学会で以下の内容を発表しました。
【目的・方法】電子カルテの導入が治験に及ぼす影響を検討することは重要である。治験実施医療機関183施設(国立病院機構病院87、大学医学部等附属病院87、その他9)にアンケート調査を実施し、治験業務から見た電子カルテ運用上の問題点と今後の課題を検討した。
【結果】133施設から回答(回収率60.3%)があり、内、電子カルテ導入施設は31であった。治験項目等のデータ保存は、テンプレート等による電子化保存(3施設)、様式はないが電子カルテで記録(11)、カルテシールによる紙媒体保存(13)、電子カルテと紙媒体の併用等(3)であった。テンプレート等による電子保存をしているのは、電子カルテ導入時期が2004年以降の施設であった。直接閲覧は、電子カルテ内容を印刷した紙媒体で行っている施設(4)と電子カルテで行っている施設(26)があった(無回答1)。電子カルテによる直接閲覧では、全施設で治験依頼者用端末が確保されていた。しかし、4施設では医療機関職員が操作した画面を依頼者が閲覧する方式であり、依頼者が自由に操作できるのは22施設であった。その内、依頼者のIDは、依頼者専用・参照権限のみは12施設で、他は医療機関側の常時立会で依頼者専用・編集権限のあるID(1)、職員共用・編集権限有で職員が立会(5)、共用・参照のみ(3)であった。また、システム上で該当患者以外へのアクセスを制限しているのは依頼者専用・参照権限のみのIDを用いている施設の内の5施設のみで、他は直接閲覧時に医療関係者が監視する方式であった。
【考察】電子カルテ環境においても治験では紙媒体の併用が行われる可能性は高く、紙媒体/電子保存のいずれを原資料とするかの決定が必要であり、データ保存についてSOP等で規定しておく必要がある。医療情報システムの安全管理では、利用者の識別及び認証、情報の区分管理とアクセス権限の管理が必要である。また、依頼者側も、不測の操作によるデータ改変を防止するため、直接閲覧に必要な権限のみの専用IDの発行を希望している。モニターに正当なシステム利用者としてのIDと適切な利用権限を付与することが必要と考える。直接閲覧の方法が「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に対応した適切な方法で全て実施されているのは5施設(19%)のみであり、早急な対応が必要である。

―CRC養成研修研修生受け入れ終了―
 今年度も例年通り、日本薬剤師研修センター主催、治験コーディネーター養成研修の研修生1名を平成18年11月に3週間の日程で受け入れました。
 誠光会 草津総合病院 木原 美弥子さんの実習を終了したあと提出いただいたレポートより感想、学びを聞くことが出来ましたので一部ご紹介いたします。
 『インフォームド・コンセントのロールプレイを通し、治験を認知していない患者様に参加いただくためには、治験薬を使用する利益・不利益を適切に伝え、不安や疑問を解決できるような支援が大切であり、通常診療との相違点についても把握をしておく必要があることを学びました。IRBの見学では治験実施計画書が妥当なものであるか、説明文書が被験者にとってわかりやすいかを納得のいくまで話し合われており、委員の高い倫理観のもと被験者の安全が保護されていることを実感できました。また外来、病棟、検査科、放射線科、それぞれのスタッフの協力がなくては適切かつ迅速公平な治験は実施できないことを知り、治験コーディネーターは患者様のサポートだけでなく、先生、医療スタッフの相互協力のサポートもする重要な役割を担っていることが分かりました。薬剤師の治験コーディネーターとしてしっかりとしたビジョンを持ち、治験に携わっていきたいと思います。』
 これから治験事務局を立ち上げるという木原さんの今後の活躍を治験管理センター一同期待しています。

第3回治験セミナー開催案内
今年度業務最後のセミナーとなります。治験責任医師・分担医師を行うにはセミナーの受講が必要です。
治験責任医師・分担医師の先生方で今年度未受講の方は必ず受講して下さい。
受講のない場合、来年度の責任医師・分担医師になることができないこともありえますので注意して下さい。
セミナー講義内容
 1.GCPについて
 2.CRC業務について
 3.治験にかかわる診療費
 4.トピックス:「治験相談について」(仮題)
            眼科科長 斎藤 喜博先生

 1月より治験管理センター部長が楠岡から是恒に変わりました。また副センター部長に多和昭雄を迎え新体制となっております。
 今後ともご協力、よろしくお願いいたします。






 平成18年12月16日(土)13:00〜15:00に、災害医療棟2階視聴覚室において患者情報室勉強会が開催されました。参加者は33名で、半数は医療関係者でしたが、一般の方も熱心に聴かれていました。
 副院長の楠岡から、薬の開発にかかわる治験、臨床試験について、その必要性と実際の流れが説明されました。その中で、医療従事者にとっても興味深い話がありました。1800年初めにわが国で華岡青洲が、曼陀羅華の花など6種類の薬草を使って全身麻酔薬の研究を行いましたが、イヌ・ネコでの実験(非臨床試験)、母・妻の協力による臨床試験の後、乳癌の手術への実用までの過程はまさに治験と同様の手順だったそうです。また、1880年代に高木兼寛が、海軍の航海で通常兵食と改善食との比較実験を行い、脚気と食事の関係を検証したことは現在で言うEBMにつながる臨床研究の手法だったそうです。このようにわが国では古くからの歴史がありますが、最近ではなかなか治験が進まない現状があります。それに対し国としてどう取り組んでいるのかを、新木厚生労働省医政局研究開発振興課長から説明がありました。平成15年から全国治験活性化計画がスタートし、現在はその評価をもとに、新たな治験活性化5ヵ年計画として策定されています。その内容は、実施医療機関の整備、実施する人材の育成・確保、国民への普及と参加支援、効率化と企業負担の軽減などです。治験管理センターも、この計画をもとに治験の推進に取り組んでいきたいと思います。


編集後記ご意見、ご感想がありましたらお気軽に治験管理センターまでお寄せください。年度末に向け、お忙しい日々が続くと思いますが、どうぞご自愛ください。


 

発行:独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター
    治験管理センター


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