第12号 平成23年3月31日

今年度4回目の臨床研究推進室Newをお届けします。今回は1面に、2月まで治験主任でいらした坂本泰一先生から寄稿をいただいています。どうぞご覧ください。
■p2  研修報告
■p3 治験のABC:適格基準について
■p4 異動のご挨拶
来年度のセミナーの予定
治験Quiz


大阪医療センター臨床研究推進室の今後の課題
        国立病院機構宇多野病院 坂本 泰一

 私は平成20年4月に大阪医療センターに赴任し、臨床研究推進室で受託研究審査委員会事務局およびCRC業務に従事しましたが、平成23年3月1日付で国立病院機構宇多野病院に異動になりました。在籍中のご指導・ご協力にこの場をお借りしましてお礼申し上げます。
 大阪医療センターは、年間の治験・製造販売後臨床試験の実施課題数が60から70課題、受託研究全体の収益は2億円を超し、国立病院機構の中で常に上位を占めています。また、治験の基盤となる薬を臨床でどう使うかを研究するための臨床研究も活発に行われています。
 治験を含めた臨床研究に携わる医師は、一般診療とは別の形でプラスアルファの業務をすることになるため、CRCのサポートを希望される場合が多くあります。しかし、国立病院機構のルールで常勤CRCの定員が決まっており、現在の定員では治験・製造販売後臨床試験以外の臨床研究をサポートすることは困難な状況です。臨床研究を支えるためには、治験等の受託研究で得られた収益の一部をCRCの人件費に回して、非常勤CRCの人員を確保する等の対策が必要であると思います。また、サポート体制を維持するためには、受託研究で得られる収益が毎年均等に確保できるように、治験を実施する診療科を増やしていくことも必要です。
 治験の最終目標は、患者さんが最新の有効で安全な医療を受けられることであり、いち早く患者さんが恩恵を受けられるように治験の迅速化が求められます。韓国等に比べると日本には大規模な病院が少なく、そのため治験の症例集積性が低く、治験のスピードが遅いと言われています。大阪医療センターでは、消化器科と外科の治験で病診連携や病病連携による治験のネットワークづくりが行われています。今後、治験の5カ年計画に則って、大阪地域での治験の中核・拠点病院を中心とした治験ネットワーク体制を構築し、症例集積性を高めていくことが望まれます。
 臨床研究の倫理指針には、「臨床研究においては、被験者の福利に対する配慮が科学的及び社会的利益よりも優先されなければならない。」と記載されています。治験を含めた臨床研究を進めることは重要ですが、患者さんの人権を守ることが大前提です。受託研究審査委員会事務局、CRCは、患者さんの意思に影響を与える可能性のある安全性情報等が伝達されているか、治験、臨床研究を中止しなくてもよいかに絶えず注意を払い、患者さんの安全を確保することが必要です。
 宇多野病院では薬剤科の業務に戻りますが、大阪医療センターでの経験を生かして、微力ですが医療の発展に貢献していきたいと思います。




「平成22年度上級者臨床研究コーディネーター(CRC)養成研修」に参加して 北川 智子
2011年1月20日〜21日 大阪医療センター地域医療研修センター
 本研修は経験年数3年以上の上級CRC を対象として、 (財)日本薬剤師研修センター((独)医薬品医療機器総合機構主催)により東京および大阪において行われる研修で、私が受講した大阪会場では40名の参加者でした。1日目は「臨床研究をめぐる最近の動向について」や、「臨床試験のコーディネート」等の講義を聴講しました。2日目は「CRC 養成教育プログラムの統一化について」をテーマとしたグループディスカッションとグループ発表、総合討論でした。グループディスカッションの目的は、現在各団体が行っている研修内容の統一化を図り、CRC導入研修のモデルプログラムを策定することで、研修における必要項目や時間配分などについてディスカッションしました。私のグループでは、全くCRC経験のない研修生がCRC業務に興味を持つことができるような研修プログラムについて、グループメンバー全員がそれぞれの新人だった頃の経験を踏まえ、活発なディスカッションをしました。総合討論では各グループから十分に検討された研修プログラムが提示され、本研修の成果物が今後どのように活かされていくのか非常に楽しみです。今回の研修に参加し、臨床研究に関する最新の知識を学ぶと共に、自身の知識の振り返りを行うことができました。また、今後のCRC養成研修プログラムの統一化に関われたことは貴重な経験となりました。



