センタ−ニュ−ス

治験管理ニュース 第28号
平成19年11月20日
乳がん治験の現況と今後
外科医師 増田慎三

 乳がんは女性の癌の中で最もなりやすい癌で最近増加傾向にあります。乳がん診療の最近のキーワードは「乳癌検診」と「薬物療法を中心とした個別化治療」です。マンモグラフィを併用した乳癌検診の浸透で早期がんの割合が増えましたし、たくさんの有効な薬の開発でたとえ癌になっても適切な治療で治癒できる人も増えています。乳がんの薬物療法は、女性ホルモンの働きと関係する内分泌療法、いわゆる抗がん剤(化学療法)、そしてHerceptinに代表される分子標的治療に分類されますが、どの領域でも新規薬剤の開発と個別化治療への挑戦が急速に進んでいます。
 新薬の効果と安全性の評価、それが治験の最大の目的ですが、乳癌でもここ2〜3年で10を超える試験を契約・実施しています。全くの新薬の場合はその有効性が本当に期待されるのかどうかその不安という欠点はありますが、特にその対象となる再発患者さんにとっては、限られた現行治療以外に新たな治療の選択肢が増えるメリットがあると考え、積極的に実臨床の中に取り入れるとともに、さらに新たな治験契約を結べるような渉外活動を常に心がけています。患者さんにとって治験に参加するメリットに、CRCによる適格なスケジュール管理と親身な心身のケアがなされることも重要なポイントです。治験に参加されていない患者さんから、乳腺外来の診察室や待合で奮闘するCRCのサポートを受けたい!と希望される声も聞きます。
 わが国の新薬承認は海外に比べて5年以上遅い!との批判から、治験の乳癌分野も大きな変革が来ています。Lapatinib, SutentなどGlobal trialへわが国も参加し、世界と同時に治験を開始することも増えてきました。英語のプロトコル、安全性情報、CRFと言葉の壁を感じるときもあります。しかし、Globalにおける日本の評価が試されている時期でもあり、ここでの我々の頑張りが、今後のわが国の乳癌診療を支えるのだと信念を持って取り組んでいます。評価のポイントは、症例集積のスピードと治験の質、そしてコストといわれます。質は日本のGCP準拠と当院治験センターのスタッフのおかげで全く問題なし!スピードの課題を克服するには、地域の関連病院との連携が重要と考え、我々は治験実施状況などの情報共有システムの構築をプランニング中です。実施施設数は限定されますから、患者さんにとってメリットがあると認識していただければ、紹介をお受けするような地域連携を目指しています。アジアの治験の場がコストを理由に、中国にシフトする傾向もあるようです。Global基準に合わせるようなメーカー側からの規制も始まっていますが、今はそこまで深く考えずに、まずはスピードと質で日本の価値を世界にアピールしたいものです。骨転移に対するZometaとDenosumabの比較試験は世界と同じスピードで予定よりも多くの症例を集積でき、高い評価を受けています。
 臨床検査・病理・放射線科や循環器科などなど多くのスタッフ・先生方に支えていただいている乳癌の治験です。この場をお借りして感謝申し上げますとともに今後とも益々ご支援をよろしくお願いいたします!

 
 日本では、新薬の承認時期が諸外国よりも数年遅いというドラッグ・ラグ問題が深刻になっています。これまでは海外で実施された治験データを活用するブリッジングスタディが促進されてきましたが、今後は国内での承認を海外と同調させ、有効で安全な医薬品を一日も早く患者さんの元へ届けるために、国際共同治験(グローバルスタディと呼ぶ場合もあります)の実施が望まれています。国際共同治験とは、同一の治験実施計画書を用いて2カ国以上の国で同時に実施される臨床試験のことで、多くのデータを早期に集積でき、各地域での重複した試験を回避できることから開発の効率化が図られ、高騰する開発費用の削減に繋がり、世界同時承認などメリットがあります。


 日本における国際共同治験の実施はまだまだ始まったばかりで、2007年1月時点で日本が組み込まれているのは6件にとどまっています。6件中4件が癌を対象とした治験であり、癌領域で国際共同治験の取り組みが進んでいます。(製薬協ニューズレター1月117号より)
 今年度は当院でも国際共同治験の受託が数件あり、確実にその実施件数は増加しているようです。 当院では現在2課題の国際共同治験が実施中で、新たに3課題の受託契約を締結し、これから開始予定です。この5課題の内訳は、3課題が癌領域で、あとは循環器領域、救命領域となっています。

