第6号 平成21年7月31日


■ p2 特集〜国際共同治験の現状
■ p3 セミナーの報告
治験実務担当者会議の報告
CRC養成研修の実習生
 受け入れのお知らせ
■ p4 治験のABC
治験Quiz
学会のお知らせ


 今年度第2号の臨床研究推進室Newsをお届けします。1面では、受託研究審査委員会の委員である、外科の黒川医師からの寄稿を掲載しています。2面は、最近ますます増えてきている国際共同治験の当院での現状についての特集です。どうぞご覧ください。


受託研究審査委員として
外科   黒川幸典
 私は、平成20年4月より当院での受託研究審査を担当する審査委員の1人として、毎月の委員会に参加しております。当初は、私のような若輩がこのような重要な役目をお任せいただくのには若干抵抗を感じましたが、楠岡院長ならびに是恒臨床研究センター長にご任命いただいたからには、微力ながらもできるだけ貢献させていただこうと日々頑張っている次第です。
受託研究に限らず臨床研究というものは医学の進歩に欠かせないものではありますが、研究遂行にはご参加いただく患者様の人権が守られることが大前提です。かつては、タスキギー事件など多くの非倫理的な研究が世界中で行われていましたので、ヘルシンキ宣言や臨床研究に関する倫理指針などで多くの規制がなされるようになりました。しかし、個人情報保護法が施行された当初に各方面で過剰な反応がみられたように、人権尊重ばかりが行き過ぎると肝心の医学の進歩が損なわれますので、その線引きが非常に難しいのが実情です。受託研究審査委員会が医療関係者だけでなく一般の先生方にもご参加いただいているのはそのためであり、様々な角度からこの研究は倫理的かどうか、患者様の人権は保護されているかどうかを話し合って審査しています。
 私は、平成19年に当院に赴任する前は東京の国立がんセンターに国内留学しており、研究者主導で行う多施設共同臨床試験の支援業務を行っておりました。支援業務と言いましても、臨床研究の立案、統計デザイン、データマネジメント、試験進捗管理、統計解析、結果の発表など多岐に渡っておりますので、臨床腫瘍学や生物統計学の知識だけでなく、臨床倫理学などの知識も幅広く勉強する必要がありました。我々医師は日常の臨床業務があまりにも忙しく、とてもこれらの勉強をする時間がないのが現状です。私は、国立がんセンターでの経験を生かし、臨床医としての視点だけではなく生物統計学や臨床倫理学の視点からも審査し、できるだけ質の高い倫理的な臨床研究を実施するお手伝いをさせていただこうと考えております。今後ともご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

 国際共同治験とは、新薬の世界規模での開発・承認を目指して製薬企業が企画する治験で、一つの治験に複数の国の医療機関が参加し、共通の治験実施計画書に基づき、同時並行的に進行する臨床試験のことです。
 抗がん剤など難治疾患の薬剤では、海外の患者様には標準治療で使われているのに、日本では開発が遅れているためにその薬剤を使えないことを、ドラッグ・ラグといいます(海外と日本との差は約4年)。
 ドラッグ・ラグの解消を目的とし、臨床開発のスピードを上げていくために、日本でも国際共同治験が増加しています。治験の届け出件数でみてみると、平成19年度は508件のうち国際共同治験件数が38件(7.5%)、平成20年度は502件のうち82件(15.6%)と2倍以上の増加です。
しかし、諸外国に比べるとまだ多くはありません。
 国際共同治験を実施するうえで、データ提出や管理が電子化されていることや、英語の説明書しかないというハード面の違いによる煩雑さや、医療の慣習や制度の違いから生じる問題点があり、医療機関では経験を重ねて慣れることで克服できるよう努力を続けています。
 CRCは関連部署の方々との打ち合わせを繰り返しながら、少しでもスムースに業務をお願いできるようにしています。実際に私たちは下記のような対応をとっています。国際共同治験はこれからもますます増えていくと思われます。どのようなことでもかまいませんので、分かりにくいことはお尋ねください。
海外の治験でみられること CRCが工夫していること
海外の測定機関へ直接検体を発送する。 ・検査科や採血室でCRCが直接回収をするため、誰がどこへ回収に伺うか、メモに記入して貼る。
・採取・処理する人に時間や条件を記入してもらえるよう、「ここへ記入してほしい」と分かるようにメモを付ける。
検体採取の正確な時間や検体の処理条件(遠心回転数や時間、温度)の記載を求められる。
提供される検査キットを使用するが、見慣れない形のものもある。
伝票や採取方法の説明書が英語である。
・日本語訳された説明用紙を準備して1回分ごとに一緒に付ける。
・説明用紙だけでは分かりにくい場合は、実際に採取する人へ説明をすることもある。
治験薬がボトル型/ふたがチャイルド・ロック式(手掌で押しこみながら反時計回りに回すとふたが開く)の場合、開け閉めが難しい。 ・初回の処方の際には必ず被験者に開けることを実施してもらう。
・ボトルでは残薬確認が容易でないので、被験者自身で服薬を確認できる方法(日誌など)を一緒に考えている。


