薬剤科
赤野 威彦

基本方針
 平成10年4月より開始された院外処方箋の全面発行も、14年度に於いて89%強を発行しており、当初目標(かかりつけ薬局の推進、面分業の推進、90%以上の発行等)を達成をほぼ推移している状況である。
一方、薬剤業務においては入院患者を中心した必要業務の中で、常に患者中心の医療を考え、専門的知識を駆使しながら他部門と情報交換を図る中で医療チームの一員としての責務を薬剤内部の意思統一を図る上で基本方針を示すこととなった。
 医療全体の中で薬剤師として果たしてきた役割を考えるとき、薬剤部門という「壁」と「門」を自ら構築し、ひたすらこれを守り、壁の中での集団を構築し、自己評価して来たという感は否めない。このような背景の下では、医療人たる薬剤師を期待すべくもなく、社会からの評価も厳しく薬剤師不要論も囁かれる現実は医療の中での薬剤師評価が危機的状況にあることを物語っている。このことが最も顕著に現れた例として、医療法における病院薬剤師定数改定である。
 このような状況の中で、薬剤科として「門戸」の解放、「壁」の撤去を基本的コンセプトとし、薬剤科員一人一人が危機意識を持ち、患者中心の医療を目指し、医師、看護師、また他の多くの職種の方々の協力と指導を得ながら、医療の最前線での評価を確立すべく日々努力している。
業務を遂行する上で、薬剤科内で共有する具体的コンセプトとしては以下の4項目としている。

 1.患者さんにとって有益であること。
 2.基幹施設としての役割が果たせること。
 3.施設経営にとって有益であること。
 4.薬剤師の評価が高まること。

以上4項目のコンセプト基に、実践し課題と考える薬剤科業務を紹介する。

業務内容
T.病棟業務(薬剤管理指導業務・病棟薬品管理業務)
 患者個々の薬物療法に参画し、医薬品情報の提供と薬学的管理に基づいた情報の収集・評価・蓄積によって、医薬品の適正使用を支援する薬剤管理指導業務については平成10年6月より全病棟に拡大し、指導件数も現在に於いては月間1000件強の件数までに拡大するにまでに至っている。

U.IVH・抗癌剤の無菌調製
 注射薬の混合調製については、無菌室・クリームベンチ・安全キャビネット内での調製が「良質の医薬品の供給」と言う意味でも最良である。IVH に関しては、平成10年5月より開始し、現在は月間に1000本近く無菌調製を行っている。抗癌剤に関しては平成14年7月に外来化学療法室が開設され、現在、外科、内科、婦人科、消化器科を対象に月間500本の抗ガン剤無菌調整を施行している。さらにリスクマネージメントの観点からプロトコールのチェックにより過誤防止に努めている。

V.情報管理(収集・提供)
 情報化社会と言われる現在、医療の中で取り扱う情報のすべては、医薬品の使用者である患者の有効性・安全性を確保し、『医薬品の適正使用』にいかに貢献することであり、当薬剤科においても情報の収集・整理・提供について、現在、常備3名の薬剤師を配置し、その拡充強化に努め、調剤薬局との連携においても副作用情報収集等の活動も実施している。

W.治験業務
 適正な治験実施については、国際的な評価に値する臨床データの作成がもとめられており、厚生労働省としても新GCPに基づく治験の実施にかかわる指導を強化しているところである。当薬剤科にあっても治験支援業務を行うCRC(Clinical Research Coordinator)を新たな病院薬剤師業務として位置付け、平成13年度より専任薬剤師3名を配置している。

X.医薬品適正使用より
 1. くすり相談の充実
 現在、薬剤科では「HIV感染患者に対する服薬指導」及び「麻薬服薬指導」については、"くすりの相談室"があり積極的に実施している。しかし、一般外来患者に対する<クスリに関する相談>は受け身的であり、相談窓口も患者が何時でも気軽に訪れ易いとは言い難い環境である。
   薬剤科としては「くすり」に係わる情報をより多くの人達に提供することが、医薬品の適正使用に繋がると確信し、「おくすり相談室」を設置し担当薬剤師を常時対応できる体制を整えている。
 2. 医薬品試験の充実
 当薬剤科においては特殊疾患、非市販薬品等に係わる特殊製剤については薬事委員会を通して、医師の依頼に積極的に応じている。しかし、その調製薬品の品質そして臨床で使用されたその評価については、未だ検討すべき事項が多々あり、業務を強化する必要があると考える。

