第10号 平成22年10月26日

今年度2回目の臨床研究推進室Newsをお届けします。今回は「Global監査を受けて」「セミナー開催報告」「CRC養成研修」についての内容です。
  
■p2  Global監査を受けて
■p3 治験のABC:第T相試験について
外資系製薬会社のChinaチームの来訪がありました
■p4 研修報告/研修案内/治験クイズ
新メンバー紹介


医療機器治験とスキルアップ

奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科教授
千原國宏
 30年以上、超音波画像診断機器の研究開発に関わってきた経緯から、大阪医療センターの治験審査委員に就任にし、勉強させていただいているうちに約1年が経過した。この間、審査対象はほとんどが医薬品であって、専門と思っている医療機器は選択式血漿分離吸着器の一件のみであった。医療機器の治験審査では、医療機器の製造販売に関して、薬事法上の承認を得るために行われる臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的として実施される試験が、GCP( Good Clinical Practice )‐倫理的な配慮のもとで科学的に実施されること‐を遵守した適正な臨床試験であるかいう見地で審査することになる。
 医薬品と同様に、フェーズ T、フェーズ U、フェーズ V、医薬品医療機器総合機構の審査を受けて製造販売承認された後でフェーズVまでで検出できなかった予期せぬ有害事象や副作用を検出することを主な目的としてフェーズ Wの製造販売後臨床試験が対象となる。特に、医療ロボット(da Vinciなど)や集束超音波治療器(FUS: Focused Ultrasound Surgery )のような最近の先進的医療機器は、フェーズTからフェーズVの臨床試験を外国でのデータで代用したり、国内メーカの主導が減少しているので、これからはフェーズWの治験にも積極的に参加していただくことを期待している。
 また現在では、治験実施者も医師が圧倒的に多いが、医用機器の場合には、治験責任医師や治験分担医師の他に、看護師、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士などの医療関係者が治験コーディネーター(CRC:Clinical Research Coordinator)としてではなく、主体的に治験をリードする必要性が出てくると予想している。この際、治験責任技師(仮称、CRE: Clinical Research Engineer)として、優れた見識と技術を持った高度な職業人として自立していくためにも、大学院レベルの教育を受け、工学や理学の修士または博士といった学位を取得しておくことが必須の武器になると考える。



千原國宏先生のご紹介
工学博士
昭和48年3月 大阪大学大学院基礎工学研究科博士後期課程修了
平成4年4月 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授
平成19年4月〜平成21年3月 奈良先端科学技術大学院大学 理事・副学長
平成21年4月 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授
平成21年12月1日〜 国立病院機構大阪医療センター受託研究審査委員会
           第1委員会専門委員
          現在に至る



Global監査とは・・・
 監査は製薬会社の臨床開発部門とは独立した監査部門の担当者によって、GCPに則って臨床試験が行われていること、プロトコールに従ってデータが集められたということを検証し治験の信頼性を保証する活動のことを言います。国際共同治験ではしばしば日本法人の監査部門ではなく海外の担当者が来院され、ICH-GCP*に基づき監査が実施されます。

