脳神経外科
山崎麻美

 生命科学最後のフロンティア領域であるといわれる中枢神経系に発生した病変に対して外科的治療を行う脳神経外科では、臨床においては従来の経験に頼った外科手術から、疫学的証拠に基づき最新の医療工学機器を駆使した低侵襲な治療(evidence based and less Invasive surgery through high technology)に大きく移行している。また臨床研究においても神経科学や分子生物学の進歩を手法として取り入れ、より質の高い研究を目指している。

1・先天性水頭症の分子生物学的メカニズム解明と治療法開発(山崎麻美)
厚生労働省特定疾患対策研究事業先天性水頭症調査研究班を主催し、平成14年度は、胎児水頭症の診断基準/治療指針を作成するためのプロジェクトを発足し、拠点調査を開始している。水頭症の遺伝子集積センターを設立し、これまでに全国34施設より390検体を集積し、遺伝子解析を行い、X連鎖性遺伝性水頭症の24家系に新規遺伝子異常を同定した。

2.ヒト神経幹細胞の培養に関する研究(山崎麻美)
神経幹細胞の移植により損なわれた神経の機能を再生しようという試みは、神経疾患を扱う我々には、最も夢のある領域であるが、いまや臨床前研究まで到達している。平成11年からから当院では、慶應大学やTERCと共同でヒト神経幹細胞の培養に関する研究を進めてきた。

3.悪性脳腫瘍に対する遺伝子治療(森内秀祐)
米国アンダーソン癌研究所から、頭頚部腫瘍に対して遺伝子治療と化学療法または放射線治療の併用療法の有効性が報告されている。遺伝子治療と定位放射線治療の併用療法を行い、既に動物実験において最悪性の膠芽腫で明らかな有効性を報告した。米国と共同で臨床応用することを検討している。

4.未破裂脳動脈瘤の予後調査(中島伸)
未破裂脳動脈瘤に関して2つの予後調査【「未破裂脳動脈瘤の自然経過と予防的治療法に関する研究」(厚生労働省循環器病研究委託事業)・「日本未破裂脳動脈瘤悉皆調査」(日本脳神経外科学会)】に参加し、データの収集をおこなった。これらの研究は全国の脳神経外科施設で未破裂脳動脈瘤のデータを蓄積し、自然経過と治療に伴う危険性を正確に評価して、未破裂脳動脈瘤の治療方針の確立することを目的としている。

5.画像支援脳神経外科手術(中島伸)
高精細3次元画像・手術用ナビゲーター・オープンMRIは、困難な手術をより安全に行うことを可能にした。そこで当院では、これらの高額な医療機器にかわるものとして、どのような施設においても実現可能かつ必要十分な情報を含んだ新しい画像再構成法を開発し、それに基づいた手術法の実用化を目指している。

6.神経内視鏡による手術手技の開発(埜中正博)
神経内視鏡を用いる事でより低侵襲に、かつ安全に治療を行える支援システムを開発し、従来の問題点を改善し、手術成績の向上を目指す試みを行っている。

【平成14年度研究業績発表】
A-0
KANEMURA Y, NORI H, KOBAYASHI S, ISLAM O, KODAMA E, YAMAMOTO A, NAKANISHI Y, ARITA N, YAMASAKI M, OKANO H, HARA M, and MIYAKE J. Evaluation of In Vitro Proliferative Activity of Human Fetal Neural Stem/Progenitor Cells Using Indirect Measurements of Visible Cells Based on Cellular Metabolic Activity, J Neurosci Res 69: 869-879

MORIUCHI S, WOLF D, TAMURA M, YOSHIMINE T, MIURA F, COHEN J, and GLORIOSO JC. Double suicide gene therapy using a replication defective herpes simplex virus vector reveals reciprocal interference in a malignant glioma model, Gene Ther 9: 584-591

MIURA F, MORIUCHI S, MAEDA M, SANO A, MARUNO M, TSANACLIS AM, MARINO R Jr, GLORIOSA JC, YOSHIMINE T. Sustained release of low-dose ganciclovir from a silicone formulation prolonged the survival of rats with gliosarcomas under herpes simplex virus thymidine kinase suicide gene therapy, Gene Ther 9:1653-8