Y.卒前・卒後教育の充実
 1. 学生、開局薬剤師及び他施設薬剤師・厚生労働省薬剤師実務研修生の教育
 現在、病院薬剤師・開局薬剤師に求められていることは、臨床的知識の充実であり、臨床的業務の確立である。大阪病院薬剤科では学生・薬剤師を受け入れているが、その役割として卒前、卒後教育の充実に力を注ぐことは基幹施設の役割として当然のことであり、学生、既卒薬剤師が医療の場において社会的にその評価を高めるべく指導強化し、更に、今、直面している問題を積極的に解決し、指導的な役割の薬剤師の養成にも今後取り組みを強化して行きたい。
 
 以上6項目を基幹病院としての薬剤科として今後も強化すべき業務と考えている。

【平成14年度研究業績発表】
A- 2
桑原 健:モダンフィジシャン「処方と服薬の重要性」22(3),新興医学出版社,東京,2002年3月

B-2
KUWAHARA T, UEHIRA T, ODA S, YOSHINO M, TOH J, AKANO T, SHIRASAKA T: High frequencies of slow metabolizers of nelfinavir (NFV) in Japanese people infected with HIV. 第14回国際エイズ会議、スペイン、バルセロナ,2002年7月

TERAKAWA N, KIUCHI Y, SAITO Y, OKADA K, ITO N, NAKATA T, YAMAZAKI K, KITAMURA Y, AKANO T: Dorzolamide has little binding ability to synthetic melanin. XV International Congress Of Eye Research,スイス ジュネーブ,2002年10月

B-3
福田利明,谷克也,北村良雄,赤野威彦,樋口久子,笹山久美代,寺山元和,辻仲利政:クリニカルパスにおける術後疼痛管理の問題点と対策について。日本クリニカルパス学会,横浜,2002年11月

B-4
西田真佐夫,島田志美,齋藤 誠,桑原 健,北村良雄,赤野威彦,加藤道夫,池田昌弘:肝疾患に対する栄養療法における薬剤師の役割。第17回日本静脈経腸栄養学会,熊本,2002年1月

本田富得,福田利明,北村良雄,赤野威彦,辻仲利政,今西健二,倉田三貴,笹山久美代,奥野明美:チームによる外科病棟における栄養管理。第17回日本静脈経腸栄養学会,熊本,2002年1月

南畑智代,岸本 歩,堀川裕子,桑原 健,田伏成行,北村良雄,赤野威彦:POSを用いた薬剤管理指導業務-婦人科領域CAP療法-。第24回POS医療学会,倉敷,2002年3月

寺川伸江:外来喘息患者への服薬指導の効果。喘息薬の服薬指導-吸入薬の服薬指導を中心に,神戸,2002年4月

河合 実,小林優子,齋藤 誠,是恒之宏,恵谷秀樹,北村良雄,赤野威彦:正常腎機能患者におけるアンジオテンシンII受容体拮抗薬の影響。第12回日本医療薬学会年会,福岡,2002年10月

島田志美,西田真佐夫,齋藤 誠,桑原 健,北村良雄,赤野威彦,加藤道夫,池田昌弘:INF-βα併用療法の臨床検査値への影響。第12回日本医療薬学会年会,福岡,2002年10月

小林優子,河合 実,齋藤 誠,是恒之宏,恵谷秀樹,北村良雄,赤野威彦:アトロバスタチンの腎機能,肝機能への影響。第12回日本医療薬学会年会,福岡,2002年10月

寺川伸江,木内良明,中田智子,山崎邦夫,北村良雄,赤野威彦:ドルゾラミドと合成メラニンとの親和性について。第12回日本医療薬学会年会,福岡,2002年10月

中田智子,寺川伸江,山崎邦夫,塩谷易之,齋藤 誠,北村良雄,赤野威彦:ドライアイに伴う重症の角膜上皮障害における自己血清点眼液の使用症例。第12回日本医療薬学会年会,福岡, 2002年10月

