第1号 平成20年5月26日

 臨床研究推進室News第1号をお届けします。これまでご愛顧いただいた治験管理センターニュースは、今年度よりバージョンアップし、生まれ変わりました。これからも治験や臨床研究の最新情報や当院での取り組みなど内容を更に充実させていきたいと思います。どうぞ皆様お楽しみ下さい。



外来化学療法と治験
外来化学療法室 戸高 絹代


 点滴や注射によるがん化学療法は入院を中心に行われてきましたが、支持療法の発展と診療報酬の改定により、最近では、大半が外来で行われるようになってきました。2002年に開設された外来化学療法室は、外来でのがん化学療法を安全に快適に行うことを目標に運営しています。利用患者数は年々増加し、開設当初は週3回の診療で132件/月でしたが、徐々に増加し、昨年は560件/月以上に増加し、毎日の診療となりました。
 がん化学療法を外来で行うのは、一般診療だけでなく、治験にも及んでいます。一般に承認された薬剤とは異なり、治験薬は投与方法や前投薬、バイタルサインの測定など治験ごとの制約があり、新薬においては、未知の副作用の可能性もあります。外来化学療法室において、利用件数とともに治験件数も増加しており、現在では、50件/月を超えることもあります。
 がん化学療法における看護師の役割は、安全・安楽・確実にがん化学療法を実施することであり、投与管理だけでなく、意思決定のサポートや症状マネジメント、セルフケア支援なども行います。治験薬の投与は、患者さんだけでなく投与管理している看護師にとっても緊張感を伴うものです。多くの一般化学療法も並行して行わなければならないので、同じ薬剤においても前投薬や投与順番が異なることがあるのでなおさらです。そこをサポートしてくれるのが治験コーディネーターです。医師の説明後より、補足説明や治療による有害事象のモニタリングなど複雑な治験薬治療の過程をサポートしてもらいます。有害事象が発生した際には、治験コーディネーターを通して治験担当医師と情報の共有と対策を検討します。治験のスタートアップミーティングに参加することにより、治験薬の投与方法や有害事象について情報を得ることができ、安全に実施するための方法を検討できます。治験に関わることで、がん医療における新たな治療についても知ることができ、看護に対する意欲の向上にもつながっています。医師主導型臨床試験は一般診療の中で行われており、治験のようなサポートはできていません。このようなサポートができるのが理想ですが、現在の医療体制では人的余裕がなく困難です。そんな状況でも、同職種、他職種間での連携、協働を行い、今後も安全に治験や臨床試験が行えるように努力していきたいと考えています。



4月の組織編成で臨床研究部は、臨床研究センターに昇格し、2部9室となりました。それに合わせて、治験管理センターも臨床研究センター所属の室の1つとして、「臨床研究推進室」となり、新たなスタートを切ることになりました。スタッフ一同、これまでにもまして治験の円滑な支援に取り組んでいきたいと考えています。

 平成19年度は治験の契約件数が53件、契約症例数が359例で、実施症例数は製造販売後臨床試験を合わせると毎月200人前後にのぼりました(表1)。契約額は約3億9300万円で、請求金額は過去最高の2億3600万円となりました。
 19年度に新規契約した治験は、外科、消化器科、循環器科が多く、外科は抗がん剤、消化器科はインターフェロン、循環器は抗凝固薬の治験が主体でした。契約件数が増加した分、CRCの活動量も全般に増加がみられ、特に被験者対応数は新規治験で来院回数が多い課題もあり、昨年の1.4倍となりました(表2)。科別では外科が1548人、消化器が716人、循環器が221人(いずれも対応延べ人数)で、この3科で対応被験者の9割以上を占めました。今年度はこれ以外の診療科での治験の受託もすすむよう臨床研究推進室として支援を考えていきたいと思っています。
 また医師主導治験の支援を17年度から実施しており、18年度2月から開始となった治験を昨年1年間を通し支援をしました。必要書類の作成や中央事務局との密な連携をとりながら現在も支援を実施中で、契約症例は追加を重ね23症例100%実施に至りました。その他開業医との連携による患者紹介システムの構築にも着手し、希望する患者様が治験に参加しやすい環境を整備していきたいと考えています。この取り組みについては改めて特集でご報告したいと思います。

