第8号 平成22年3月15日

今年度最後の臨床研究推進室Newsをお届けします。学会や研修の報告、「治験の取り組み」大賞の受賞報告と、年度を締めくくる内容です。

■p2 治験の取り組み大賞授賞式報告
■p3 今年度の学会報告
■p4 治験のABC〜薬物動態採血
治験Quiz/新メンバーの紹介

   治験は、厚生労働省から新薬の製造販売・輸入の承認を得るためのデータの収集を目的とした臨床試験です。CRCは治験が円滑に進むように被験者ケア、治験担当医師の支援、治験依頼者との対応など、全体をコーディネートする役割があります。そして治験・臨床試験においての倫理性、科学性、信頼性を確保する上で重要な存在です。
   私は、'04〜'07の約4年間CRCとして活動し、主に乳腺治験と多くの被験者を担当してきました。そして、現在は病棟で治験を受ける患者さまの看護を行っています。
   治験参加患者さまは、治験薬の効果への期待が高い一方で、起こりうる有害反応や頻回な来院・検査、治療効果の不確かさ等の付加的な負担感をお持ちです。また、重篤な有害反応が現れたり、病状進行等の場合には治験は中止されます。その場合、治験薬の不十分な効果による落胆とCRCからの援助が得られなくなり見放されることへの不安を感じられます。私はCRCとして、このような患者さまの気持ちを理解した上で、治験の補足説明時に信頼関係を築き、意思決定や精神面への援助を行っていました。その際には、標準治療を理解しておくことも必要でした。また、医療チームの一員として看護師や他職種との連携も図っていました。
   現在は病棟看護師として新規治験に協力し、治験参加患者さまの看護を行っています。治験参加前は、病識、治験の理解度や心理状態を把握した上で説明補助をし、医師やCRCと連携して意思決定支援をしています。この時期の看護は、患者さまの抗腫瘍効果への希望を支え、今後の人生や生活への意向を理解し、治験に参加しない場合や抗腫瘍効果が得られなかった場合にも目が向けられるように対話しています。治験参加中は、安全、安楽かつ適切な投与管理、有害反応の確認とマネジメント、確実な検査の実施とともに精神状態の確認をし、必要時にはがんサポートチームの介入を得るようにしています。治験中止時は、ご家族を含め現在の気持ちや状況の理解度を表出できるように観察や対話をし、厳しい状況にあっても今後の人生や生活をその人らしく生きることができるように考えていくようにしています。一般のがん看護と基本的な考え方は同じですが、治験薬への期待が大きいため、その気持ちを理解して看護することが重要です。
   また、CRCをしていた期間は常に倫理や患者の人権について考え、標準治療を学ぶことができました。CRCを行って身に付いたことは現在の看護実践の場でも非常に生かすことができています。病棟で治験に接する機会は少なく、看護師を対象に治験の認識アンケートを行った結果では治験を十分理解している者は多くはありませんでした。そのため、病棟看護師が興味を持てるように看護の視点で新規治験の説明や勉強会を行っています。
   今春より、がん看護専門看護師(サブスペシャリティ:乳がん看護)を目指して進学します。 未解明ながん領域の看護を専門とし、研究する立場となる上でCRCとして多くの治験・臨床 試験に携われたことは、貴重な財産となりました。多くの患者さまが参加されている治験・臨 床試験の結果で、将来より良い治療が標準治療となっていくことを期待します。
   今までご支援、ご協力いただいた患者さま、スタッフの皆様大変ありがとうございました。



    12月発行の号外でお知らせしましたが、日本医師会治験促進センターが主催した 「治験の効率化 医療機関等の取り組み」の募集で、
応募総数142のなかから当院の取り組み「モチベーション向上のための研究費の算定方法と使用方法の工夫」が大賞を受賞しました。    2月27日(土)に日本医師会館(東京都文京区)で行われた治験推進連絡協議会のなかで、この大賞の授賞式が行われ、多和副室長とCRC7名が参加しました。その後大賞内容の講演がありました。大賞の表彰状と、副賞として日本医師会治験促進センターのマスコット「ちけん君」のぬいぐるみ、CRCの業務用バッグをいただきました。



厚生労働省主催 上級者臨床研究コーディネーター養成研修 (石山)
   1月21日(木)〜22日(金)、大阪医療センター地域医療研修センターで実施されました。講義では、CRCはプロトコールを遵守できるようにサポートすること、国際共同治験に対応できる語学力を養うこと、治験に関わる全ての人が気持ちよく実施できるようコーディネート能力を養うことが重要であると学びました。グループディスカッションでは、「後進の育成とキャリアアップ」について意見交換しました。CRCの認知度が低いという現状の中、院内へのアピールは継続することが重要であること、CRCとしての実績はデータを示した上で、管理職に周知してもらえる工夫をすることが必要であることを学びました。

