センタ−ニュ−ス

治験管理ニュース 第29号
平成20年2月26日


IRB委員として
免疫感染症科 山本 善彦


 IRB第二委員会は当院での自主研究を審査するために、月に1度、開かれています。私は、このIRB第二委員会の委員として、自主研究を審査しています。そういう私もかつては申請を出し、審査される側でした。なかなか合格印をくれないIRB審査に臨むのは、ずいぶんとプレッシャーでした。自分の部署が多施設共同研究に参加することが決まると、書類をいっぱい作らなければなりません。ぶ厚い共同研究の資料を見てみると、実際のIRBの審査で突っ込まれそうなところが有ったりして、ため息をついていました。一方、立場が変わり、審査する側の理屈が理解できてくると、かつて何度も頂戴してきた辛口な審査委員の言葉にも「仕方が無かったかもしれない」、と思うことも出てきました。国立病院機構大阪医療センターで行われる自主研究に、病院としてお墨付きを出すわけですから、「いっそう、しっかり吟味しなければならない」と次第に考えるようになります。ヒトという生き物は身勝手なものです。
 審査は切って捨てるための機会ではありません。実は、堅苦しいことばかり言わずに、実のある研究を早く進めていただきたいと思っています。他の委員の方々もそう思っているように感じます。しかし、無秩序に何でもかんでもやって良い、というわけにはいかないのも、ご存知の通りです。研究のゴールはIRBの承認を得る事ではありませんので、必要最小限の努力と時間で明解に研究の全容を明示して、要点が吟味されれば良いと、私は思います。
 それと、当院発、つまり、大学や他の施設からの依頼ではない、自発的な研究をどんどん出していただきたいと思います。手作りの研究計画書は漏れや抜けがあるかもしれません。しかし、一度、他人の目に触れ、修正され承認されれば、今後はそれを元にして、様々な研究計画に応用が可能だと思います。ただ、説明文書と同意書は患者さまに直接提示するものなので、細心の注意をもって吟味されます。ですから、説明文書や同意書のところだけ重点的に修正を求められた経験のある先生方も多いと思います。
年度が代わり、新たな自主研究を計画される先生方も多いと思います。私は、自主研究の積み重ねこそが医学と医療を進歩させると考えています。IRB委員として、研究の流れを止める堰(せき)ではなく、流れを整える堤(つつみ)のような働きをしたいと感じています。


 治験の実施においては、その質の確保とともに治験期間の短縮と速やかな患者組み入れ、実施率の向上が求められます。今回我々は、2004年度、2005年度に終了した治験の患者組み入れの速さを全国平均値と比較することにより、当院の実施状況を検討しました。
【方法】当院で2004年度、2005年度に終了した治験25課題(U、V相)のうち契約症例数4例以上で全施設の平均値のデータが得られた12課題(2004年度5課題、2005年度7課題)を対象としました。エントリー状況を@First Patient In、A契約数の4分の1症例が組み入れられるまで、B契約数の2分の1症例が組み入れられるまで、CLast Patient Inの4段階に分け、契約〜各段階までに要した日数を課題毎に算出しました(実施率が100%に達していない場合のLPIはエントリー最終期間までの日数)。@〜Cの各期間を、全国平均*1に対するパーセントで表し(当院の各期間の日数/全国平均×100%)、年度毎に比較を行いました。
患者組み入れ状況
2004 2005
図1 図2

 結果は、2004年度5課題の平均は@152%、A204%、B131%、C128%(図1)。2005年度7課題の平均は@81%、A91%、B73%、C73%(図2)と、2005年度では各期間とも全国平均より短く、組み入れが早期に実施されていました。また、実施率も2004年度54.5%、2005年度78.1%と2005年度は有意に向上していました。(P<0.05)。
 また、契約〜First Patient Inの期間が短い治験では実施率が高く、長い治験では実施率が低い傾向にありました(図3)。2005年度で契約〜First Patient Inが長い課題は2課題で、治験経験の少ない診療科〔責任医師〕での治験であり、治験対象に想定していた患者が適格基準に合致しない例が多かったことや、患者組み入れへの意識が薄く対象患者を見逃していたケースがあると考えられました。
 治験経験が浅い診療科では、対象と考えられる患者のプレスクリーニングと慎重な症例数設定が重要であるといえます。
 当院では、治験セミナーで説明しているように2004年度契約分より当院独自の出来高算定払い*2を導入しており、2005年度終了治験はほぼ全課題で本方法が適用されており、医師のインセンティブが高まったことも早期エントリーにつながった一因と考えられます。当院独自の出来高払い算定が、組み入れスピードに有効に働いていることが示唆されました。
 今後も治験実施状況の評価を定期的に行い、適正かつ効率化を目指した治験の実施に取り組んでいきたいと思います。

