第7号 平成21年11月10日

 今年度第3号の臨床研究推進室Newsをお届けします。1面では研究検査科からの寄稿を掲載しています。どうぞご覧ください。

■p2 特集:治験のデータの取扱いについて
■p3 トピックス:EFPIA意見交換会
CRC養成研修生から
■p4 治験のABC
治験Quiz/お知らせ



 現在、外来採血室では5名で1日約350名の患者様の採血を実施しています。そのうち治験採血が依頼されている患者様は1日平均約5名ほどになります。治験の採血は治験評価において欠くことのできない要素と考えられます。採血管の種類はもとより、採血方法、採血後の検体保存方法、採血から検体処理までの時間等詳細に指定されており細心の注意を払って採血を実施しています。まず治験採血が必要な患者様は電子カルテから“治験採血”の指示を主治医にオーダーしていただきます。採血管は各治験のプロトコルに応じて臨床研究推進室で準備されたものが一覧表とともに前日に採血室に届けられています。その際、臨床研究推進室のスタッフと採血管の本数や認識番号の読み合わせを行い、確認を行っています。治験採血は匿名で実施されるので採血管と患者様との照合をする唯一の機会と考えています。採血当日は治験採血のオーダーがある患者様が来られ、受付をされると、採血管準備システムから“治験採血”と明示されたラベルが各患者様の採血トレイに発行されます。治験採血のラベルをトレイに確認すると前日に準備された採血管にて採血を実施します。以上、採血室での治験採血の内容になります。治験は必ずプロトコルを守らないとできないので上記の作業のうち一つでも欠けたり、失敗することがあると患者様に負担をかけてしまうことになりますので治験採血は採血業務の中でもスタッフが最も緊張感を持って対応している作業になっています。(外来採血担当:大久保美里)
 研究検査科総合検査室にて治験に携わって3年になります。研究検査科が関わる治験業務は採血、採尿に心電図、脳波などの生理機能検査や病理組織検査等、様々な検査や検体があります。そして総合検査室における治験業務は主に外注業務担当者が中心になって行っています。それは外来や病棟から提出された様々な検体を各々の治験条件に沿って処理し、検体集配に来る外注業者に検体を引き渡したり、必要に応じて各々の条件下で検体の保存を行うためです。「様々な」といいますのは治験の血液検体の処理一つを取り上げても全血、血清、血漿と異なり、検体分離の条件も遠心時間から回転速度の条件にいたるまで様々であり、回転条件1つをとってみてもrpm(1分当りの回転数)やG(重力)とその表示は異なり治験毎の調整が必要です。また検体処理の変わったものとして血液検体の塗抹作成や遠心分離後の検体の液体窒素による急速冷凍処理等もあります。これらの様々な条件による治験業務をスムーズに行うためにもっとも役立っているのが治験のスタートアップミーティングへの参加です。新たな治験のスタートアップミーティングに参加することにより事前に治験の内容や検査の内容、注意事項、検体引き渡しなどについて話し合い確認することができ、治験の為の検査や検体の取扱いについて準備や段取りが前もって組めるようになりました。次に有用なのは翌週の治験予定者のリストを作成してもらうようになったことです。このリストには、治験予定日、治験番号、担当者CRCさんの名前が記載されており、これにより治験に備えることができると共に、検体等の採取や過不足等の問題が発生したとき直ぐに担当者のCRCさんに連絡が取れ、速やかな対処ができるようになりました。これからもこのように日々改良を行い患者様が安心して治験に参加していただけ、治験業務がスムーズに運ぶよう臨床研究推進室の皆さんと協力して努力していきたいと思います。(総合検査室担当:山下保喜)
 以上は採血担当者と治験検査担当者の感想です。治験業務が医療のEBMに重要なものとして検査科各員が緊張して取り組んでくれています。今後、研究検査科としても治験に専任できる人材を育て、臨床研究推進室でも活躍の場を見いだせるようにしていきたいと思っています。当院の理念、目標に沿って臨床検査が貢献できるよう今後とも積極的に治験業務に関わりたいと思います。

