泌尿器科

岡 聖次

 6月末に正職医師である高野右嗣の異動(後任は甲野拓郎)があり、入院、外来共 に取り扱い患者数が増加していることなどにより、平成13年(2001年)も例年同様病 気で休むことが許されないくらいにスタッフ全員が日常診療に忙殺された1年であっ た。その中で、留守中の診療は大変ではあったが、北村雅哉が、男性不妊に関する研 究成果により、8月にスウエーデンで開催された学会のシンポジストとして招聘された のは喜ばしいことであった。
 臨床面で当科が取り扱う2大疾患は、例年と同様、悪性腫瘍と尿路結石症であっ た。平成13年の入院患者総数は458名であったが、その内悪性腫瘍患者は183名 (40.0%)、尿路結石症患者は81名(17.7%)を占めていた。
 尿路結石症患者の内、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)を59名に、経皮的腎砕石術 (PNL)を9名、経尿道的尿管砕石術(TUL)を8名に施行し、切石術は尿管結石の2名 のみであった。
 悪性腫瘍の病種別では、平成13年も例年と同様、膀胱癌(97名)、前立腺癌 (56名)、腎細胞癌(24名)が3大取り扱い疾患であったが、前立腺癌患者数が初め て前立腺肥大症(膀胱頚部硬化症を含む)の患者数(48名)を上回ったのは特筆すべ き事である。平成13年に膀胱癌に対し膀胱全摘を行ったのは、4名のみであった。前 立腺癌に対し前立腺全摘除術を11名に行ったが、永続的な尿失禁を生じた症例はなか った。また、腎細胞癌に対し腎保存術(腎部分摘除術あるいは腫瘍核出術)を施行し たのは3例であった。
 研究面では、従来より当科は悪性腫瘍患者の臨床的検討を中心に行っている。平成 13年は、取り扱い規約が大幅に変更された腎細胞癌については、新しい規約による当 科の臨床統計の見直しを行った。膀胱癌については、従来より臨床成績の集計が検案 となっているが、症例数が多いため平成13年中にも完成をすることが出来ず、平成 14年に持ち越しとなった。腎盂・尿管癌については、壁内リンパ管浸潤を有している 症例ではM-VAC療法が無効であることが当科の臨床的検討により判明したため、それ 以後は、病理学的にリンパ管浸潤ありと診断された腎盂・尿管癌患者に対しては、腎 尿管全摘除術時に転移が認められていなくても、M-VAC療法以外の多剤併用化学療法 を予防的に行っているが、かかる治療を行った腎盂・尿管癌患者で再発を来した症例 は今日までのところはない。
 当科では、レジデント(新井浩樹)および臨床研修医(横溝 智)が各1名いる が、かれらは例年の如く、症例報告を中心に学会活動に参加している。
 われわれは今後も引き続き、「充分なインフォームド・コンセントを行った上で、 EBM(evidence-based medicine)に基づいた診療」を行う予定である。

【平成13年度研究業績発表】
―著述発表―
A-0
NOMURA M, KITAMURA M, MATSUMIYA K, TSUJIMURA A, OKUYAMA A MATSUMOTO M, TOYOSHIMA K, SEYA T. Genomic analysis of idiopathic infertile patients with sperm specific depletion of CD 46. Exp Clin Immunogenet 18:42-50, 2001

HOSOTSUBO H, TAKAHARA S, KOKADO Y, PERMPONGKOSOL S, WANG J-D, ANAKA T, MATSUMIYA K, KITAMURA M, OKUYAMA A, SUGIMOTO H. Rapid and simple determination of mycophenolic acid in human plasma by ion-pair RP-LC with fluorescence detection. J Pharm Biomed Anal 24:555-560, 2001

NAKAMURA Y, KITAMURA M, KONDOH N, TAKEYAMA M, MATSUMIYA K, OKUYAMA A. Chromosomal variants among 1789 infertile males. Int J Urol 8:49-52, 2001

HOSOTSUBO H, TAKAHARA S, KOKADO Y, PERMPONGKOSOL S, WANG J.D, TANAKA T, MATSUMIYA K, KITAMURA M, OKUYAMA A, SUGIMOTO H. Rapid and simultaneous determination of mycophenolic acid and its glucuronide conjugate in human plasma by ion-pair reversed-phase high-performance liquid chromatography using isocratic elution. J Chromatograph 753:315-320, 2001

NISHIMURA K, MATSUMIYA K, TSUJIMURA A, KOGA M, KITAMURA M, OKUYAMA A. Association of selenoprotein P with testosterone production in cultured leydig cells. Arch Androl 47:67-76, 2001

MIYAGAWA Y, OKA T, TAKANO Y, TAKAHA M, CHOI S, ISOBE F. Renal artery aneurysm causing hydronephrosis. Int J Urol 8(8): 463-466, 2001