平成19年度受託研究 (表1)

契約件数 契約症例数 実施症例数
治験
<医師主導治験を除く>
53件 380例 233例
製造販売後臨床試験 9件 99例 63例
合計 62件 479例 296例
補正実施率 77.6%
W相その他 104件 2,566例

CRC年間活動(延べ件数) (表2)


H17年 H18年 H19年




被験者対応数 818 1848 2578
インフォームド・コンセント 142 126 156
有害事象の対応 19 31 22
電話相談 107 185 239


調
他部門との調整 28 7 13
スタートアップミーティング 34 22 38
薬剤科説明会 11 10 22




ヒアリング 43 64 50
モニタリング 196 314 329
監査 4 6 2
実地調査 1 0 1



 治験の実施に際しては、医療機関と治験を依頼する企業(治験依頼者)で様々な文書が取り交わされます。これらの文書はGCPの決まりに従って取り交わされるはずですが、医療機関によってその書式や記載項目に違いがあるため、特に治験依頼者にとっては医療機関毎に異なる文書の作成が必要となり過大な負担となっていました。この現状を改善し、治験の効率化を推進するため、平成19年12月に治験を実施する全ての医療機関において使用可能とした統一書式が作成され、厚生労働省医政局研究開発振興課より通知が発出されました。
 当院では従来、国立病院機構における統一様式を使用していましたが、これを受け、標準業務手順書の改訂やホームページ内容の変更など準備を整え、4月より統一書式による運用を開始しています。
 統一書式は一部の医療機関のみが必要とする事項を不要とし、簡素化と統一化を図るとともに、統一書式遵守を推進することで、治験の効率的な実施を目指しています。
 書式の内容はGCPで求められる必要最低限の情報に限定されており、従来の内容よりも簡素化されています。また、従来作成されていなかった医師主導治験用の書式が新たに作成されました。なお、各医療機関にて書式や記載項目を変更すると、「治験の効率的な実施」という目的から逸れてしまうため、各医療機関が統一書式の内容を変更することは禁止されています。




 毎年4月に開催している『院内治験担当者会議』を今年は25日に行いました。この会議では治験実施状況の報告を行い、臨床研究推進室の管理及び業務執行に関することや当院での治験実施上の懸案事項等について検討・審議を行うことを目的としています。今年は各診療科の治験責任医師を初めとして、看護部、薬剤科、検査科、放射線科、事務部の代表の方、計18名が出席しました。
臨床研究センターの組織改変について

4月から“臨床研究センター臨床研究推進室”として始動したこと、臨床研究推進室とIRB委員の異動 に関する報告を行いました。
拠点医療機関としての活動について

平成19年度の治験実施状況報告やCRCの業務量について報告がありました。昨年度、当院はNHO146 病院中受託研究実績2位という好成績で、それに伴いCRC業務量が大幅に増加しました。また治験における病診連携の取り組みについても是恒臨床研究推進室長より報告がありました。
研究協力費について

治験を実施する上で、いつもお世話になっている各部門に今年も研究協力費をお支払する予定にしています。
臨床検査科治験関与件数について 

治験検体の取扱い数も昨年は一昨年よりもさらに増加しています。

 一日も早い新薬の誕生には、治験に携わる人たちが互いに連携をとりながらそれぞれの役割を果たすことが重要です。年に1回のこの会議も、様々な職種の人たちがそれぞれの立場から治験の現状を認識して、治験推進に向けて取り組む姿勢を確認しあえるための良い機会になっています。私たちはこれからも患者様が安心して治験に参加できる環境作りを心がけていきますので、ご協力よろしくお願いします。


