栄養管理室
角谷勲
 慢性疾患、たとえば慢性腎不全の保存療法は、血圧コントロールと低蛋白食が重要であることは知られており、降圧剤の中でACE阻害剤が腎不全の進展抑制に有効であることは十分エビデンスとして蓄積されている。しかし、食事が治療に大きく影響する疾患でありながら、蛋白制限が有効であるというエビデンスは現時点では不十分である。周術期においても、ASPENから提案された静脈経腸栄養の施行に関するガイドラインに従って栄養療法を展開することが必要とされる。つまりはどの疾患においても栄養療法に関するエビデンスが乏しいのが現実である。
 従来から栄養士は、病態生理などから考えられた理論的背景のことをエビデンスと誤解しており、臨床上のエビデンスを作らず、探さず、経験的に続けられてきた方法や従来からの理論にしがみついたままでよしとしている傾向がある。経験や先入観に基づく治療をエビデンスに基づいて変更していくためには、小規模であっても前向き研究を行い、アウトカムを評価するプロセスを積み上げなくてはならない。
 静脈栄養法に比し、腸を介した栄養療法(経腸栄養)が有効であることが知られ、経腸栄養剤が数多く利用されるようになった。これら経腸栄養剤について成分や投与方法など、栄養士は、熟知し、正しく扱わなければならない。15年度は、経腸栄養剤による臨床試験や、従来法からの脱皮を目標に栄養療法のアウトカムである早期退院、術後栄養指標の改善、患者のQOLの向上に結びつく研究成果を発表した。栄養療法は各種治療法の成否を決定する因子であり、医療の質と治療効果の向上に寄与するものであることが示唆されたため、平成15年8月より全科型NSTを設立した。
 今後、NST活動、ガイドラインの作成、栄養療法のクリティカルパスへの組み込み、など専門職としてチーム医療に積極的に参加し、医療行為の成果を決定する栄養療法の重要性を認識し、栄養療法に関するエビデンスを作り上げていく必要がある。

【平成15年度研究発表業績】
A-2
稲山貴代、岩岡浩子、恩田理恵、鞍田三貴、高岸和子、田中弥生、堂薗美奈、富岡加代子、外山健二、中西靖子、長浜幸子、吉岡美津子:「臨床栄養管理」渡辺早苗、松崎政三、寺本房子、125-129、149-196、建帛社、東京、2003年2月

A-4
鞍田三貴、柳崎麻里、今西健二、真鍋悟、藤田清治、辻仲利政:チーム医療における経口栄養療法へのアプローチ。日本臨床栄養学会、24(4)133-139、2003年5月

鞍田三貴、辻仲利政:パス使用による胃切除術後患者の栄養管理。臨床栄養臨時増刊号、102(7)919-924 2003年6月

A-5
桑原節子、片桐義範、高橋美恵子、平野和保、鞍田三貴、石長孝二郎、橋本龍幸、橋本有史、安武健一郎、吉村弘美、池本美智子、船越美帆:臨床栄養管理業務における栄養評価に関する研究。平成14年度財団法人政策医療振興財団助成金研究班報告書、p96、2003年5月

A-6
鞍田三貴、藤村真理子、川上万喜子、表順子:管理栄養士のカリキュラムについて。食生活研究、23、(2)27-31、2003年2月

鞍田三貴、藤村真理子、川上万喜子、表順子:管理栄養士のカリキュラムについて。食生活研究、23(3)20-24、2003年3月

鞍田三貴、角谷勲、辻仲利政、東堂龍平:栄養部門に係る経営改善の取り組みについて〜NST:Nutrition Support Teamの導入による入院患者の栄養状態の改善と経営改善効果について〜。国立病院ニュース 飛翔 Nol30 2003年9月

B-3
辻仲利政、藤谷和正、平尾素宏、竹野淳、鞍田三貴:術後早期経口摂取パスの可能性と利点。第75回日本胃癌学会総会、東京、2003年2月

平尾素宏、藤谷和正、辻仲利政、鞍田三貴:外科臨床におけるクリニカル・パスの役割:ヴァリアンス評価の変遷と術後早期経口スケジュールの検証。第75回日本外科学会総会シンポジウム、札幌、2003年6月

B-4
鞍田三貴、真鍋悟、竹野淳、平尾素宏、藤谷和正、辻仲利政:開腹胃切除術後早期経口摂取の安全性と有効性の評価。第18回日本静経腸学会、盛岡、2003年2月

真鍋悟、鞍田三貴、平野和保、逸見妙子、中井雄子、望月龍馬、西田博樹、毛利美智子:開腹胃切除術後患者の在院日数調査〜政策医療がん疾患施設(近畿)の調査。第58回国立病院療養所総合医学会、札幌、2003年11月

鞍田三貴、大池教子、真鍋悟、角谷勲、辻仲利政:開腹胃切除術後早期経口摂取CPの安全性と有効性の評価。第58回国立病院療養所総合医学会、札幌、2003年

B-5
鞍田三貴:国立病院における臨床栄養管理業務の未来像とは。国立病院栄養士協議会九州支部若手栄養士研究会、福岡、2003年2月

鞍田三貴:癌患者の栄養管理〜チーム医療における経口栄養療養へのアプローチ〜。平成15年度国立病院療養所栄養士協議会近畿支部総会、大阪、2003年4月

澤村敏郎、鞍田三貴、角谷勲、東堂龍平、辻仲利政:国立病院おける入院患者の栄養状態とNST設立の意義・問題。第13回近畿輸液・栄養研究会、大阪、2003年10月

鞍田三貴:栄養士と臨床カンファレンス〜必要とされる栄養士〜症例から考える〜。日本臨床栄養協会近畿地方会、大阪、2003年11月

B-6
鞍田三貴、柳崎麻里、藤村真理子、真鍋悟、竹野淳、澤村敏郎、辻仲利政:Immunonutritionの経口投与による体構成成分の変化、第13回近畿輸液・栄養研究会、大阪、2003年10月

B-8
鞍田三貴:管理栄養士・栄養士の新しい役割〜変わりつつある医療への対応〜。ダノン健康・栄養フォーラム、東京、2003年10月