MAEDA M, MORIUCHI S, SANO A, YOSHIMINE T. New drug delivery system for water-soluble drugs using silicone and its usefulness for local treatment:application of GCV-silicone to GCV/HSV-tk gene therapy for brain tumor, J Control Release 84: 15-25

A-2
山崎麻美:先天性疾患「New脳神経外科手術マニュアル」有田憲生、26-31、メディカ出版、大阪

山崎麻美:小児脳神経外科疾患と遺伝子異常 「CLINICAL NEUROSCIENCE」(小児神経外科疾患の基礎)20(3):263-266、中外医学社、東京

山崎麻美:水頭症「脳神経外科臨床指針」橋本信夫:528-535、中外医学社、東京

A-3
木下章、中谷進、大槻秀夫、山崎麻美、森内秀祐、北村文、澤田憲治:頚動脈(lateral type)に対するcovered stentの応用について。日本血管内治療学会誌3(1):4-7

A-4
山崎麻美、金村米博、岡本伸彦:先天性水頭症の遺伝子診断。産婦人科の実際51(3):365-372

金村米博、山崎麻美:ヒト神経幹細胞。医学のあゆみ201(5):307-312

A-5
坂本博昭、高見俊宏、森川俊枝、北野昌平、西川節、原充弘、金村米博、山崎麻美:脊髄髄膜瘤の神経機能回復に関する基礎研究?新生ラット脊髄経路障害モデルにおける神経幹細胞移植による皮質脊髄路構築の試み?。厚生科学研究費補助金 脳科学研究事業 平成13年度総括・分担研究報告書19-22

原正之、金村米博、山崎麻美、有田憲生、岡野栄之、三宅淳:ヒト神経幹細胞の安定・大量培養法の開発?細胞増殖測定法の改良?。厚生科学研究費補助金 脳科学研究事業 平成13年度総括・分担研究報告書23-26

上村岳士、森竹浩三、中山登志子、玉腰暁子、川村孝、稲葉裕、山崎麻美:先天性水頭症全国疫学調査?出生時期と手術時期による臨床像の比較?。厚生科学研究費補助金 特定疾患対策研究事業 平成13年度総括・分担研究報告書38-43

小林洋介、渡部美穂、岡田由紀、澤洋文、鈴木宏志、金村米博、山崎麻美、長嶋和郎、池田恭治、本山昇:DNA polymerase(β2)ノックアウトマウスにおける水頭症発症メカニズムの解析と水頭症DNAバンクにおける遺伝子異常の解析。厚生科学研究費補助金 特定疾患対策研究事業 平成13年度総括・分担研究報告書58-62、大阪

中村康寛、山本統彦、熊丸えり子、金村米博、山崎麻美、岡野栄之:ヒト正常発育脳および水頭症脳における脳構築の変化。厚生科学研究費補助金 特定疾患対策研究事業 平成13年度総括・分担研究報告書63-66

金村米博、吉岡絵麻、秀石剛夫、西川伊津子、山崎麻美:水頭症遺伝子バンクを利用した先天性水頭症原因遺伝子の検索?3年間の活動報告?。厚生科学研究費補助金 特定疾患対策研究事業 平成13年度総括・分担研究報告書71-80

伏木信次、矢追毅、金村米博、山崎麻美:水頭症バンク全前脳胞症患者5例における遺伝子異常の解析。厚生科学研究費補助金 特定疾患対策研究事業 平成13年度総括・分担研究報告書81-84

坂本博昭、山崎麻美、金村米博、岡本伸彦、森鑑二、高見俊宏、北野昌平、西川節:脊髄髄膜瘤症例とその家系における葉酸代謝酵素5,10methylenetetrahydrofolate reductase (MTHFR)遺伝子の1塩基置換C677TとA1298Cの解析。厚生科学研究費補助金 特定疾患対策研究事業 平成13年度総括・分担研究報告書85-89

岡本伸彦、金村米博、山崎麻美:小脳形成異常症における遺伝子異常の検索?WNT1を主として?。厚生科学研究費補助金 特定疾患対策研究事業 平成13年度総括・分担研究報告書90-92

山崎麻美、金村米博、岡本伸彦、坂本博昭、高橋義男、長坂昌登、中川義信、森本一良、佐藤博美、森鑑二、有田憲生:本邦によるX- linked hydrocephalusおよびMASA症候群のL1CAM遺伝子?新規遺伝子異常17家系と遺伝型・臨床型の相関について?。厚生科学研究費補助金 特定疾患対策研究事業 先天性水頭症の分子生物学的メカニズム解明と治療法開発に関する研究 平成13年度総括・分担研究報告書193-96