 治験では、患者様のご協力を得て有効性(薬の効き目)・安全性(副作用)に関する様々なデータを収集しています。
 データというと、検査の数値やバイタルサインなどが思い浮かぶかもしれませんが、既往歴や合併症、有害事象や併用した薬剤についても収集します。いつからいつまで、という期間も必要です。
 収集しなければならないデータは治験実施計画書で定められており、担当医師やCRCは、このデータを「症例報告書」に記載し、治験を依頼している製薬会社などの開発担当者(モニターと呼ばれます ※本特集枠内の右下にあるの説明をご参照ください)が確認した後で回収します。
症例報告書の元となるデータになるものを原資料と呼んでいます。同意文書、カルテ、画像のフィルム、紹介状などの書類の原本など、すべて原資料となります。
モニターは、原資料の内容を目視で確認し(直接閲覧といいます)、症例報告書に記載されたデータと原資料との不整合(転記ミスや漏れ)はないかを確認する作業(SDV:Source Data Verificationの略で「原資料との照合」と訳されます)のために、治験実施中は何度も病院を訪問します。
 日本の治験のスピードが遅いことは、このNewsの前号でお伝えしました。原因の一つに、このSDVに時間がかかっていることがあります。製薬会社側、医療機関側それぞれに改善点しなければならない点はあり、右ページにあるように、双方が集まる機会を設けて改善策の検討などの意見交換を行っています。
 モニターがSDVで時間がかかっているのは併用薬剤や有害事象の確認です。また、CRCや医師にとっても、症例報告書の記載がなかなか進まないのは併用 薬剤や有害事象の部分です。
 CRCは、どのような情報やデータをカルテ等の原資料に残しておく必要があるのかを把握しておかなければなりません。そして、診察前に被験者から聞き取りを行う時間を十分とり、体調の変化や他院への受診の有無などを確認します。医師はその情報から、適切な医学的判断を行いカルテに記載をします。こうして、被験者とかかわった時にすぐ情報を整理しておくことで、症例報告書への記載がしやすくなります。
CRCだけでなく、被験者にかかわるすべての職種の残したカルテの情報が、治験の貴重なデータとなっています。




 *EFPIA(European Federation Industries Association)とは、欧州に本社を有する研究開発型製薬企業を代表する団体で、欧州各国の製薬業界団体18団体と医薬品の研究開発・製造に携わる44社から構成されています。


 平成21年度国立病院機構近畿ブロック治験実務担当者とEFPIAとの意見交換会が9月5日(土)に当院で開催されました。近畿ブロック側からは7施設18名(CRC17名、医師1名)、EFPIA側からは10社26名の参加がありました。この意見交換会は、日本における治験の推進を図るため、医療機関側、治験依頼者側双方の問題点や協力体制について情報を交換することを目的に、平成17年度から年1回実施しています。
 今回のテーマは「SDVの効率化」でした。左ページの特集にもありますが、SDVに時間がかかっていることが以前から問題となっています。SDVに時間がかかると症例報告書の完成も遅くなります。そのため、データ解析が進まず、新薬の承認申請が遅れます。SDVを効率化できることはないか、改善策を見い出すために現状や要望を意見交換しました。
医療機関からの意見 〜製薬企業に対して〜
  • データに不必要な部分にも時間をかけてカルテを見ているのではないか
  • 医学的判断は、CRCではなく医師に面会して確認してほしい
  • 記入しやすい症例報告書を提供してほしい

EFPIAからの意見 〜医療機関に対して〜
  • 医師やCRCが記入する症例報告書の記入に、モニターが補助をしている
  • 医療機関によってカルテの体裁が違うので、慣れるまでは情報収集に時間がかかる
  • SDVに行く日までに医師やCRCは症例報告書の記入をしてほしい

まとめ
  • データをどのように原資料に残すのか、事前準備の段階できちんと打ち合わせをしておく
  • カルテの見方や症例報告書の記入方法はその都度たずね、お互い分からないままにしない
  • 日頃からの双方のコミュニケーションは大切である
日頃の業務を離れてお互いの立場を超えたディスカッションができ、普段はなかなか出にくい本音トークが繰り広げられました。終始和やかな雰囲気の中で、お互いの考えを知る事ができ、有意義な1日でした。