「平成22年度治験スキルアップ研修会」に参加して  木島 かおり
〜国立病院機構近畿ブロック治験実務者の会とEFPIA*臨床部会との意見交換会〜
*European Federation of Pharmaceutical Industries and Association:
欧州に本社を有する研究開発型製薬企業を代表する団体
2011年3月5日 大阪医療センター地域医療研修センター 
 この意見交換会は、日本における治験の推進を図るため、医療機関側、治験依頼者側双方の問題点や協力体制について情報を交換することを目的に、平成17年度から年1回実施しています。今年度は、近畿ブロック側からは10施設25名(CRC24名、医師1名)、EFPIA側からは8社18名の参加がありました。当院からは、是恒室長をはじめ、CRC7名が参加しました。
 意見交換会のテーマは「治験の効率化」でした。治験を効率的に進めるためにお互いが考えていることについて医療機関側、製薬企業側のそれぞれから講義があった後、以下の3つのテーマについて、医療機関4名、EFPIA3名を1グループとしたグループディスカッションを行いました。この3つのテーマにおける問題点を解決していけば、治験の効率化が図れ、治験のスピードが速くなることでドラッグラグの解消につながります。立場を超えてディスカッションすることで、お互いの考え方を知ることができました。
治験依頼〜治験開始まで
●契約に関する書類の整理
→開始手続きの簡素化により
 手間とコストの削減
●担当CRCを早期に決定
→契約前から治験開始の準備
 と患者選定を行うことで、
 契約と同時に説明ができる
エントリー促進について
●契約までの段階で候補患者を選定
●地域連携の活用
→患者を紹介してもらう
●途中でエントリーが停滞した時に医局説明会を実施
●認定看護師との連携
→他施設では患者紹介を
 受けた例がある
 契約と同時に説明ができる
データ整備について
●診療中に、必要なデータをカルテやワークシートに残す
●カルテに必要な情報を、他職種にも説明する
 例・有害事象は発現日だけ
   でなく終了日も必要
  ・処方薬が出された
   理由も明記する



「創薬推進連絡協議会治験中核・拠点医療機関等分科会CRC等研修会」に参加して 柚本 育世
2011年3月19日 大阪府咲洲庁舎44階大会議室
講師:柚本 育世 参加者:森下 典子、石山 薫
 製薬会社から4名、医療機関から14名の参加がありました。製薬会社の方から、「依頼者における症例報告書の取扱い」について講演があった後、「グローバルスタディ実施における病院内の諸問題 〜タイムリーでスムーズな症例報告書を作成するために〜」というテーマで、お話させていただきました。その後、2グループに分かれて「タイムリーでスムーズなCRF作成のために」というテーマで、グループワークを実施しました。
 どの施設でも、有害事象の取扱いや併用薬とその使用理由の確認についての業務が煩雑になっているという意見が多くありました。また、モニタリングの仕方についても、議論がありました。
原資料の残し方について、基本はカルテ記載であり、経過表やワークシートを上手に活用すればよいのではないかという意見があり、今後の課題となりました。大阪府下の他施設のCRCと交流する機会が少なかったので、よい機会であったと思います。今回の研修で得たことを、今後の業務に生かしていきたいと思います。



 治験にご参加いただくためには、被験者候補の方が各治験で定められている適格基準に合致する必要があります。適格基準の内容としては「現病歴」「既往症」「合併症」「併用薬」「過去の治療歴」「検査結果」「画像検査」などがあります。この基準は、治験によって異なり、有効性や安全性の評価への影響を考慮して設定されています。CRCも医師の確認補助として、その治験の適格基準を1つ1つカルテで確認しています。1つでも、抵触する項目があると、その治験への参加はできなくなります。カルテ上で、適格基準を満たしていると情報収集していても、CRCが説明補助をする際に被験者からの情報で適格基準に抵触していることがわかることもあります。適格基準を満たす患者様がいらした場合、基本的には、責任医師・分担医師よりCRCへ連絡が入るようになっています。しかし、複雑なプロトコールが多く、なかなか患者登録できない治験もあります。その場合はCRCも電子カルテの疾患名などからの検索機能で患者様を選んだり、来院予約画面から患者様の適格基準を確認(スクリーニング)し、候補者リストの作成の補助を行っています。
 また、国際共同治験が増えるなか、日本の課題として、スピードを上げることがあります。医師とともにCRCもリクルートやスクリーニング(適格性の確認)を行うことで、契約から被験者の登録までの期間が短くなり、治験実施のスピードアップに繋がっています。
   