当院主催 「近畿ブロック治験実務担当者会議」(石山)
  2月9日(火)10:30〜12:30、大阪医療センター緊急災害医療棟2階研修室において開催しました。平成11年度から毎年2回開催しており、今回は13施設より31名の出席がありました。今回は製薬会社のモニターによる原資料の直接閲覧の効率化、CRCの時間外対応について意見交換しました。CRCの時間外対応は救命救急下での治験もあり、当院を含め他の施設でもエントリー促進のためには時間外勤務として対応しているのが現状です。また、患者様が有害事象で夜間に救急外来を受診された際に24時間以内に製薬会社への連絡が必要な場合の工夫も意見交換され、当院でもカルテの掲示板へ表示することにより連絡が徹底できるよう工夫しています。

国立病院機構本部主催 治験・臨床研究コーディネータースキルアップ研修(木島)
  2月12日(金)〜13日(土)、国立病院機構本部で実施されました。講義では、治験や臨床研究についての最新の動向を学びました。グループワークでは、国際共同治験が増えてきていることに対し、「プロトコールがすべて英語だったらどうするか」というテーマで討議しました。「NHO内で同じ治験を実施している施設同士で協力する」など、どの施設も前向きな意見が出て私も参考になりました。また、12月の号外でもご紹介しましたが、英語対策の取り組みとして、当室で週1回実施している英語の勉強会を紹介したところ、反響が大きく自分の施設でも実施を検討したい、という意見を多くいただきました。英語をますますがんばっていこうと思いました。


『第CRCと臨床試験のあり方を考える会議2009in横浜
2009年9月12〜13日 パシフィコ横浜 シンポジスト:小野 
セッション:「CRCのワークライフバランス」 テーマ:「子育て中のCRC」
  私は、就職してから現在に至るまで出産休暇、育児休暇を取得しながら退職することなく仕事を続けてきました。そしてそれは何故なのかを今回のシンポジウムでは振り返るよい機会となりました。そして働き続けるためには3つの要因があることに気づきました。1つ目は「所属する世界を複数持っていたいという私の考え方」です。「看護師・CRCである私」「家での私」と気持ちも思考も全く異なる所属を持っていたいと思っています。2つ目は「職場環境」です。CRC業務は課題担当制になっているのですが、被験者対応に必要な情報ファイルは個々のCRCが管理するのではなく、一カ所に集約しています。これにより、担当CRCが急に不在になった時でも、
被験者毎の治験の進行状況やスケジュールが分かり、他のCRCがスムーズに対応できるようになっています。また、3つ目は「家族の協力」です。夫、姑ともに私が仕事をすることに協力的です。私のモットーは「プライベートが充実してこそ仕事をがんばることができる」です。限られた時間を有効に使い、仕事、家庭ともにできる範囲でがんばる。そのがんばりが、1度きりの人生をおくる充実感につながると思っています。

『第63回国立病院総合医学会』
2009年10月23日〜24日 せんだいメディアテーク 発表者 
「治験実施状況の評価―治験手続きスピード、症例組入れスピード、実施率の全国平均値との比較―」
   当院では2002年度に終了した治験課題以降を対象として、当院の実施状況が全国水準に達しているかどうかを検討するため、定期的に治験実施状況の評価を行っています。今回は2007年度に終了した治験14課題について、治験依頼から被験者登録終了までと実施率をベンチマークとし、日本製薬工業協会が調査している全国の施設平均値と比較しました。その結果、依頼〜IRBは全国平均より長くなっていますが、昨年度より申請締切日を変更し7日短縮され、全国平均同等になると予想されます。また、契約〜治験薬交付が長くなっていますが、被験者登録に合わせて治験薬交付を遅らせた1課題を除くと平均は29日であり全国平均より短く早期の対応ができています。治験薬交付〜最初の被験者登録は極めて長くなっていますが、課題により6〜203日と差が
大きくありました。最初の被験者登録に100日以上を要した4課題では実施率が48.1%で、100日以下の課題の実施率93%にくらべて極めて低くなっていました。最初の被験者登録までの期間が、その後のスピードに大きく影響していることが明らかであることから、症例登録が進まない課題では病診・病病連携の取り組みを推進する等、早期にリクルート方法を検討する必要があります。今後も定期的に実施状況を評価し、治験の質向上に努めていきたいと考えています。

