栄養管理室

三島喜久子

栄養管理業務
 病院においては感染防止、医療事故防止対策には余念がないが、ベースとなる栄養 管理についてはあまり問題視されていない。当院は「癌治療」の基幹病院であり、入 院患者の約40%が癌患者である。種々の癌治療、手術における強制栄養法(経静脈栄 養、経腸栄養)はprimary therapyとして重要な役割を果たしているにもかかわら ず、当院の入院患者の栄養状態を血清アルブミン値で検討したところ、3.5g/dl以下 の低栄養患者は33%にみられた。また、入院時より退院時の血清アルブミン値が低下 した患者の頻度は43%であった。この結果から判断する限り、適切な栄養管理が全て の患者に行われたとは考えにくい。平成13年より外科において外科部長を中心に薬剤 師、看護師、栄養士からなるNutritional assessment conference (NAC)を隔週に 開催し、栄養アセスメントにより栄養学的にハイリスクの低栄養患者を見いだし、そ れらの患者に最もふさわしい適切な栄養管理をおこない早期退院に努力している。
 一方、心・血管障害の進展に関わる疾病(高血圧・高コレステロール血症、糖尿病 など)の多くは、食生活を中心として生活環境の中に存在する因子の関与が大きい。 しかし診療面に於ける著しい進歩は見られるが、殊に栄養管理については医療の中で の認識が非常に低い。これら疾患に対応すべく食種は栄養量、塩分量の精度管理を行 い適切に提供している。慢性疾患はもちろん、術後の免疫回復や化学療法など、医療 行為の結果の良否は栄養状態、栄養管理が極めて重要であることは過言ではない。

栄養食事指導業務
 これまでの栄養指導は指導後の有効性のみに終止する傾向がみられるが、診療の一 環として行う以上、評価がなされてはじめて有効性の評価を行うべきである。
 平成13年は、外科病棟における幽門側胃切除術後患者の早期経口摂取を試みたクリ ニカルパスの中で栄養士が介入し、退院後の栄養評価をおこなった。入院中の食事お よび教育は退院後の食生活、栄養状態に影響を及ぼすことが判明し、術後早期の経口 摂食は長期的観点からも有効であることを諸学会で発表した。
 また、糖尿病にかかわる環境因子は、運動量の低下と過食に加えてストレスであ り、治療の基本は食事療法と運動療法である。入院など厳格な管理下で行う食事療法 は高い改善効果が得られるが、外来診療における食事療法の効果は極めて低い。糖尿 病は自律神経のアンバランスを来しやすく、ストレスなどの刺激に対する食欲中枢へ の伝達の障害は、食欲亢進を招く要因になる。これらを考慮すると、従来の食生活が 否定され一定の制限が加えられることを受け入れ長期の継続は容易ではなく、糖尿病 患者における食事指導の難しさが生じる。我々は外来における2型糖尿病患者の指導 法をretrospectiv に検証した結果、特定の栄養のみを制限する指導ではなく、患者 自身が生活の中で選択できるように指導した方が長期的に血糖コントロールは良好で あることを考察し、第56回国立病院療養所学会などで発表した。

【平成13年度研究業績発表】
―著述発表―
A-5
鞍田三貴、浦田正司、藤川かなえ、中井雅子、右野久司、島村かおり、峰松 正敏、坂谷光則:「糖尿病における結核・非結核患者の病態および食生活の検討」。 医療の広場、14(3):32-40 

南部征喜、鞍田三貴:生活習慣病としてとらえた高脂血症管理。日本臨床 59(3):374-380

―口演発表―
B-4
平尾素宏藤谷和正蓮池康徳西庄 勇沢村 敏郎三嶋秀行辛 栄成武田 裕辻仲利政 鞍田三貴三島喜久子:胃ガン患者における胃切除術後食(段 階・分割食)の検討。第73回日本胃癌学会総会、金沢、2001年3月

鞍田三貴中山 環今西健二真鍋 悟三島 喜久子瀧 秀樹池田雅彦東堂龍平:外来糖尿病患 者の有効的な栄養食事指導に関する考察。第22回日本臨床栄養協会総会、横 浜、2001年8月

今西健二中山 環真鍋 悟鞍田三貴三島 喜久子辻仲利政井上通敏:国立大阪病院における過去1年間 の全入院患者の栄養評価(第1報)。第56回国立病院療養所総合医学会、仙 台、2001年11月

真鍋 悟中山 環今西健二鞍田三貴三島 喜久子瀧 秀樹池田雅彦東堂龍平:外来糖尿病患 者のL効的な栄養食事指導に関する考察。第56回国立病院療養所総合医学会 、仙台、2001年11月

本田富得福田利明北村良雄赤野威彦今西 健二鞍田三貴笹山久美子奥野明美辻仲利政 :チームによる外科病棟における栄養管理。第56回国立病院療養所総合医学 会、仙台、2001年11月

B-6
鞍田三貴中山 環今西健二真鍋 悟三島 喜久子平尾素宏藤谷和正辻仲利政:開腹胃切除術 後の経口摂取時期についての検討。第11回近畿輸液・栄養研究会、大阪、 2001年9月

B-8
鞍田三貴:栄養部門における共同研究の進め方・まとめ方の実際。第6回 九州国立病院療養所栄養士協議会研修会 教育講演、長崎、2001年2月

鞍田三貴:病気と上手に付き合う法−栄養士の立場から−。文化講演 、名古屋、2001年7月

鞍田三貴:C型肝炎最前線−病気と上手に付き合う法−。文化講演、 横浜、2001年10月

鞍田三貴:C型肝炎最前線PART2−病気と上手に付き合う法−。文化講演 、神戸、2001年11月