 治験では、ご参加いただく患者様に治験のことをわかりやすく説明し、自由意思に基づいた同意を取得する必要があるため、インフォームド・コンセントは重要なプロセスとなります。一般の治療薬とは異なり、有効性と安全性が確認されていない未承認薬が使用されるため、患者様には必ずしも利益があるとは限りません。また治験に特有の用語(「プラセボ」「無作為割り付け」「二重盲検」等)は患者様にとっては馴染みのないものが多く分かりやすい説明が重要となります。GCPでは患者様に説明すべき事項として18項目が規定されており、治験の説明文書にはこれらが必ず記載されています。治験の目的に始まり、その方法、治験が研究を伴うことや予期される利益・不利益などなど、一度説明を受けただけでは十分に理解するというのは難しい内容です。CRCは患者様の理解の程度を確認しながらその人に合った説明を心がけています。そして説明を行った当日には返事はいただかず、必ず一度持ちかえり、家族とも相談し熟慮した上で参加の意思を決定していただいています。
 医療におけるインフォームド・コンセントを法律で規定しているのは唯一GCPとなっています。そこでは文書による同意が義務付けられていますが、欧米に比べると日本では個人として明確に意思表示を行うことにまだまだ不慣れです。インフォームド・コンセントは、医療者と患者様の信頼関係の上に成り立つ行為ですし、治験参加中に何度となく繰り返される過程でもありますので、その都度患者様が本当に理解し、納得のいく自己決定を行えるように私たちCRCはケアの質も向上させていかなくてはなりません。



昨年の治験管理センターニュースから「治験のABC」の連載を開始していますが、皆さまはどのくらい 治験に詳しくなりましたか?今回からは1年間の成果を試すために治験に関するクイズをシリーズ でお出ししますので、あなたの治験オタク度をチェックしてくださいね。(回答は本頁一番下)
<問題1>「GCP」について、正しいものを1つだけ選べ。
@GCPは臨床研究全体に適応される省令である。 AGCPは「医療法」に基づいている。
BGCPは「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」である。 CGCP違反をすると罰則規定がある。




4月に臨床研究推進室では人事異動がありました。治験主任の加藤 亜紀とCRCの櫻井真知子が去り、森下師長、坂本治験主任を新しいメンバーとして迎えました。治験においてはベテランのお二人です。推進室のスタッフも心強く思っています。

看護師長CRCとして着任しました。146ある国立病院機構でもCRCの看護師長職の配置は当院が初めてです。恵まれた環境で職務に就ける幸せと同時に責任の重さも痛感しています。治験・臨床研究の支援と併せて、看護職の新たなキャリアパスとして今後につながる活動を行いたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

12年ぶりに大阪医療センター勤務を命ぜられました治験主任の坂本です。当時は、治験管理センターもなく、CRCもいなくて、薬剤科で治験の事務局業務に少し携わっていました。その後、前施設で4年ほど治験を経験しましたが、奥が深く、まだまだわからないことだらけです。皆様のご指導のほど、よろしくお願いいたします。
今年度の自主研究IRB
開催日・申請締め切りのご案内
開催日(予定) 申請締切日
H20年4/22(火) H20年3/26(水)
H20年5/27(火) H20年4/23(水)
H20年6/24(火) H20年5/28(水)
H20年7/22(火) H20年6/25(水)
H20年8/26(火) H20年7/23(水)
H20年9/30(火) H20年8/27(水)
H20年10/28(火) H20年10/1(水)
H20年11/25(火) H20年10/29(水)
H20年12/16(火) H20年11/26(水)
H21年1/27(火) H20年12/17(水)
H21年2/24(火) H21年1/28(水)

編集後記
 今回初の発行となりました臨床研究推進室Newsいかがでしたでしょうか?治験や臨床研究の身近な話題から世界の動向まで幅広い内容を皆様に提供したいと考えています。
 梅雨の時期が目の前ですね。皆様どうぞご自愛ください。
治験Quiz解答:B


発行:独立行政法人 国立病院機構
大阪医療センター 臨床研究推進室




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