KINOSHITA Y, KONO T, YASUMOTO R, KISHIMOTO T, WANG CY, HAAS GP, NISHISAKA N. Antitumor effect on murine renal cell carcinoma by autologous tumor vaccines genetically modified with granulocyte-macrophage colony-stimulating factor and interleukin-6 cells. J Immunother 24:205-211, 2001

KANAZAWA T, WATANABE M, MATSUSHIMA-HIBIYA Y, KONO T, TANAKA N, KOYAMA K, SUGIMURA T, WAKABAYASHI K. Distinct roles for the N- and C-terminal regions in the cytotoxicity of pierisin-1, a putative ADP-ribosylating toxin from cabbage butterfly, against mammalian cells. Proc Natl Acad Sci U S A 98:2226-2231, 2001

AZUMA H, TAKAHARA S, MATSUMOTO K, ICHIMARU N, WANG J.D, MORIYAMA T, WAAGA A-M, KITAMURA M, OTSUKI Y, OKUYAMA A, KATSUOKA Y, CHANDRAKER A, SAYEGH M H. NAKAMURA T. Hepatocyte growth factor prevents development of chronic allograft nephropathy in rats. J Am Soc Nephrol 12:1280-1292, 2001

YOKOMIZO S, TSUJIMURA A, NONOMURA N, KIRIME S, TAKAHARA S, OKUYAMA A. Metachronous bilateral testicular tumors in a child. J Urol 166: 2341, 2001

KITAMURA M, TSUBONIWA N, AZUMA H, WANG JD, MATSUMIYA K, MATSUMOTO K, KANEDA Y, TAKAHARA S, OKUYAMA A. Gene therapy of ischemic damaged kidney in the rat using hepatocyte growth factor gene. Transpl Proc 33: 2865-2867, 2001

A-2
北村雅哉岡 聖次:陰嚢水腫切除術、精索水腫切除術「Urologic Surgeryシリーズ:男性不妊症と陰茎・陰嚢の手術」83-86、MEDICAL VIEW、 2001

北村雅哉岡 聖次:精液瘤切除術「Urologic Surgeryシリーズ:男 性不妊症と陰茎・陰嚢の手術」87-88、MEDICAL VIEW、2001

北村雅哉岡 聖次:精巣上体切除術「Urologic Surgeryシリーズ: 男性不妊症と陰茎・陰嚢の手術」89-91、MEDICAL VIEW、2001

岡 聖次:どんな症状がなぜ現れるか−疼痛、腫瘤・腫脹、発熱「看護のた めの最新医学講座。泌尿・生殖器疾患」22:41-48、中山書店、2001

岡 聖次:画像診断「看護のための最新医学講座:泌尿・生殖器疾患」22: 75-93、中山書店、2001

北村雅哉:HGF(Hepatocyte Growth Factor)の精子運動に与える影響「鈴木 泌尿器医学振興財団設立10周年記念誌」100鈴木泌尿器医学振興財団、2001

A-3
岡 聖次三木健史新井浩樹辻本裕一宮川  康高野右嗣高羽 津、細木拓野、吉岡靖生:腎盂腫におけ る経尿道的超音波検査の有用性。臨泌55(5):337-342

熊本悦明、塚本泰司、広瀬崇興、松川雅則、高橋 聡、国島康晴、萩原雅彦、石橋  啓、茂田士郎、吉田 浩、今福祐司、村井 勝、渡辺清明、小林芳夫、内田 博、松 田静治、佐藤新一、藤目 真、藤田和彦、猪狩 淳、小栗豊子、山口惠三、松本哲 哉、樫谷総子、大江 宏、西川美年子、岡 聖次北村雅哉高 野右嗣松岡庸洋、古濱俊成、公文裕巳、門田晃一、河野 茂、宮崎義 継、泉川公一、山口敏行、餅田親子:尿路感染症分離菌に対する経口並びに注射用抗 菌薬の抗菌力比較(第21報 1999年)その1.感受性について。Jpn. J. Antibiotics 54:185-216

熊本悦明、塚本泰司、広瀬崇興、松川雅則、高橋 聡、国島康晴、萩原雅彦、石橋  啓、茂田士郎、吉田 浩、今福祐司、村井 勝、渡辺清明、小林芳夫、内田 博、松 田静治・佐藤新一、藤目 真、藤田和彦、猪狩 淳、小栗豊子、山口惠三、松本哲 哉、樫谷総子、大江 宏、西川美年子、岡 聖次北村雅哉高 野右嗣松岡庸洋、古濱俊成、公文裕巳、門田晃一、河野 茂、宮崎義 継、泉川公一、山口敏行、餅田親子:尿路感染症分離菌に対する経口並びに注射用抗 菌薬の抗菌力比較(第21報 1999年)その2.患者背景。Jpn. J. Antibiotics 54:217-229

