第2号 平成20年8月8日

 臨床研究推進室News第2号をお届けします。今回は特集で当院の「病診連携の取り組み」をご紹介しています。
7月から新メンバーも加わり、推進室も一部改装しました。
気持ち新たにがんばっています!


時は流れて
薬剤科長 小森 勝也

 「引き受けて欲しい」とすが るように語りかけた。 「やっぱり僕ですか・・・」と小さくつぶやいた。窓の外に向けた視線を私に返した時、目元が穏やかに微笑んでいた。初代薬剤師CRC政道主任(現 姫路医療センター副薬剤科長)の誕生の瞬間である。
 あれから10年。当時の治験管理センターは臨床研究推進室へと名を変え、今やCRCも薬剤師2名、看護師5名の総勢7名を数える。「CRCの支援なくして質の高い治験を実施することは不可能」という実りの言葉が波紋のように拡がる度に、苦悩に満ちながらも種を播いたお二人(政道主任、森下副看護師長 現 看護師長)の姿が鮮烈に蘇る。急激な流れの中で自身は7年振りの復帰となる。治験を取り巻く大きな環境の渦に呑み込まれ、戸惑いは隠せないが感慨深くもある。
 病気に苦しむ患者さんがいれば医療が存在する。医療があれば医薬品が必要とされる。患者さんが望むことを突き詰めれば、有効で安全な医療を受けたいという一点に集約されるのではないか。医薬品の使用を最終的に決めるのは、患者さん自身である。薬剤師は「薬剤の適正な使用のために必要な情報を提供しなければならない(薬剤師法第25条の2)」と法的に提供義務が規定されている。情報は人から人へ提供されるものであり、患者さんが自己決定し得るよう、事実に基づいた生きた情報をわかりやすく伝えることが不可欠である。つまり、医師とは別の視点から有効性と安全性を検証し、患者さんを保護する機能が求められているのである。当然ながら治験をサポートする薬剤師は、IRBの中においても、薬学的専門家としての角度から役割を果たすことが期待されている。現状を鑑みれば実効に困難を伴うが、IRBの副委員長として責任を全うすべきであると肝に銘ずる。
 自民党科学技術創造立国推進調査会は6月5日、臨床研究を国際水準へ引き上げる対策を盛り込んだ「臨床研究強化戦略」を取りまとめた。戦略の一つに欧米に遅れをとる医療現場への橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ TR)や臨床研究の実施支援体制が必要と指摘している。国が基礎研究成果をいち早く治験に着実に結びつけ、国民に提供できるシステム構築をめざす時流の中で、薬剤師CRCは垣根をはずし、エビデンスに基づき充分な説明と人権保護を保証するTRC(トランスレーショナルリサーチ・コーディネーター)に向かって駒を進めていくのであろうか。


病診連携の取組み
「新たな治験活性化5ヵ年計画」の拠点医療機関に期待される体制・機能の1つに「拠点医療機関間のネットワークを核とし、患者紹介システムや被験者データベース等を活用することにより、希望者が治験・臨床研究に参加しやすい環境が整備されている。」とあります。これを受け私達は昨年度病診連携システムを構築し実際に診療所・医院等から患者様を紹介してもらう取り組みを行ったのでここに紹介します。(上記図参照)
@ 診療所・医院等への治験の広報と公開範囲について当院の窓口である臨床研究推進室(旧:治験管理センター)から治験依頼者に問い合わせた。
A 被験者リクルートの趣旨、手順について、まず大阪府医師会に説明した。次に大阪府医師会から大阪府医師会所属の診療所・医院等に当院の病診連携の意図を周知してもらった。
B 当院の治験責任医師から診療所・医院等へ被験者リクルートを依頼した。
C 開業医は自所・自院の通院患者へ治験について広報し、選択・除外基準を満たす可能性のある患者に簡単に説明を行う。開業医がスムーズに説明できるよう事前に当院から「治験対象患者様ご紹介のお願い」「患者様への簡単な治験説明書」「専用の紹介用紙(治験責任医師名、紹介目的が記載された患者紹介FAX用紙)」を診療所・医院等に掲示するポスターとともに郵送した。
D 選択・除外基準を満たす可能性のある患者がいた場合、当院の地域医療連携室に専用の紹介用紙を用いFAXで送信してもらい、当該診療科の予約を取る。
 結果昨年度は4名の紹介がありましたが、残念ながらみなさん除外基準に抵触しご参加いただくことはできませんでした。しかし、うち1名は他の治験に参加いただくことができました。
 地域に通院する患者様についても最新の医療にふれる機会が与えられる選択肢が増えることは良いことであると考えられます。今後もこの病診連携システムを活用することで治験への参加を希望する患者様へ広く情報提供をしていきたいと思います。




