耳鼻咽喉科
牟田 弘
 臨床面では、林伊吹医師が中心となり、頭頚部悪性腫瘍疾患を対象としたい頭頚部外科にも主力を置いている。微小病変に対しての正確な病理組織診断を行うことは「当然であるが、初期癌も進行癌も、ともに治療前の正確なステージング診断が重要であり、正確な臨床診断を行うとともに、治療は頭頚部外科を中心として、放射線治療や化学療法も併用しながら、治療成績を上げたままで、できる限り治療後のQOLを保つように、各診療科からの多大なご協力をいただいての密接なチーム医療を行っている。また、治療後も長期にわたる慎重な経過観察を行うことにより、極めて良好な治療成績と機能保存や機能再建が得られている。頭頚部癌では重要な問題となる他臓器への重複癌に対しても、適切な早期発見と、適切な集学的治療をおこなうことが可能となっている。特に、頭頚部悪性疾患の正確な診断や、治療後の経過観察には不可欠である頭頚部のエコー検査は、当院耳鼻咽喉科だけで年間700例以上行っており、エコー下のFNAも臨床検査科の密接な協力のおかげで、正確かつ迅速な診断を行っている。

 また耳鼻咽喉科特有の聴覚や平衡機能から音声機能までの、視覚を除いた主な感覚器に対する機能改善医学にも力を注いでいる。中でも手術により声の改善をはかる音声外科の症例は年間約160例と多く、特にプロ歌手に対する音声外科に関しては、当院麻酔科の高い診療レベルでの協力もあり、多くの音楽系大学からの紹介を受けている。また、機能的内視鏡下鼻内開放術や鼓室形成術やアブミ骨手術など、感覚器政策医療ネットワークにそった聴力改善手術にも力を入れ、今後も症例数をのばしていきたい。

 嚥下障害に対しては、林伊吹医師の嚥下に対する生理学的な研究実績を生かして、今後は嚥下障害に対する病態生理に関する電気生理学的な臨床研究を続けることにより、外科的な治療成績の向上を計るとともに、嚥下障害症例に対する普遍的な治療体系を、当院独自のものとして確立していくように目指している。

 臨床研究面では、当科牟田部長が考案した術式である「内転型痙攣性発声障害に対する甲状披裂筋節切除術」が極めて良好な成績を示しており、多くの他施設からも追試と良好な手術成績の報告がなされている。また同じく牟田部長が考案した術式である「難治性喉頭肉芽腫に対する声帯膜様部自家脂肪注入術」も極めて良好な成績を残しており、今のところ当院では11例中再発した症例は皆無である。この術式も、各施設から、多数の追試と良好な手術成績の報告がなされている。

【平成15年度研究発表業績】
A-2
林伊吹:嚥下障害「コア・ローテイション 耳鼻咽喉科・頭頚部外科」竹中洋、32~33、金芳堂、東京、2003年12月

A-3
加藤崇、渡邊雄介、牟田弘、坂田義治、久保武:膠原病に起因した咽喉頭酸逆流症の2例。耳鼻咽喉科臨床、96(4):345-350、20

林伊吹、河田了、李昊哲、櫻井幹士、辻雄一郎、竹中洋:頭頚部扁平上皮癌野天にリンパ節診断における超音波エコーの有用性と問題点。日本耳鼻咽喉科学会会報、106(5):499-506,2003

B-4
長谷川敦子、林伊吹:小児甲状腺乳頭癌の1例。第13回日本頭頚部外科学会総会、仙台、2003年1月

林伊吹、河田了、李昊哲、櫻井幹士、辻雄一郎、長谷川敦子、牟田弘、竹中洋:頭頚部扁平上皮癌における転移リンパ節の診断基準の確立。第27回日本頭頚部腫瘍学会総会、金沢、2003年6月

B-6
林伊吹、吉村勝弘、林 歩、牟田弘:耳下腺手術における顔面神経の見つけ方。第10回北摂頭頚部腫瘍懇話会、高槻、2003年9月

林伊吹、吉村勝弘、林 歩、牟田弘:頚部転移をきたした甲状腺乳頭癌の取扱い。第3回近畿頭頚部腫瘍懇話会パネルディスカッション、大阪、2003年11月

櫻井幹士、林伊吹、長谷川敦子、牟田弘:耳下腺多型低悪性腺癌の1例。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会第284回例会、大阪、2003年3月

伊藤加奈子、川上理郎、田中斉、吉村勝弘:深頚部腫瘍の1例。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会第285回例会、大阪、2003年6月

加藤崇、坂田義治、渡達雄介、牟田弘:咽喉頭酸逆流症の喉頭所見スコア化による治療評価。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会第285回例会、大阪、2003年6月

西川周治、服部康人、李昊哲、東川雅彦、河田了、竹中洋、林伊吹:甲状腺癌における頚部リンパ節転移診断。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会第285回例会、大阪、2003年6月

吉村勝弘、林伊吹、林 歩、牟田弘、長谷川敦子、山本宰啓:両側副鼻腔真菌症の1例。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会第286回例会、大阪、2003年9月

林 歩、吉村勝弘、林伊吹、牟田弘:声帯顆粒細胞腫の1例。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会第287回例会、大阪、2003年12月