CRC養成研修生から
「治験・臨床研究コーディネーター初任者研修(実習)を終了して」
 兵庫中央病院 田中知子
 今回の実習で、被験者の人権や安全を保証し治験の科学性や信頼性を確保するということが実際にどういうことかを学びました。
 インフォームドコンセントの場面では、治験に参加することでの利益・不利益をわかりやすく伝え、理解できているか確認しながら説明されていました。そこで患者様が治験薬の効果に期待されていることを強く感じましたが、だからこそ、治験の内容をしっかり把握して伝えることが重要になるとわかりました。IRBの見学では、研究計画書や説明文書の内容について意見交換が活発に行われ、細かい点まで話し合われていることに驚きました。様々な立場の委員の方が、科学的な視点や患者様の視点、法律に関する視点などから審議することで個人情報の保護や研究の安全性が保証されているのだと実感しました。また、治験を正確かつ迅速に実施し患者様が安心して治験に参加できる環境を整えるためには、外来や病棟、検査科など他部門と連携・協力することが大切だと学びました。その協力が得られるように働きかけて、サポートすることがCRCの重要な役割だとわかりました。治験薬の取り扱いについても温度管理などの保存状態が薬の安定性を保ち治験の信頼性確保のために必要不可欠なことを知りました。今後、治験の実施に向けて、私自身が治験の意義をしっかり理解し、他のスタッフに伝え協力してもらえるように関わっていきたいと思います。
治験Quiz解答:C



@電子カルテへの表示
「治験参加中」であることを医療スタッフが認識でき、併用禁止薬の投与や併用禁止療法が行われることを防ぎます。
治験アイコン
電子カルテの患者氏名の横に「青いお薬マーク」が表示されます。
このアイコン表示中は、処方は当該診療科及びそれ以外の診療科を受診された場合も院内処方となりますのでご注意ください。
Message Boardに表示
患者掲示板のメッセージボードに「治験課題名・責任医師名・担当CRC名」を表示しています。
担当医師・CRCのPHS番号も記載していますので、患者様から質問等を受けた時は遠慮なくご連絡ください。患者様が救急外来又は緊急で外来受診された場合には、担当医師・担当CRCにご一報をお願いします。患者様の病状によっては依頼者(製薬会社)に報告する義務があります。

A治験採血・治験採尿
 治験中の特有のオーダーとして、「治験採血」「治験採尿」があります。これは、治験の臨床検査項目で外注の採血や採尿がある場合に、こちらのオーダーをお願いしています。
 いったんオーダーしてからは必要時にその都度コピーペーストでオーダーを入れていただいても構いません。しかし、最近多いのが、治験が終了してからでもこれらのオ―ダーが残っている場合があります。治験採血のオーダーが出ているのに、専用のスピッツが届けられていないことからCRCに問い合わせがあり、その間患者様を採血室でお待たせすることになります。治験終了後のオーダーの消し忘れには、くれぐれもご注意ください。




 研修生のお知らせ
0/26(月)〜11/13(金)の3週間、日本薬剤師研修センター主催の「初級者臨床研究コーディネーター養成研修」の実習生を1名受け入れています。また、11/9(月)〜11/13(金)の1週間は、国立病院機構本部主催の「治験・臨床研究コーディネーター初任者研修」の実習生を1名受け入れています。残りわずかですが、実習期間中は、外来や病棟に同行する機会があります。よろしくお願いします。

編集後記 
食欲の秋です。日々秋が深まっていきます。今年もあと2か月足らずとなりました。インフルエンザの流行も心配されます。どうぞ体調に十分留意されますように。

治験Quiz
 答えは前ページの下にあります
@〜Cのなかで正しいものが1つあります。それはどれでしょう。
@ 治験分担医師が同意を取得する場合は、治験責任医師との連名で署名をすることが必要である。
A 被験者は、治験の同意書とカルテの直接閲覧の同意書を別々に提出することが義務付けられている。
B 治験の同意文書には、被験者とその家族の署名が必須である。
C 治験の同意文書は、原本を病院の保管用とし、被験者には写しを交付しなければならない。


発行:独立行政法人 国立病院機構
大阪医療センター臨床研究センター臨床研究推進室




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