吉野宗宏,桑原 健,北村良雄,赤野威彦,織田幸子,大谷成人,藤純一郎,上田千里,上平朝子,白阪琢磨:薬物血中濃度の測定とその臨床的意義。第57回国立病院療養所総合医学会,福岡,2002年10月

北村良雄:当院における医薬品に関わる医療事故防止への取り組み。第57回国立病院療養所総合医学会,福岡,2002年10月

松井仁美,田中利夫,北村良雄,赤野威彦,池田雅彦,瀧 秀樹,東堂龍平,久保田稔:超速効型インスリン登場によるインスリン処方割合の変化。第2回先進インスリン療法研究会,名古屋, 2002年11月

北川智子,豊田俊江,柚本育世,堀川裕子,森下典子,政道修二,是恒之宏,楠岡英雄:内用治験薬の包装形態に対する被験者の意識調査,大阪,第23回臨床薬理学会年会,2002年11月

吉野宗宏,桑原 健,北村良雄,赤野威彦,織田幸子,石田哲士,藤純一郎,上田千里,上平朝子,白阪琢磨:当院におけるLopinavir/ritonavirの使用経験。第16回日本エイズ学会学術集会,名古屋,2002年11月

桑原健,井門敬子,畝井浩子,工藤正樹,榊原則寛,佐藤和洋,下川千賀子,清田雅子,寺門浩之,長岡宏一,西野隆,吉野宗宏,白阪琢磨:抗HIV薬の服薬に関するアンケート調査結果報告。第16回日本エイズ学会学術集会,名古屋,2002年11月

桑原健,吉野宗宏,織田幸子,藤純一郎,上平朝子:抗HIV薬の血中濃度と副作用。第16回日本エイズ学会学術集会,名古屋,2002年11月

桑原 健:抗HIV療法における薬物血中濃度測定の現状。第16回日本エイズ学会学術集会,名古屋,2002年11月

B-5
桑原 健:抗HIV薬の薬物療法について。平成13年度エイズブロック拠点病院看護研修会,大阪,2002年2月

桑原 健:抗HIV薬の服薬援助。平成13年度エイズブロック拠点病院カウンセリング研修会,大阪,2002年2月

桑原 健:AIDS診療における薬剤師の役割。平成13年度徳島HIV研究会講演会、徳島,2002年2月

桑原 健:HIV/AIDS治療における薬剤師の役割。広島病院薬剤師会学術講演会、広島,2002年3月

福田利明,太田恭史,北村 良雄,赤野威彦,樋口久子,笹山久美代,吉岡慎一,辻仲 利政:クリティカル・パスウェイにおける術後疼痛管理調査について。医療マネジメント学会,京都,2002年6月

桑原 健:抗HIV薬と副作用。北海道HIV臨床懇話会,札幌,2002年9月

桑原 健:HIV/AIDS治療における薬剤師の役割。関東甲信越HIV感染症講習会、新潟,2002年10月

B-6
島田志美,西田真佐夫,齋藤 誠,桑原 健,北村良雄,赤野威彦:薬剤師の立場から行う栄養療法アセスメントについて。第23回日本病院薬剤師会近畿学術大会,神戸,2002年2月

南畑智代,岸本 歩,桑原 健,北村良雄,赤野威彦:POSを用いた副作用モニタリング-婦人科領域TJ療法-。第23回日本病院薬剤師会近畿学術大会,神戸,2002年2月

吉野宗宏,桑原 健,北村良雄,赤野威彦,織田幸子,石田哲士,藤純一郎,上田千里,上平朝子,白阪琢磨:当院におけるLopinavir/ritonavirの使用成績調査。第16回近畿エイズ研究会,大阪,2002年6月

中田智子,寺川伸江,山崎邦夫,赤野威彦,木内良明,斎藤喜博,塩谷易之,岡田康平,以東奈美:自己血清点眼液の無菌試験。第68回日本中部眼科学会,大阪,2002年11月

松井仁美,田中利夫,北村良雄,赤野威彦,池田雅彦,久保田稔:超速効型インスリン採用前後のインスリン処方割合。第39回日本糖尿病学会近畿地方会,和歌山, 2002年11月