耳鼻咽喉科

川上理郎

 耳鼻咽喉科は耳、鼻、咽頭、喉頭、頸部、および気管、食道の各種疾患の治療を行う部門である。実際の治療はめまい、難聴などの内科的治療から、頭頸部癌に対する外科的治療まで広範である。このうち、大阪医療センターでは特に、外科的治療(頭頸部外科)を重視しつつも、バランスの取れた高度な医療が提供できるよう努力している。
 頭頸部腫瘍の治療に関しては、手術治療を中心とし、放射線治療、化学療法を組み合わせる「集学的治療」を導入し、癌に対する根治性を高め、かつ機能温存を図るという困難な目標に挑戦している。一方、進行癌に対しては、外科、形成外科、麻酔科などのご協力の下、思い切った拡大手術とその後の再建手術を行い、良好な成績を収めつつある。今後もさらに研鑽を積み、より高度な手術を導入していく予定である。
 鼻副鼻腔疾患については、既に数年前から内視鏡手術を導入しており、比較的低侵襲でありながら、よい治療効果を上げている。これらの手術で培った内視鏡技術を頸部手術にも応用できないか検討している段階である。
 耳疾患に対しては、大阪医療センターではここ10年ほど手術を行っていなかったが、16年4月の医長交代を機に、鼓室形成術、鼓膜形成術を再開した。今のところ、手術件数は少ないが、潜在的に需要はあると思われ、徐々に件数を増加させる予定である。
 喉頭疾患は牟田前医長の専門分野であって、在任中は大阪では抜きんでた症例数を誇っていた。医長交代後、喉頭疾患に対する手術件数は半減しているが、なお近隣の大病院と比較しても同等以上の症例数はある。声帯ポリープに対する手術だけでなく、喉頭枠組み手術なども積極的に行っている。
 当科の臨床の特徴としては、嚥下障害に対する外科的治療を上げることができる。嚥下障害は高齢化が進む今日、医療関係者が避けては通れない重要な課題である。言語聴覚師が不在という困難な条件の下、輪状咽頭筋切断術や喉頭挙上術といった嚥下機能補助手術を行っている。また、高度誤嚥症例に対しては喉頭気管分離術などの誤嚥防止手術も行っており、近隣医療機関からも高い評価を得ている。今後、さらに依頼件数の増加が予想される分野である。
 臨床研究としては、頸部郭清術の郭清範囲を術前に正確に設定することを目的として術前の超音波診断、穿刺吸引細胞診と手術で摘出したリンパ節の病理組織結果を照合、検討しており、得られた知見をすでに頭頸部腫瘍学会などで発表している。重複癌に対する臨床的検討、頭頸部癌術後患者の嚥下機能に対する検討なども予定している。
 日常の診療では水曜日の夕方に症例検討会を行い、治療方針の決定を行うのみならず、入院患者の現状に対する認識を医局員で必ず共有するようにしている。この検討会では、随時、抄読会、学会の予演会なども行っている。学会発表は、レジデントを中心として積極的に日本耳鼻咽喉科学会大阪地方会のみならず、全国レベルの学会にも出席、発表するようにし、その結果はできるだけ論文の形にまとめるよう指導している。また、出身医局である大阪医科大学耳鼻咽喉科学教室の主宰する腫瘍懇話会、手術手技研究会などにも参加し、新しい知識を得るべく努力している。
【平成16年研究発表業績】
A-0
KAWAKAMI M, ITO K, YOSHIMURA K, TANAKA H:A case of Mediastinal Goiter. Auris Nasus Larynx;31:183-187.2004

KAWAKAMI M, ITO K, TANAKA H, HYO S:Warthin’s tumor of the nasopharynx:a case report. Auris Nasus Larynx; 31:293 -298.2004

KAWAKAMI M, YOSHIMURA K, ITO K, TANAKA H, HIGASHIKAWA M, HYO S:Two cases of Pilomatrixoma in the Cheek. Bulletin of the Osaka Medical College; 50: 13-17.2004

KAWAKAMI M, YOSHIMURA K, HAYASHI I, ITO K, HYO S:Verrucous carcinoma of the tongue: Report of two cases. Bulletin of the Osaka Medical College; 50: 19-22.2004

A-3
李昊哲、河田了、林伊吹、竹中洋:超音波検査を用いた甲状腺乳頭癌の側頸部リンパ節転移の診断。日耳鼻、107:1038-1044. 2004

川上理郎、伊藤加奈子、吉村勝弘、田中斉:術後25年で切除した甲状腺乳頭癌の一例。気食、55: 276-282. 2004

川上理郎、吉村勝弘、伊藤加奈子、田中斎:舌根部に発生した腺様嚢胞癌の一例。済吹医誌、10 :80-83. 2004

川上理郎、伊藤加奈子、田中斎:胸鎖乳突筋皮弁で再建した中咽頭がん側壁型の一例。済吹医誌、10:84-88. 2004

川上理郎、伊藤加奈子、吉村勝弘、兵佐和子、服部康人、田中斉、猪飼重雅、山本博史、東川雅彦:済生会吹田病院耳鼻咽喉科における顔面骨骨折の臨床的検討。済吹医誌、10: 3-8. 2004