B-2
KAMIGUCHI H, YAMASAKI M. The molecular basis of X-linked hydrocephalus. The2002 Winter Neuroscience Symposium organized by Mayfield Clinic and Mayo Clinic in joint sponsorship with The Cleveland Clinic Foundation, Snowmass Village, CO, USA, March, 2002 

YAMADA J, KATO A, KISHIMA H, SAITOH Y, HIRATA M, YOSHIMINE T. A hybrid navigation system (Microscopic optical tracking and electromagnetic suction tube tracking), Computer Assisted Radiology and Surgery 2002 (CARS2002), 16th International Congless and Exhibition, Paris, France, June 2002

NONAKA M, YAMASAKI M, KAGAWA N, KANEMURA Y, YAMADA J, KITAMURA A, NAKAJIMA S, MORIUCHI S, SAWADA K. Clinical Feature of Infantile Brain Tumors. The 30th Annual Meeting of International Society for Pediatric Neurosurgery, Kyoto, October 2002  

YAMASAKI M, KANEMURA Y, OKAMOTO N, SAKAMOTO H. Analysis of L1CAM Mutations In X-Linked Hybrocephalus. Seventeen Novel Mutations And Clinical Evaluation. The 30th Annual Meeting of International Society for Pediatric Neurosurgery, Kyoto, October 2002

B-3
山崎麻美:水頭症の分子遺伝学。第19回臨床細胞分子遺伝研究会、大阪、2002年6月

森内秀祐、吉峰俊樹、丸野元彦、泉本修一、鈴木強、山崎麻美:プロモーターによる腫瘍特異的増殖型HSV-TK発現HSV-1ベクターによるグリオブラストーマに対する新規遺伝子治療の開発。第61回日本癌学会、東京、2002年10月

B-4
北村文、山崎麻美、澤田憲治、森内秀祐、木下章、大槻秀夫、中谷進、寺田志津子、渡辺嘉之、御供政紀:発達遅滞で発症した乳児小脳血管腫の1例。第30回日本小児神経外科学会、旭川、2002年6月

山田淳二、丸野元彦、二宮宏智、松田佳子、原純一、吉峰俊樹:髄芽腫/PNETに対する大量化学療法併用療法と治療成績。第30回日本小児神経外科学会、旭川、2002年6月

小林哲、金村米博、山本篤世、児玉恵理、森英樹、中西陽子、モハメドイスラム、山崎麻美、岡野栄之、原正之、三宅淳:レチノイン酸のヒト神経幹細胞の分化誘導に及ぼす効果の検討。第17回神経組織の成長・再生・移植研究会 学術集会、東京、2002年6月

金村米博、原正之、山崎麻美、岡野栄之、三宅淳:移植用ヒト神経幹細胞の大量・安定・安全培養法の開発。第17回神経組織の成長・再生・移植研究会 学術集会、東京、2002年6月

森英樹、金村米博、小林哲、山本篤世、児玉恵理、モハメドイスラム、中西陽子、山崎麻美、岡野栄之、原正之、三宅淳:Non-RI法を用いたヒト神経幹細胞の増殖率の測定。第17回神経組織の成長・再生・移植研究会 学術集会、東京、2002年6月

坂本博昭、北野昌平、森川俊枝、山崎麻美、金村米博、岡本伸彦、森鑑二、西川節:本邦における葉酸代謝酵素methylene tetrahydrofolate reductase(MTHFR)遺伝子の1塩基置換の検討。日本二分脊椎研究会、名古屋、2002年6月

森内秀祐、丸野元彦、鈴木強、泉本修一、山崎麻美、吉峰俊樹:無症候性髄膜腫:腫瘍増大例とその画像所見からみた治療方針の検討。第61回日本脳神経外科学会総会、松本、2002年10月

埜中正博、伊藤守、中島伸、森内秀祐、山田淳二、澤田憲治:内視鏡下クモ膜嚢胞開窓術後の再閉塞防止の工夫。第61回日本脳神経外科学会総会、松本、2002年10月

山田淳二、加藤天美、貴島晴彦、平田雅之、谷口理章、斉藤洋一、吉峰俊樹:腫瘍摘出術へのナビゲーションシステムの有用性。第61回日本脳神経外科学会総会、松本、2002年10月