   今回は、治験に参加され被験者となられる患者様へのCRCの関わりを紹介します。
まず治験の基準を満たす患者様がおられたら担当医から連絡があり、説明同意文書に基づいて治験の補助説明を実施します。説明には少し時間がかかりますが、わかりやすい表現で説明するよう努力しています。ご同意された場合はその日から診察に同席し、検査や次回来院のスケジュールを確認します。治験専用診察券(通称:ゴールドカード)、治験参加カードを交付し、携帯していただきます。
来院毎に、@身体状況の観察、A服薬状況の確認、B有害事象の観察、C他院・他科受診の有無の確認、D併用薬の確認(薬剤名・投与量)、等を行います。当日に採血等の検査がある時は、結果が出てから診察しますので、患者様には少しお待ちいただく場合がありますが、待ち時間を利用して@〜Dの観察を行っています。これは、安全性を確保するための大切な確認となります。
治験期間中は診察に同席し、症状の観察や、検査の予約確認、次回来院予定日が祝日の場合や患者様のご都合が悪い場合の日程を考えたりと、患者様の安全を守りつつ治験実施計画書から逸脱しないように、様々なことにアンテナをはりめぐらせています。
 治験終了時には今後の治療方針を確認し、不安なく通常の診療へ移行されるよう支援します。ゴールドカードと治験参加カードは回収し、元の診察券をお返しします。



治験セミナー報告
第1回を5月23日(金)に、第2回を6月16日(月)に開催しました。参加者は第1回が45名、第2回が40名と多くの参加がありました。
現在治験を受けていない診療科にも治験を受託することを目的に全診療科の科長宛に出席を依頼しました。その結果、現在治験を実施していない診療科からの参加が8診療科ありました。
トピックスとしては、第1回は是恒臨床研究推進室長より「新たな治験活性化5カ年計画について」と題して治験に対する国の取り組みの話でした。第2回は外科の三嶋医長より「治験・臨床試験で悩まないために」として広く臨床試験を行う意義、心構え、実施上のポイントの話でした。
 治験の責任医師、分担医師になるためには本セミナーの受講が必須です。今年度最後の第3回セミナーは10月に予定しています。是非ご参加ください
《診療科別参加人数 5月・6月合計》





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看護師向け治験セミナー開催
今年度から、看護師の皆様にも、治験の意義や必要性をもっと知ってもらおうと「看護師向け治験セミナー」を開催しました。第1回目は7月11日(金)18〜19時に行い、26名の方の参加がありました。治験参加中患者様へ直接看護を行ったことがある方が7名、治験参加中患者様へ接したことがある方が11名でした。内容は「治験とは何か」「治験の流れ」「当院での治験の実施状況」等でした。終了後のアンケートでは内容はおおむね期待通りであったと答えた方が10名、内容がわかったと答えた方が10名でした。今後の看護に活かせると答えた方が17名でした。
第2回は11月14日(金)18:00〜19:00に予定しています。
内容は「治験に参加する被験者の心理」、「被験者の看護のポイント」です。多数の参加をお待ちしています。



治験Quiz??―その2―

前回のクイズその1はいかがでしたか?今回はCRCについての問題です!(回答は本頁一番下)

<問題2>「CRC」について、正しいものを1つだけ選べ。

@ 治験に参加できそうな患者様がいれば、CRCがインフォームドコンセントをする
A CRCは治験薬の処方、スケジュール管理すべてを行う
B CRCは治験に関わる多職種のコーディネートをする
C CRCとして働くには、認定CRCの資格が必要である。


CRC養成研修の受け入れ
 機構本部治験研修会より、7月から9月にかけて、1期1週間の実習に5期にわたって1名ずつ実習にこられます。
 また、秋には日本薬剤師研修センター実施の「治験コーディネーター養成研修」から実習に来られる予定になっています。


新メンバー紹介
治験コーディネーター:木島かおり


7月1日付けで、国立精神・神経センターの治験管理室から出向して参りました木島かおりです。前施設では1年半ほどCRCとしてパーキンソン病、多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症、認知症、てんかんなど、精神科、神経内科の分野の治験に携わってきました。こちらでは新しい分野の治験に携わることとなります。病院にも仕事にも早く慣れるよう努力していきます。ご指導の程よろしくお願い致します。

治験Quiz解答:B

平成20年度 学会発表予定
10月11〜12日
 「第8回 CRCと臨床試験のあり方を考える会議in金沢」
11月21〜22日
 「第62回 国立病院総合医学会」
東京国際フォーラム
12月4〜6日
 「第29回 日本臨床薬理学会」
京王プラザホテル
編集後記
今回の臨床研究推進室Newsはいかがでしたでしょうか?
夏真っ盛りです。
熱中症にはくれぐれもお気を付けください。
皆様にとって楽しい夏になりますように。
次回は10月にお会いしましょう。


発行:独立行政法人 国立病院機構
大阪医療センター 臨床研究推進室




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