*ICH-GCPとは、日・米・欧の規制当局・産業界で検討された国際的な医薬品開発の標準ガイドラインのこと。日本のGCPのひな形になった国際的なガイドライン。国際共同試験の共通ガイドラインとなっている。
 当院では、平成22年5月と6月に乳がん領域の治験の監査を受審しました。今回実際Global監査を受けた責任医師、CRCの感想を以下に示します。
 乳腺領域では、新規の分子標的薬を中心に、従来から懸念されていたdrug lag (海外で承認申請されてから我が国で開発が始まるため承認が数年遅れる)を解決すべく、Global治験に最初から参加し、3極(USA/EU/日本)同時申請を目指すことが多くなり、我々乳腺グループでも現在約10試験が進行中です。ICH-GCP法に基づき行われるGlobal治験といっても基本的には我が国で実施される治験とルールはほぼ同じで特別な気遣いは不要です。
 今回、Global監査という貴重な経験を得ました。大事な2点を共有したいと思います。
 まず、治験実施にあたり、スクリーニング名簿の作成が責任医師の責務であることです。ICを実施した被験者のみでなく、治験契約期間にその治験の適格基準に合致し、その治験治療が適切とカンファレンスで決定したすべての患者さんのリストです。そこには、適格と考えたが、IC実施できなければその理由、IC実施して同意取得されなければその理由など、そのプロセスを記す必要があります。おそらく”The best management of any cancer patients is a clinical trial.”というNCCNガイドラインの精神にも通じるところもあるのでしょう。恣意的な被験者選択を避ける意味合いもあります。そのログを解析することで施設の診療内容の精度管理にもつながりますし、治験そのものを改良していく資料にもなり得ます。第2は、採血・画像・生理検査などのレポートを基に診療を行いますが、担当医がその結果をどう解釈したか(異常の有無やその対応)を常に記録し署名を行う必要があることです。
 大変な作業ですが、その細心の積み重ねで精度の高い治験の成功(最高の診療の提供)があると改めて痛感しました。Global治験の経験は勉強になることも多く、それができる環境を幸せに感じています。皆様のご支援ありがとうございます。
(外科・乳腺外科 増田慎三)
 これまで経験した監査では、必須文書や原資料(カルテ等)を監査員が黙々と確認していた印象でしたが、今回のGlobal監査では実施者にインタビューしながらプロセスを確認することを重視されていました。監査員が疑問に思うことはその場で依頼者のモニター、CRCとディスカッションをして、文化による考え方の違いなども情報共有しながら、改善が必要であればどうすればよいかを一緒に考えるスタイルでした。指摘する側、される側という関係ではなく、どうすれば質の高い治験を実施できるかを考える仲間という雰囲気でした。監査を受けることは緊張感を伴うものですが、日頃を振り返り当院の治験の質を高める機会でもあり、今回の学びを今後に生かし研鑽していきたいと思います。
   また、監査員とはもちろん英語のコミュニケーションでしたが、こちらはペラペラというわけにはいきません。しかし、毎週の英語勉強会のおかげでなんとかヒアリングはできました。「継続は力なり」、こちらも日々研鑽したいと思います。      (CRC石山薫)



 当院ではこれまで6課題の第T相試験に取り組んできました。また、現在、整形外科領域で1課題実施中です。第T相試験は初めて人に薬を投与し、効果よりは安全性を確認することを目的にしています。当院としても積極的に受託していく予定になっています。そこで、今回は第T相臨床試験を取り上げてみました。
 第T相試験の目的は、治験薬の「安全性」の確認を中心に、薬剤が体にどのように吸収、分布、代謝、排泄されていくかといった「薬物動態」を確認します。対象は一般的に少数の健康な成人男性ですが、抗悪性腫瘍薬のような薬剤は患者さまが対象となります。
 第T相試験は、初めて人に治験薬を投与するので(既に海外で先行して実施されている場合は初めて日本人に投与することになる)薬効の期待できないような少量から徐々に増量し、慎重に安全性の確認をしながら進めていきます。
 被験者によっては効果を期待することがあるので、試験の目的について十分な説明が必要です。また、薬物動態をみるために1日複数回の採血をする場合があるので、スケジュール説明も重要になります。
 治験参加期間中は患者さまに起こる様々な症状とその程度を正確に把握し記録に残すことが必要です。
 第T相試験は入院して行われることが多いので、医師、病棟看護師、薬剤師、CRCで情報を共有することで患者さまの安全を守ることが重要となります。