『第30回日本臨床薬理学会年会』    2009年12月3〜5日 パシフィコ横浜 発表者:北川
「臨床研究に関する倫理指針」改正への医療機関の対応」
    平成20年7月に「臨床研究に関する倫理指針」が改正され、平成21年4月より施行されています。当院では改正指針に対応するため、臨床研究の実施体制を整備してきました。今回、当院の対応状況を評価することを目的とし、指針の主な改正点について現状を評価しました。指針改正以前より、委員会手順書の作成及び手順書・委員名簿・会議の記録の概要のホームページへの公表、年1回の臨床研究実施状況報告書の院長への提出などは対応済みでした。また、臨床研究計画の事前登録を促すため、研究責任者に対して「臨床研究登録確認書」を配付し、登録の有無の確認も指針改正以前より行っています。改正を受けて対応した内容として、迅速審査事項を再検討し、委員会があらかじめ指名する者が委員会への付議は不要と判断する研究について申請書式を作成し、取扱手順を整備しました。また、臨床研究セミナーの開催、重篤な有害事象発現時の対応の整備と報告書の作成など実施しました。今後検討を要する事項として、健康被害に対する補償のための措置として、保険会社による臨床研究に対する補償保険について、研究者へ具体的な情報提供が必要です。また、インフォームドコンセントや試料等の利用について研究デザイン別に取り扱いを整理し、研究者へそれぞれ提示していく必要があります。主な改正点に対し、実施体制整備は概ね対応できていますが、実際の運用のためには院内職員へのさらなる周知が必要です。今後は研究デザイン別に委員会申請から終了までの流れを整理し、院内全職員に対して研究者の責務等の啓発を継続的に行っていくことが必要と考えています。
治験Quiz解答:C





   投与された薬物は、体内へ入ると血液の流れに乗って各組織へ分布し、時間がたつと最高血中濃度に達します。しかし、薬物は体内で代謝や排泄を受けるため、血中濃度はその後減少していきます。血中濃度が最高値になってからの半分の値になるまでの時間を血中濃度半減期といい、薬物の効果が持続する時間の目安とされています。服薬後の決められた時間に採血をして血中濃度を測定することで、薬物をどのくらいの量で、また、どのくらいの時間間隔で投与したら薬物の効果が持続的にみられ、副作用が最小限であるかを決定するためのデータが得られます。これが薬物動態試験で、この目的で実施する採血を薬物動態採血(PK採血)といいます。
   当院で実施している治験においても、このPK採血の実施が必須であるものがあります。PK採血の実施にあたり、以下のような留意点があります。

・患者様に多くの回数の採血を受けていただくことになる
・服薬時刻や採血時刻をきちんと把握しなければならない
・外来での実施の場合は、服薬せずに来院し、服薬前の採血のあと病院で服薬してもらうことがある
・採血回数が多い場合は、PK採血のために入院をお願いする
・採血後、早急な検体処理が必要なことがあり、すみやかな搬送が必要である


 採血回数が多いPK採血は、これまで入院で対応しており、病棟や検査科との連携のもと実施してきました。今後もこのような治験が増えてくると予想されます。PK採血の目的と意義をご理解いただいたうえで、CRCとみなさまとで実施に向けての体制を話し合いながら、協力してやっていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。


@〜Cのなかで、正しいものが1つあります。それはどれでしょう。

@患者は治験に参加したら、最後まで続けなければならない。
A治験薬をのみ始めた患者が、いつもと違った症状が出たので自己判断で中止した。
B治験に参加している患者が、知り合いに同じ病気の人がいて薬が欲しいと言われたので、治験薬をゆずった。
C治験に参加している患者が、外来予約日に急用ができて受診できなくなったので、CRCに連絡をして予約日の変更の相談をした。
編集後記 桜の時期が近づいて参りました。今年度も臨床研究推進室Newsをご覧いただき、ありがとうございました。来年度も治験や臨床研究の実施にあたって、みなさまと協力していけるように臨床研究推進室一同がんばっていきます。 どうぞよろしくお願いします。
坂本芙弓さん
11月末より臨床研究推進室で事務をさせていただいております、坂本芙弓です。
主に、研究費からの給与計算や出張旅費の請求書作成をしております。まだまだ、慣れないことが多くご迷惑をお掛け致しますが、ご指導のほど、よろしくお願いいたします。

樋口早映子さん
はじめまして、樋口早映子と申します。
1月から臨床研究推進室の一員になりました。CRCの仕事は初めてなので、先輩方から学ぶ毎日ですが、その様子から、CRCは被験者さん一人ひとりにじっくりと向き合うことのできる、素敵な仕事だと感じています。先輩CRCのように、明るく、頼もしいCRCを目指してがんばりますので、どうぞよろしくお願いいたします。




発行:独立行政法人 国立病院機構
大阪医療センター 臨床研究推進室




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