熊本悦明、塚本泰司、広瀬崇興、松川雅則、高橋 聡、国島康晴、萩原雅彦、石橋  啓、茂田士郎、吉田 浩、今福祐司、村井 勝、渡辺清明、小林芳夫、内田 博、松 田静治・佐藤新一、藤目 真、藤田和彦、猪狩 淳、小栗豊子、山口惠三、松本哲 哉、樫谷総子、大江 宏、西川美年子、岡 聖次北村雅哉高 野右嗣松岡庸洋、古濱俊成、公文裕巳、門田晃一、河野 茂、宮崎義 継、泉川公一、山口敏行、餅田親子:尿路感染症分離菌に対する経口並びに注射用抗 菌薬の抗菌力比較(第21報 1999年)その3.感受性の推移。Jpn. J. Antibiotics 54:231-322

A-4
奥山明彦、野々村祝夫、西村和郎、北村雅哉、山中幹基、高原史郎、吉村一 宏、三宅 修、東田 章、小角幸人:臨床医学の展望−泌尿器科学。日本医事新 報 4011:17-32

北村雅哉岡 聖次、奥山明彦:男性における加齢変化とED。泌 尿器外科 14:1119-1123

―口演発表―
B-1
KITAMURA M. Prostasomal CD46 and anti-measle virus effect Wenner-Gren Foundations. International Symposium on Prostasomes. Stockholm, Sweden, June 2001

B-4
公文裕巳、門田晃一、熊本悦明、塚本泰司、広瀬崇興、萩原雅彦、石橋 啓、茂田士 郎、吉田 浩、今福祐司、村井 勝、渡辺清明、小林芳夫、内田 博、藤目 真、藤 田和彦、猪狩 淳、小栗豊子、松田静治、山口恵三、松本哲哉、樫谷総子、大江  宏、西川美年子、岡 聖次高野右嗣、河野 茂、宮崎義継、山口、 餅田親子:尿路感染症分離菌に対する抗菌薬の抗菌力比較。第49回日本化学療法 学会総会、横浜、2001年5月

甲野拓郎、川嶋秀紀、西阪誠泰、吉田直正、池本慎一、杉村一誠、岸本武 利:PPAR-gamma特異的リガンド15dPGJ2によるヒト腎癌細胞の抗腫瘍効果 について。第89回日本泌尿器科学会総会、神戸、2001年4月

杉村一誠、田中美彦、田中智章、甲野拓郎、金川賢司、坂本信宣、高野令 名、川嶋秀紀、岸本武利:DPT誘発性嚢胞腎における硫酸転移酵素。第89回日本泌 尿器科学会総会、神戸、2001年4月

桝田周佳、西阪誠泰、安本亮二、河西宏信、河野学、田中智章、甲野拓郎、 岸本武利:当院における前立腺癌患者の治療の選択状況について。第89回日本泌 尿器科学会総会、神戸、2001年4月

金澤 卓、甲野拓郎、渡辺雅彦、日比谷優子、小山恒太郎、田中紀章、杉村  隆、若林敬二:モンシロチョウ由来ピエリシンー1のアポトーシス誘導機構の解 析。第60回日本癌学会総会、横浜、2001年9月

B-6
新井浩樹岡 聖次松岡庸洋高野右嗣北村 雅哉高羽 津河原邦光倉田明彦:直腸と左腎に発 生した平滑筋肉腫の1例。第174回日本泌尿器科学会関西地方会、京都、 2001年2月

松岡庸洋岡 聖次新井浩樹高野右嗣北村 雅哉高羽 津濱中紀子河原邦光倉田明彦 :眼窩に転移した膀胱癌の1例。第174回日本泌尿器科学会関西地方会、 京都、2001年2月

横溝 智、花房 徹、矢澤浩治、福原慎一郎、高原史郎、奥山明彦:ABO不適 合腎移植3例の経験。第175回日本泌尿器科学会関西地方会、西宮、2001年5月

横溝 智新井浩樹松岡庸洋甲野拓郎高野 右嗣北村雅哉高羽 津岡 聖次河原邦光 倉田明彦、下江庄司:術前診断が困難であったAMLの2例。第176回 日本泌尿器科学会関西地方会、神戸、2001年10月

甲野拓郎北村雅哉横溝 智新井浩樹松岡 庸洋高羽 津岡 聖次河原邦光倉田明彦 、岩佐 厚:MVAC療法によりCRを得たplasmacytoid TCCの1例。第177回日本 泌尿器科学会関西地方会、草津、2001年12月