 平成22年8月11日(水)、外資系製薬会社のChinaチーム4名と日本支社2名、通訳1名の7名の方々が、当院へ見学に来られました。目的は、当院の治験実施体制とグローバル試験への対応の実際を学ぶことでした。当日は、多和副臨床研究推進室長による当院の治験実施体制についてのプレゼンテーション、薬剤科の見学(主に治験薬管理)、是恒臨床研究推進室長およびCRCとの意見交換を行いました。
 中国では、通常「一患者一カルテ」で患者が生涯にわたり自分のカルテを保有していますが、最近では一部電子カルテを導入している病院もあるようです。疾病構造は、循環器疾患・肺癌・肝癌が多いと伺いました。都市部では治験参加の希望者が多く(特に癌領域)、医師も臨床試験への意識は高いということでした。中国で実施している各治験の被験者は、各試験治験に参加している上位3〜4施設で約80%が登録されているそうです。
 意見交換では、研究費、実施環境のことが話題となり、中国での現状、当院での現状を意見交換する中で、治験実施環境にあまり違いはないことが分かりました。
 現在、上海万博が行われており、いただいた名刺には「EXPO2010、Shanghai」という文字が印字されていました。期間限定で使用する名刺だそうです。
 Chinaチームの皆様からパワーをいただき、私たちも日々の業務を振り返るよい機会となりました。








 6月14日(月)〜18日(金)に国立病院機構本部主催の「平成22年度 治験・臨床研究コーディネーター初任者研修」を受講してきました。講義内容は、臨床試験や治験にまつわる用語の解説から医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)や臨床研究における倫理指針、治験事務局業務や治験コーディネーター(CRC)業務の実際、厚生労働省の治験・臨床研究推進施策や国立病院機構における治験等の取り組みについて、国際共同治験の現状など、臨床研究の基礎から最新情報に至るまで多岐にわたりました。
 特にGCPの解説では、GCPの原点であるヘルシンキ宣言についてくわしい説明があったので、GCPの基本的な考え方から学ぶことが出来ました。講師の先生方は、治験を推進する側と規制する側(厚生労
働省)、治験を依頼する側(製薬会社・モニター)、実施する側(CRC)などさまざまで、それぞれの立場からのCRCへの期待や率直な意見などを知ることができました。
 私は、院内で先輩CRCからCRC業務を6ヶ月間学んでから今回の研修に参加したので、
今回の研修は日々学んできたことの意味や重要性を確認する機会となりました。
 今回の学びを日々の業務のなかで実践していけるよう、頑張りたいと思います。
                               (樋口早映子)

原資料についての記載の中で、間違っているものが1つあります。それは何番でしょう??

@GCP省令において原資料とは、被験者に対する治験薬又は製造販売後臨床試験薬の投与及び診療により得られたデータその他の記録をいう。

A症例報告書中のデータのうち、原資料との何らかの矛盾がある場合には、治験責任医師はその理由を説明する記録を作成する。

B医師が作成する診療録と看護師が作成する看護記録との間で記載内容が異なる場合、医師が作成する診療録が原資料となる。

C原資料の特定については、事前に治験実施計画書で規定しておく必要がある。
《今後の研修予定》
♪第4回 ナースのための臨床試験セミナー 11月21日(日)
 場所:北里大学臨床薬理研究所
♪事務職員対象治験研修会10〜11月頃 場所:大阪医療センター
♪治験スキルアップ研修会 平成23年1〜2月頃 場所:大阪医療センター
奥田 真美(CRC)
 10月から臨床研究推進室に採用になりました奥田真美です。治験コーディネーターの研修中です。
 一日でも早くお役に立てるよう頑張りたいと思います。
 よろしくお願いいたします。
林 悦子(事務補助)
 9月から臨床研究推進室で事務をさせて頂くことになりました林悦子です。医療系の事務は初めてですが、一日も早く仕事に慣れるように頑張りたいと思っています。皆様ご指導よろしくお願いします。


編集後記
 朝、夕はずいぶん涼しくなってきました。みなさま、体調をくずされていませんか?
 今年度は、Global監査が続けて2件入ったり、通常の監査や実地調査もあったり
 と日頃の業務を見返す機会がたくさんありました。これらの経験を今後に活かしていきたいと思っています。
 今後ともよろしくお願いいたします。


発行:独立行政法人 国立病院機構
大阪医療センター 臨床研究推進室
治験クイズ答え:B




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