*1:データは各依頼者の協力により提供いただきました。
*2:実施率が同じでも、組み入れが遅れると請求金額が減るというシステム
図3




平成19年度第2回治験実務担当者会議
2008年2月19日(火)14:00〜16:00
 近畿ブロック内の国立病院機構施設の治験実務担当者で年2回会議を開催し、治験に関する最新情報の共有や、治験実施における問題の解決策を検討しています。今回は以下の議題で行いました。
1.治験の依頼等に係る統一書式について
 新たな治験活性化5カ年計画では、「治験の効率的実施及び企業負担の軽減」が重点的取り組み事項の一つに挙げられており、治験のスピードアップとコスト低減を図るため、医療機関と企業の役割分担を明確にし、治験関係書式の共通化や、治験データのIT化による効率化をいっそう推進する必要があります。その取り組みの成果として、平成19年12月21日付医政研発第1221002号厚生労働省医政局研究開発振興課長通知「治験の依頼等に係る統一書式について」が発出されました。日本病院薬剤師会の治験事務局セミナーで情報提供された内容を伝達していただきました。
(大阪地区での統一書式の説明会は2月26日に開催されました。)
2.病診連携による治験候補患者の紹介システム
 新たな治験活性化5カ年計画で、当院は拠点医療機関としての役割が求められています。期待される役割の一つに「拠点医療機関のネットワークを核とし、地域に存在する患者紹介システム等を活用することにより、希望者が治験・臨床研究に参加しやすい環境が整備されている」とあります。当院では昨年9月から検討を開始し、モデルケースとして消化器科・肝疾患治験での治験候補患者の開業医からの紹介システムをスタートさせました。この取り組みについて情報提供しました。
3.治験実施状況の報告
 各施設から、今年度の治験実施状況の報告がありました。国立病院機構全体では今年度は治験の依頼も増加しており、当院は目標額の2億円に到達できる見込みですが、近畿ブロックの他の施設では依頼数が減っている施設も多く、治験推進のための工夫について意見交換しました。






      
   治験は依頼者〔製薬会社〕と責任医師となる先生の間で合意があれば、治験管理センターの事務局へ正式に治験の依頼がきます。その後の手続きを以下に示します。
   事務局ヒアリングでは契約の書類や費用のことを、CRCヒアリングでは依頼者より治験薬の開発の経緯やプロトコールの概要について説明を受け、当院での実施における問題点、説明文書内容(事前にCRCで修正案を提示)を検討します。
 この後、治験依頼が申請され、受託研究審査委員会(IRB)で治験実施に問題がないか、被験者の人権が十分に保護されているかが審査されます。そして、IRBで承認されれば契約が締結され、準備が始まります。
 各治験課題は担当CRC(主・副2名)でプロトコールを読み込み、実務面での問題点、プロトコール内容の疑問点を抽出し、依頼者の担当者と打合せをします。また、責任医師、関連部署とも打合せを行い、通常業務の中でスムーズに治験実施ができるよう調整します。
 打合せが終了したら関係者が集まり、治験の概要、当院での実際の進め方、関係者の役割分担が共通認識できるようにスタートアップミーティングを開催します。また、治験薬を管理し調剤・交付を行う薬剤科でも治験の概要と治験薬の管理・取り扱いの説明会を開催します。
 以上の事前準備が整ってはじめて治験が開始されます。この事前準備段階でどれだけ実務を想定して細かい手順を決定できるかが、スムーズな実施、質の高い実施に繋がります。一方、スピードも求められますので治験の契約が成立すると速やかに開始できるよう準備する必要があります。


 

発行: 独立行政法人 国立病院機構
大阪医療センター 治験管理センター


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