伊藤加奈子、川上理郎、田中斎:下咽頭梨状窩瘻の関与が疑われた深頸部膿瘍の一例。済吹医誌、10: 89-92. 2004

B-4
吉村勝弘、林伊吹、林歩、牟田弘、川上理郎:咽喉頭異常感を主訴とした非機能性上皮小体嚢胞の一例。第66回耳鼻咽喉科臨床学会、青森市、2004年6月

林伊吹、吉村勝弘、林歩、牟田弘:甲状腺癌の術前診断に関する検討。第28回日本頭頸部腫瘍学会、福岡市、2004年6月

林歩、吉村勝弘、林伊吹、牟田弘:甲状軟骨転移を来した前立腺癌の一例。第28回日本頭頸部腫瘍学会、福岡市、2004年6月

吉村勝弘、林伊吹、櫟原健吾、川上理郎、牟田弘:篩骨洞結石の一例。第44回日本鼻科学会、東京都、2004年9月

牟田弘、望月隆一、林伊吹、渡邊雄介:喉頭肉芽腫に対する声帯内自家脂肪注入術の治療成績。第56回日本気管食道科学会総会、東京都、2004年11月

笹井久徳、渡邊雄介、牟田弘、吉田淳一、林伊吹、宮原裕、久保武:声帯病理像からみた自家脂肪注入術についての考察。第56回日本気管食道科学会総会、東京都、2004年11月

B-6
望月隆一、渡邊雄介、牟田弘:特発性声帯癒着症の経験。第19回西日本音声外科研究会、名古屋市、2004年1月

渡邊雄介、望月隆一、牟田弘:発症原因を考慮した声帯肉芽腫に対する声帯内自家脂肪注入術の経過。第19回西日本音声外科研究会、名古屋市、2004年1月

吉村勝弘、林伊吹、林歩、牟田弘:無機能性上皮小体嚢腫の1例。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会第288回例会、大阪市、2004年3月

林歩、林伊吹、吉村勝弘、牟田弘、清川裕美:甲状軟骨に転移をきたした前立腺癌の1例。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会第288回例会、大阪市、2004年3月
                         
牟田弘、林伊吹、吉村勝弘、林歩:当科における直達鏡下声帯内脂肪注入術について。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会第288回例会、大阪市、2004年3月

望月隆一、川本将浩、山本圭介、牟田弘、渡邊雄介:特発性声帯癒着症の経験。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第288回例会、大阪市、2004年3月

林伊吹、吉村勝弘、林歩、川上理郎、牟田弘:ALSの嚥下障害に対する耳鼻咽喉科医の関わりについて。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第289回例会、大阪市、2004年6月 

櫟原健吾、吉村勝弘、林伊吹、川上理郎:鎖骨の破壊を伴った頸部膿瘍の一例。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第290回例会、大阪市、2004年9月

吉村勝弘、林伊吹、櫟原健吾、川上理郎、丸川恭子:中咽頭に認めた限局性アミロイドーシスの一例。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第290回例会、大阪市、2004年9月

牟田弘、林伊吹、吉村勝弘、川上理郎、望月隆一、川本将浩、山本圭介:Microlaryngosurgeryを複数回行った症例の検討。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第290回例会、大阪市、 2004年9月

川上理郎:診断確定に一年を要した喉頭癌の一例。第13回北摂頭頸部腫瘍懇話会、高槻市、2004年9月

林伊吹:再発を繰り返した中咽頭癌の一例。第13回北摂頭頸部腫瘍懇話会、高槻市、2004年9月

吉村勝弘:耳下腺低分化腺癌の一例。第13回北摂頭頸部腫瘍懇話会、高槻市、2004年9月

林伊吹、吉村勝弘、櫟原健吾、川上理郎:診断困難であった原発不明癌の一例。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第291回例会、大阪市、2004年12月

吉村勝弘、林伊吹、櫟原健吾、川上理郎、牟田弘:摘出困難であった下咽頭魚骨異物の一例。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第291回例会、大阪市、2004年12月

櫟原健吾、林伊吹、吉村勝弘、川上理郎:結核性顎下腺炎の一例。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第291回例会、大阪市、2004年12月

川上理郎、林伊吹、櫟原健吾、吉村勝弘、牟田弘:まれな経過を辿った一側声帯麻痺例。日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第291回例会、大阪市、2004年12月