治験クイズ答え:@



  3月、4月で室員の異動があります。紙面をお借りしてご挨拶します。
看護師長:森下 典子
4/1より厚生労働省に出向することになりました。
3年前、国立病院機構本部から大阪医療センターに戻ったことがつい最近のように感じます。この3年で臨床研究推進室の役割も院内外ともに色々と変化しています。当室は様々な職種の者が協働して1つのことを成し得ていく、まさに病院の縮図であると考えています。看護師長という役職がついて、従来のようなCRC活動はほとんど叶いませんでしたが、複雑な組織体制だからこそスタッフの思いをくみ取り、組織運営を円滑に進めていくためにはこのような役回りも必要なのではないかと3年間を総括しています。残念ながら私の後任はありませんがこれからも当室の運営に職員の皆様のお力添えをどうぞよろしくお願いいたします。
東北・関東は現在大変な状況にありますが、東京で大阪医療センターのますますの発展を心から願っています。各方面からいただいたご指導・ご鞭撻に心からお礼申し上げます。ありがとうございました。
 
同意取得について次のうち、間違っているものがあります。さて、何番でしょう?(回答はP.3下)
@ 被験者となるべきものを治験に参加させるとき
  は、同意取得後、治験の内容その他の治験に
  関する事項について文書により説明を行う。
A 被験者となるべき者が同意の能力を欠くこと等
  により同意を得ることが困難であるときは、
  代諾者となるべき者の同意を得ることにより
  被験者となるべき者を治験に参加させることが
  できる。
B 治験責任医師等は、説明文書の内容その他治験
  に関する事項について、被験者になる者に質問
  する機会を与え、かつ質問に十分答えなければ
  ならない。
 
昨年の年末に「臨床研究推進室ニュース」の認知度の調査を全職員にお願いしました。合計656名の方々からご回答をいただきました。ご意見を今後の
紙面に反映できるよう現在まとめている最中です。お忙しい中ご協力をいただき、ありがとうございました。
治験主任:土井 敏行
3月1日付けで配属されました治験主任の土井です。
京都医療センターでは、約7年治験業務を担当していましたが、平成19年からは調剤業務を担当していました。この4年間で治験を取りまく環境も大きく変化しているものと思われるので出来るだけ早く
その変化に対応できるよう頑張っていきます。皆様からのご指導よろしくお願いします。
 
経理係・治験臨床研究費担当
西村 和雄

4月から舞鶴医療センターの契約係へ異動することとなりました。在任中は大変お世話になりました。11ヶ月間と短い期間ではありましたが、貴重な経験を得ることが出来たと思います。やり残したことが多々あり、心残りではありますが、後任は同じく経理係の小橋が担当いたしますので、今後も変わらずご指導お願い申し上げます。
小橋 博
4月より西村さんの後任に指名されました小橋 博(こばし ひろし)です。経理係・治験臨床研究費担当となりました。経理係の視点から治験事務にはほんの少しだけですがかかわってきたつもりですが、
全く初めての新しい仕事をするつもりです。分からないことだらけですので、よろしくご指導お願いします。
◎治験セミナー
第1回:平成23年5月17日(火)18:00〜19:30
第2回:平成23年6月27日(月)18:00〜19:30
第3回:平成23年10月頃予定
◎臨床研究セミナー
第1回:平成23年4月27日(水)18:00〜19:30
第2回:平成23年5月27日(金)18:00〜19:30
第3回:平成23年10月頃予定
 
編集後記
今年度も臨床研究推進室NEWSをご覧いただきありがとうございました。看護師長の異動、治験主任の交替と体制が大きく変わります。来年度も引き続きよろしくお願いいたします。


発行:独立行政法人 国立病院機構
大阪医療センター 臨床研究推進室




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