第3号 平成20年11月28日

 秋晴れの心地よい季節となり紅葉も見頃を迎えます。
今回のNewsでは、 ご栄転された前地域医療連携推進部長の加藤先生からのメッセージをお届けします。
また、特集では平成21年4月1日から施行される「臨床研究に関する倫理指針」の改正についてご紹介します。実りの多い秋にちなみ盛りだくさんの内容となりました。どうぞご覧下さい。


多くの治験に携わって・・・

南和歌山医療センター 副院長
元:大阪医療センター
地域医療連携推進室部長 消化器科科長
 加藤 道夫

 以前、この欄に2度目の拙文を載せてもらってから、また、早3年が経ちました。小生は、11月1日付けで南和歌山医療センターに異動し、本年末までは併任医師として大阪医療センターでも勤務いたしますが、治験責任医師は解除していただきました。
 はじめて治験責任医師となって以来、50件以上の治験に携わり、優秀な新薬が一般臨床の場で使用できることに貢献できたことは、大きな喜びです。また、得られた受託研究費は多くの機器の購入と、旅費、人件費を調達することができ、消化器科の運営に不可欠なものになっています。このように治験に携わることには大きなメリットがありますが、責任医師として多大な負担も被ってきました。
 まず第一に希望する治験を確実に請け負えるよう運動しなければいけません。請け負った後に、IRBにてのプレゼンテーション、慣れるまではかなり大変でした。IRBでOKがでて、はじめて治験がスタートしますが、次なる負担は患者さんのリクルートです。すでに、多くの候補者がおられる場合はいいのですが、そう思っていても除外基準に悉く抵触し、参加していただけない時は、厳しいというか難儀なプロトコールを恨んでしまいます。そして、リクルート率が悪いことは、皆、責任医師の責任みたいに、スタッフの多くはあまり協力してくれません。自ずと自分の症例が大半になりますが、CRCさんの説明からはじまる外来診療には、普通の患者さんに比べて時間がかかるため、ただでさえ長い診療時間が益々長くなってしまいます。約2年ほど、治験患者さん専用の診察日を設けていましたが、その曜日が都合の悪い方がおられたり、普通の診察日から溢れて、治験外来日に来院される方が増えて潰れてしまいました。その後は、通常診療の間で治験患者さんも診るようになりましたが、インセンティブをつけるのに苦労しました。と、いうような様々な負担がありましたが、最後まで完遂された時、しかも良好な治療効果が得られたときは責任医師としての充実感に浸れます。
 患者さんにとって治験に参加するメリットは、@最先端の治療をうけて病気が良くなる、A経済的負担が軽減される、B被験者負担軽減費が得られる等が挙げられます。A、Bは各治験ほぼ同様
患者さんにとって治験に参加するメリットは、@最先端の治療をうけて病気が良くなる、A経済的負担が軽減される、B被験者負担軽減費が得られる等が挙げられます。A、Bは各治験ほぼ同様ですが、一番のインセンティブである@が得られるかどうかが最大の問題です。特に、RCTでは対照群の設定がきわめて重要になってきます。ヘルシンキ宣言の前文にもあります「被験者個人の利益が、科学的、社会的利益より優先する」という意識で治験デザインを作成することが強く望まれますし、そのように作成された良質の治験を、南和歌山医療センターでも多数行いたいと考えています。


臨床研究に関する倫理指針改正

「臨床研究に関する倫理指針」が改正されました。
この指針は、世界医師会によるヘルシンキ宣言に示された倫理規範や日本での個人情報の保護に係る議論等を踏まえ、また、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第8条の規定に基づき、臨床試験の実施にあたり、研究者等が遵守すべき事項を定めたものです。
この指針は臨床上で実施されるあらゆる臨床研究に適応されます。
(治療法・予防法の研究、看護研究等)
強制力はありませんが、臨床研究を実施するうえで重要 な「信頼性」「科学性」「倫理性」が確保できる内容になっています。(右図参照)
今回の指針は平成20年7月31日に告示され、平成21年4月1日に施行になります。

主な改正点は以下の6点です。
1. 倫理審査委員会関係
  • 委員会設置者に特定非営利法人、国立大学法人等が追加され機構本部に委員会が設置できるようになりました。
  • 他の医療機関の倫理審査委員会を利用することが可能になりました。
  • 迅速審査ができる場合を明記することで、簡単な審査内容のものは迅速審査でよいことになりました。
  • 倫理委員会設置者に委員会名簿、開催状況等の公開と、年1回の厚生労働大臣への報告が義務付けられました。
2. 健康被害に対する補償について

医薬品、医療機器を用いた介入を伴う研究に対してのみ健康被害のために保険その他の必要な措置を講じること、また補償内容を予めインフォームドコンセントを行うことが義務づけられました。
3. 研究者等の教育の機会確保について

研究倫理その他必要な知識について講習等の受講が義務づけられました。
4. 臨床研究計画の事前登録について

研究責任者は侵襲及び介入を伴う研究の場合、事前に指定されたデータベースへの登録を義務付けました。
5. 臨床研究の適切な実施確保について

臨床研究機関の長に対し手順書の作成、厚生労働大臣への報告等が義務付けられました。
また、研究責任者には報告義務が課せられました。
6. 観察研究、試料等の保存及び他の機関等の試料等の利用について

介入を伴う研究と観察研究を定義し、指針上の取扱いについてそれぞれ区分されました。

詳細がお知りになりたい方は以下のURLにアクセスしてみてください。
http://www.jmacct.med.or.jp/report/other.html
当院でも平成21年4月の施行に向け準備しています。