●臨床研究セミナー:3月から6月にかけて月に1回、計4回開催
「臨床研究に関する倫理指針」が改正され2009年4月1日に施行されたことをふまえ、全職員を対象に是恒臨床研究センター長が「指針改正の経緯と改正点について」「臨床研究実施時の留意点について」「利益相反について」講義しました。今後、臨床研究をする上でセミナーの受講が必要となることもあり多職種にわたり大勢の出席がありました。

医師 看護 薬剤 放科 検査 リハ 事務 看護学校 研修生 他施設 合計
3月 19 34 5

2
4 1 4 69
4月 16 2 1 1 26 1



47
5月 16 14

10
1


41
6月 19 3 1

1 5 5
5 39
総合計 196名
●治験セミナー:5月、6月に開催
毎回行っている「GCP」「CRC業務」「治験にかかわる診療費と被験者負担軽減費」に加え、今年度からは治験を実施する上で役に立つ「豆知識」となるようなトピックスをお話ししています。
今年度最終の3回目は秋頃予定しています。治験を実施する上で3年に1度の治験セミナーの受講が必須となっています。期限が切れる方は必ず受講してください。

医師 検査 事務
第1回(5/11) 8 2 1 11
第2回(7/1) 30

30


平成21年6月22日(月)に今年度「第1回近畿ブロック治験実務担当者会議」を開催しました。 近畿ブロック内の機構施設12施設と国立循環器病センター1施設の計31名の出席がありました。 今回は「埋め込み型医療機器治験の特徴と被験者ケアについて」というテーマで最初に「循環器領域の医療機器治験の特徴について」講義を受けその後、5Gにわかれ「被験者ケアのポイントについて」グループディスカッションをしました。日々行っている被験者ケアについて、改めて考えるいい機会になったと思います。


CRC養成研修
国立病院機構本部より「治験・臨床研究コーディネーター初任者研修」の実習に7月から10月にかけて3期にわたり、3名の方の1週間の実習を受け入れます。
また、医薬品医療機器総合機構主催の「初級者臨床研究コーディネータ−養成研修」の実習も受ける予定になっています。

治験Quiz解答:A


@生活保護受給者について
 治験では保険外併用療養費が適用となります。しかし、生活保護は原則として保険外併用療養費が適用できません。そのため、生活保護受給者は治験に参加できないことになります。また、負担軽減費の受け取りが収入とみなされ、生活保護が打ち切られたり、受給額が減額となる可能性もあります。
A厚生労働省第2共済組合員とその扶養家族について
 国立病院機構やナショナルセンターには「所属所診療部」という、厚生労働省第2共済組合員専用の診療部があります。厚生労働省第2共済組合員が国立病院機構の施設やナショナルセンターを受診すると、当該病院を受診したことにはならず、施設内にあるこの「所属所診療部」を受診したことになります。
 治験は治験依頼者と実施医療機関との契約のうえで実施されています。一方で、施設内の「所属所診療部」は治験依頼者と治験の契約をしていないため、治験を実施することはできません。このため、厚生労働省第2共済組合員とその扶養家族は、国立病院機構やナショナルセンターで実施されている治験への参加はできません。
B国籍について
 プロトコールには記載されていませんが、原則として日本で行われる治験や臨床試験は、日本国籍を有するハーフやクォーターではない日本人を対象にしたものがほとんどです。これは、日本人を対象にした新薬の承認許可を取ることを目的にしているため、体格や遺伝学的な差によって、用法・用量、作用機序が異なることがあるためです。一方で、国際共同治験の増加に伴い、人種ごとの組み入れ数を明記したプロトコールもあり、データを解析し、人種間での有効性・安全性を確認することを目的にしている治験もあります。



治験Quiz:治験薬について??
Q:次のうち、間違っているものはどれ?
1. 治験薬の管理責任は実施医療機関の長(院長)が負う。
2. 実施医療機関の長(院長)は、全ての治験薬を適正に管理させるため、当該実施医療機関の薬剤師のCRCを治験薬管理者として選任する。
3. 実施医療機関の長又は治験薬管理者は交付された治験薬の受領、在庫、被験者毎の使用状況及び、未使用治験薬の返却又はそれに代わる処分に関して、記録を作成し、保存する。
4. 実施医療機関の長又は治験薬管理者は、治験薬の取扱い及び保管、管理並びにそれらの記録に際して従うべき指示を記載した手順書に従い、在庫、被験者ごとの使用状況及び処分に関して、記録を作成し、保存する。
答えは前ページの下にあります
〜今年度の学会の予定です。
当室からも発表します。
  • 第9回CRCと臨床試験のあり方を考える会議2009 in横浜
    9/12(土)〜9/13(日) 横浜
  • 第63回国立病院総合医学会
    10/23(金)〜10/24(土) 仙台
  • 日本臨床薬理学会 第30回年会
    12/4(木)〜12/6(土) 東京


編集後記
夏休みですね。8月になろうというのに、まだ梅雨が明けずすっきりしない天気が続きます。夏バテなどされませんよう、どうぞ体調に気を付けてください。
次号は10月にお会いしましょう。



発行:独立行政法人 国立病院機構
大阪医療センター臨床研究センター臨床研究推進室




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