山田淳二、加藤天美、貴島晴彦、平田雅之、吉峰俊樹:脳機能領域近傍腫瘍摘出術におけるナビゲーション手術の有用性。第7回日本脳腫瘍の外科学会、岐阜、2002年11月

埜中正博、山崎麻美、伊藤守、中島伸、森内秀祐、澤田憲治:内視鏡下クモ膜嚢胞開窓術後の再閉塞防止の工夫。第9回日本神経内視鏡学会、東京、2002年11月

山田淳二、埜中正博、中島伸、森内秀祐、澤田憲治、山崎麻美:新生児・乳児の腹臥位手術の工夫。第20回日本こども病院神経外科医会、熊本、2002年11月

埜中正博、山田淳二、中島伸、森内秀祐、澤田憲治、山崎麻美:乳児期に出血発症した第四脳室内海綿状血管腫の1例。第20回日本こども病院神経外科医会、熊本、2002年11月

山崎麻美、埜中正博:simple hydrocephalusについて。厚生労働省科学研究費特定疾患対策事業『先天性水頭症』調査研究班平成14年度第2回班会議、東京、2002年12月

中村康寛、山本統彦、熊丸えり子、金村米博、山崎麻美、岡野栄之:ヒト発育小脳におけるモノクローナル抗体による免疫組織化学的検討。厚生労働省科学研究費特定疾患対策事業『先天性水頭症』調査研究班平成14年度第2回班会議、東京、2002年12月

岡本伸彦、金村米博、山崎麻美:小脳形成異常症における遺伝子異常の検索-Engrailed1を中心に?。厚生労働省科学研究費特定疾患対策事業『先天性水頭症』調査研究班平成14年度第2回班会議、東京、2002年12月

金村米博、坂本博昭、北野昌平、山崎麻美:L1CAM遺伝子のsilent mutationを呈したX連鎖性遺伝性水頭症の2家系。厚生労働省科学研究費特定疾患対策事業『先天性水頭症』調査研究班平成14年度第2回班会議、東京、2002年12月

B-6
森内秀祐、山田淳二、中島伸、埜中正博、澤田憲治、山崎麻美:第三脳室内に進展した松果体奇形腫:Occipital transtentorial and infrasplenial approachにより全摘出に成功した一例。第53回大阪大学脳神経外科関連施設臨床懇話会、吹田、2002年7月 

金村米博、山崎麻美、岡野栄之:L1CAM遺伝子異常を有するヒト神経幹細胞の樹立とその解析。厚生労働省科学研究費特定疾患対策事業『先天性水頭症』調査研究班平成14年度第1回班会議、大阪、2002年9月

澤田憲治、森内秀祐、中島伸、埜中正博、山崎麻美:画像上、悪性グリオーマとの鑑別が困難であった出血性脳梗塞。第44回日本脳神経外科学会近畿地方会、大阪、2002年11月

森内秀祐、大槻秀夫、山崎麻美、木下章、澤田憲治、北村文、中谷進、御供政紀、渡邊嘉之、倉田明彦:画像上、悪性グリオーマとの鑑別が困難であった出血性脳硬塞。第52回大阪大学脳神経外科関連施設臨床懇話会、吹田、2002年1月

森内秀祐、J GLORIOSO、鈴木強、丸野元彦、泉本修一、吉峰俊樹:IkBaM発現によるアポトーシス誘導とHSV-TK/GCV自殺遺伝子治療の併用によるグリオブラストーマに対する遺伝子治療。第55回近畿脳腫瘍研究会、大阪、2002年3月

北村文、山崎麻美、木下章、林伊吹、牟田弘、文元建宇、磯部文隆:気管切開のあと、気管腕頭動脈ろう孔を併発し救命しえた脳腫瘍の一例。第43回日本脳神経外科学会近畿地方会、尼崎、2002年4月

森内秀祐、大槻秀夫、山崎麻美、木下章、中谷進:MRIにて広範な基底核部浮腫と血管狭小化を呈した分娩時子癇による脳室内出血。第43回日本脳神経外科学会近畿地方会、尼崎、2002年4月

B-8
中島伸:脳梗塞と周辺疾患の診察と治療。大阪市港区医師会講演会、大阪、2002年7月