 以前にGCPについてご紹介しましたが、治験は被験者の人権や安全が何よりも優先的に守らなければなりません。そのためには何を理解すべきでしょうか?
 表1は一般診療と治験との違いを表しています。ともすれば混同されがちですが、この違いを研究者自身がしっかりと理解することが必要です。患者さんの状況に応じて柔軟に対応する一般診療とは異なり、治験には「窮屈だ」「ややこしい」など煩わしいイメージがあります。しかし、前相までの試験で安全性が確認された治験薬の量、投与法を守り、有効性や安全性を確かめるための検査を規定通りに行うことが被験者保護につながります。科学性無くして倫理性の保証はありえません。科学性と倫理性は一方を重視するのではなく、研究者としての科学的視点と被験者を保護する倫理的視点をバランスよく持ち合わせる事が必要です。CRCもこのバランス感覚を身につけられるよう日々研鑽しています。
 表1 一般診療と治験の違い
一般診療 治験
効果のわかった薬
副作用がわかっている
効く薬を使う
経過を見ながら変更
さじ加減がある
保険診療
本人が恩恵を受ける
効果をこれから確かめる
副作用は未知
プラセボもある
計画通りに進める
さじ加減はない
保険外併用療養費の適応
本人も恩恵を受けることはあるが、主として次世代が恩恵を受ける


どちらかに偏らずバランスよく!



第3回 治験セミナー開催
 10月23日(木)18:00〜19:30、当院緊急災害医療棟視聴覚室に於いて治験セミナーを開催しました。 このセミナーは年3回開催し、治験責任医師・分担医師をはじめとして治験に関わる職員、治験に興味のある職員を対象として治験の基礎的知識を習得してもらうことを目的としています。
今回は24名の方の参加がありました。

《セミナー 受講風景》
 内容は「GCPについて」「CRC業務について」「保険外併用療養費と被験者負担軽減費」の基礎編と、トピックスとして「研究費の使い方」についてでした。今年2月にGCPが改正され国立病院機構でも国立病院機構本部中央治験審査委員会(CRB:Central Review Board)が設立されたという最新情報の提供がありました。また、今回は研究者にとって大切な研究費の使い方についての話もあり、質疑も活発に行われました。今回は当院の治験セミナーを見学するために、
名古屋医療センターからCRCが来られました。
治験責任医師・分担医師になるためには本セミナーの受講が必須です。受講証の有効期間は3年です。今年度で有効期間の切れる方は、次年度第1回目を5月頃に予定していますので、必ず受講してください。



平成20年度第1回 「近畿ブロック治験実務担当者会議」
 去る9月5日(金)14:00〜16:00、大阪医療センター緊急災害医療棟2階研修室において「近畿ブロック治験実務担当者会議」を開催しました。この会議では、ブロック内の国立病院機構施設と国立循環器病センターの治験実務担当者(臨床研究センター長、CRC,治験事務担当者等)が出席し、治験に関する最新情報の共有や治験実施における問題点の解決策を検討しています。平成11年度から毎年2回開催しており、今回は13施設より33名の出席がありました。
 今回は意見交換のほかに、特集にある「臨床研究に関する倫理指針」の改正についての講演があり、会議出席者だけでなく院内職員も聴講しました。
講演後、各施設での今後の対応について倫理審査委員会の体制整備、審査結果の公開、研究者等の教育に関して意見交換をしました。改正された指針の施行は平成21年4月であるため、その間に各施設で取り組むべき課題が明確になりました。当院でもHPへの審査結果公開や院内研修会の充実など次年度に向けて課題がクリアできるよう検討中です。


CRC実習の受け入れ
 今年度は、国立病院機構本部主催の「治験研修1」から5名の実習生を受け入れました。これから自施設で治験管理室を立ち上げる予定の方から既にCRCとして配属されている方まで、背景は様々でした。1週間(5日間)の短い期間ですが、当院での治験の実際をIRB見学やIC場面、被験者対応を通して実習して頂きました。受け入れる側の私たちCRCも、観察される緊張感と説明するためには自分の行動を言語化する必要があり、日頃の業務を見直すよい機会になります。実習生からの新鮮な質問内容は「目からうろこ」のこともあり、実習期間中のディスカッションは大切にしたいと思います。
例年はこの他に主催:独立行政法人医薬品医療機器総合機構、実施:(財)日本薬剤師研修センターの治験コーディネーター養成研修の3週間実習を受け入れていますが、 マッチングの結果、残念ながら本年度は当院への実習生は来られないため、 この秋は私たちが積極的に様々な研修会に参加する予定です。



治験Quiz??―その3―

今回は治験実施中の費用についての問題です!
(回答は本頁一番下)

<問題3>
治験実施中の費用負担について誤っているものを1つだけ選べ
@ 治験は保険外併用療養費制度が適応され、医療費の一部を依頼者(製薬企業)が負担するため、被験者の費用負担が軽減される
A 治験薬が投与されている期間の検査・画像診断は全て依頼者負担となる
B プラセボを服用している場合、保険外併用療養費制度は適応されない
C 薬の承認後に実施される製造販売後臨床試験は保険外併用療養費制度は適応されない

編集後記
 今回の臨床研究推進室Newsはいかがでしたでしょうか?研究者に必要な「臨床研究の倫理指針」の改正について特集を組みました。皆様の研究にお役立て下さい。ご意見・ご感想は臨床研究推進室までお寄せ下さいね。
 これから寒さも本番となり、インフルエンザなど感染症の流行る時期になります。年末に向けて忙しい日々が続きますが、皆様お身体ご自愛下さい。
 次回は年明け1月に
お会いしましょう。
治験Quiz解答:B


発行:独立行政法人 国立病院機構
大阪医療センター臨床研究センター臨床研究推進室




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