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 国際共同治験では、患者登録を国際電話やFax、インターネットで行ったり、症例報告書を海外へFaxすることがあり、これらが使用できる回線の整備が必要です。

 Visit毎に必要な検査キットが組まれ提供を受けることがほとんどですが、そのセッティングを医療機関で実施する場合もあります。また検体は海外の検査会社へ航空輸送となるため、通常は検査会社が回収に来ますが、搬送のみを行う搬送業者が間に入ることがあります。そのため提出検体の伝票処理や梱包などを決められた手順で医療機関が行うことがあり、その管理が不十分だと正確なデータを収集できないことになるため、注意が必要です。

 通常国内治験では1患者1薬剤番号ですが、国際共同治験の場合は、処方ごとや数ヶ月ごとに薬剤番号が変わるものもあるので、その度に薬剤番号を手順どおりに(国際電話、Fax、インターネット等)取得する必要があります。また内服薬は海外と同じくボトルで患者さんに提供となるため開け方や服薬指導は注意して行っています。

 国際共同治験では、英語の治験薬概要書、治験実施計画書、症例報告書が必須文書であり、その和訳は参考資料となるのが一般的です。症例報告書は英語で記載されており、併用薬や合併症も英語での記載が求められます。また、検査キットや画像を送付するための伝票記載や連絡等も英語です。
 現在、CRCはこれらの症例報告書に四苦八苦しながら対応していますが、今後国際共同治験の増加が見込まれる中、CRCには高い英語力が求められています。

 国内治験に比べ煩雑な業務が増加し、CRCは日々悪戦苦闘していますが、責任医師の指導のもとモニターの協力を得ながら適正な実施を目指し努力しています。国際共同治験ではアジアの代表として日本人のデータを世界に出すことが重要であり、治験に関わるスタッフ全員が良いお薬を少しでも早く患者様に届けられるように日々がんばっています!



第7回CRCと臨床試験のあり方を考える会議
9月15−16日 パシフィコ横浜
北川が、「医師主導治験における標準手順書共通化の検討」について発表しました。
当院で過去に行われた3課題の医師主導治験の標準業務手順書を比較検討し、当院の医師主導治験における各手順書の共通化について検討しました。

第61回 国立病院総合医学会
11月16−17日 名古屋国際会議場
石山が「当院における看護職の治験及び研究倫理に対する認識調査」について発表しました。
平成14年度、平成18年度のアンケート調査の比較より、今後の看護師への治験教育のあり方が示唆されました。

第28回 日本臨床薬理学会
11月28日−12月1日 宇都宮
名畑が「当院における患者組み入れの速さ、実施率の変化−全国平均値との比較−」について発表 します。

 治験は保険外併用療養費の選定療養に分類されています。
通常の保険制度では、保険料を多くの患者に有効に使用するため、原則として点数が設定されているのは有効性・安全性が確認された診療内容に限定されています。(図1)
 しかし、国民の医療に対する意識の変化、価値観の多様化、医学・薬学の急速な進歩等の近年の医療環境の変化により、必要な医療の確保をしながらも患者のニーズの多様化に対応する必要性がでてきました。そこで保険で対応する部分を保険外併用療養費として給付し、それを超える部分は患者が負担する(自費)という制度が保険外併用療養費制度です。(図2)
 治験の場合は、保険外併用療養費制度の自費の部分が依頼者負担となります。(図3)
 医薬品の治験における保険外併用療養費について
@対象:薬事法での承認申請のために実施されている治験(承認後の製造販売後臨床試験は対象外)
A期間:実際に治験薬、対照薬、観察期用プラセボが投与れている時期(前観察期、後観察期は対象外)
B対象の診療:検査、画像診断、治験薬、対照薬、治験薬の予定とされる同様の効能・効果を有する医薬品
          以外。(これについては依頼者の負担となる)
C保険外併用療養費が支給される期間の検査、画像診断の取り扱い:治験に係るものだけでなく、併科受診時
  などの他の疾患に係る場合も治験依頼者負担となる。


 

発行: 独立行政法人 国立病院機構
大阪医療センター 治験管理センター


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