耳鼻咽喉科

川上理郎

平成16年4月に川上が医長として赴任して以来、我々の科では耳鼻咽喉科疾患の外科的治療、特に頭頸部腫瘍の手術に重点を置いて治療を行っている。
頭頸部領域は他の部位にもまして呼吸、嚥下、発声などQOLに直結する部位であり、腫瘍周囲の組織にも余裕がない。根治性の向上と形態、機能の温存という両立困難な課題に対し、外科的治療を中心として、放射線、化学療法を効果的に組み合わせた集学的治療で効果を挙げるべく努力している。その際、一般外科、形成外科、麻酔科などの協力が不可欠だが、当院では他科との極めて円滑で強力な協力体制が構築されており、安心して手術に専念でき、結果として安定した成績が得られている。
平成16年4月から17年12月までの1年9ヶ月に行った頭頸部腫瘍関連の手術は聴器を除く耳鼻咽喉科頭頸部外科領域全般に及び、すでに250件以上に達している。その内訳は、上顎癌関連6件、舌10件、口腔4件、中咽頭9件、下咽頭11件、喉頭全摘15件、喉頭部分切除2件、甲状腺55件、耳下腺33件、顎下腺16件、頸部郭清41件、リンパ節摘出13件、頸部再建手術13件、その他頸部良性腫瘍17件などとなっている。これらの手術を的確に行うためには、当然のことながら術前に腫瘍や転移リンパ節の広がりを性格に把握することが不可欠であり、このため当科では、術前診断としてCT、MRIなどに加え、頸部超音波断層検査(エコー)を重要視している。耳鼻咽喉科医師(術者)が直接行うエコー検査とエコーガイド下で行う穿刺吸引細胞診により、頸部腫瘤(甲状腺、唾液腺など)の良性、悪性の判断を行い、また悪性腫瘍の場合にはリンパ節転移の判定とその結果に基づく郭清範囲の決定を行っている。エコー検査の精度を上げることにより不要な侵襲を軽減させ、かつ治療効果を向上させることを目指し成果を上げている。
頭頸部腫瘍、特に悪性腫瘍の治療に重点をおいているからといって耳鼻咽喉科本来の疾患の手術(慢性中耳炎、慢性副鼻腔炎、鼻中隔湾曲症、慢性扁桃炎、喉頭ポリープなど)をおろそかにはせず、音声改善術(嗄声改善を目的とした喉頭形成術、声帯内脂肪注入術など)や両側反回神経麻痺に対する声門開大術、嚥下障害の外科的治療など(喉頭気管分離術など)も積極的に行っている。
18年にはスタッフの大幅な移動もあり耳鼻咽喉科としては正念場を迎えると認識している。現状ではスタッフの質、量とも充分とはいえないがこつこつと実績を積み重ねていくつもりである。

【2005年研究発表業績】
A-0
SASAI H,WATANABE Y,MUTA H,YOSHIDA J,HAYASHI I,OGAWA M,KUBO T:Long-term histological outcomes of injected autologous fat into human vocal folds after secondary laryngectomy.Otolaryngol Head Neck Surg 132:685-688.2005

KAWAHARA K,MUTA H,HAYASHI I,KURATA A:Pemphigus Vulgaris-like solitary lesion confined to the vocal cord.Arch Histopathol D D;12:1-4.2005

A-3
西川周治、萩森伸一、李昊哲、星島秀昭、竹中洋:エアバッグによるOnly Hearing Earの急性感音難聴例。耳鼻臨床;98:531-535.2005

呉明美、荒木倫利、藤山吉更、西川周治、櫻井幹士、服部康人、河田了、藤枝重治、竹中洋:診断に苦慮した上顎明細胞型粘表皮癌の1例。耳喉頭頸;77:637-640.2005

林伊吹、川上理郎、吉村勝弘、櫟原健吾、牟田弘:診断摘出に難渋した下咽頭粘膜下に残存した魚骨異物の1例。喉頭;17:101-105.2005

望月隆一、牟田弘、川本将浩、山本圭介、林伊吹:microlaryngoscopyを複数回行った症例の検討。耳鼻;51:339-343.2005

B-4
林伊吹、吉村勝弘、櫟原健吾、川上理郎、牟田弘:摘出困難であった下咽頭魚骨異物の一例、
第17回日本喉頭科学会、名古屋市、2005年3月

櫟原健吾、林伊吹、吉村勝弘、川上理郎、萩森伸一、山本有美子:最近経験した耳下腺唾石の3症例、第106回日本耳鼻咽喉科学会総会、大阪市、2005年5月

牟田弘、望月隆一、川本将浩、山本圭介、林伊吹:Microlaryngoscopyの再手術を必要とした症例の検討、第106回日本耳鼻咽喉科学会総会、大阪市、2005年5月

川上理郎、吉村勝弘、櫟原健吾、林伊吹:巨大な咽喉頭血管腫の1例、第67回耳鼻咽喉科臨床学会、松山市、2005年7月

吉村勝弘、林伊吹、櫟原健吾、川上理郎:喉頭蓋リンパ管腫の1例、第67回耳鼻咽喉科臨床学会、松山市、2005年7月

林伊吹、川上理郎、吉村勝弘、櫟原健吾、林歩、牟田弘、清川裕美:喉頭へ転移をきたした悪性腫瘍の2例、第67回耳鼻咽喉科臨床学会、松山市、2005年7月

吉村勝弘、林伊吹、櫟原健吾、川上理郎:耳下腺内顔面神経鞘腫の1例、第18回日本口腔咽頭科学会、旭川市、2005年9月

川上理郎、吉村勝弘、林伊吹、櫟原健吾:顎下腺結核の1例、第18回日本口腔咽頭科学会、旭川市、2005年9月

櫟原健吾、吉村勝弘、林伊吹、川上理郎:上顎洞内に異物遺残を認めた一例、第44回日本鼻科学会、大阪市、2005年9月

B-6
林伊吹:頸部リンパ節腫脹、第14回北摂頭頸部腫瘍懇話会、高槻市、2005年2月

川上理郎:咽喉頭の巨大な血管腫症例、第14回北摂頭頸部腫瘍懇話会、高槻市、2005年2月

吉村勝弘、林伊吹、櫟原健吾、川上理郎:蝶形骨洞嚢胞の1例、日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第292回例会、大阪市、2005年3月

西川周治、林伊吹、川上理郎、吉村勝弘、櫟原健吾:悪性黒色腫の喉頭転移例、日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第293回例会、大阪市、2005年6月

西川周治、櫟原崇宏、林伊吹、川上理郎:転移性口蓋扁桃腺癌の1例、日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第294回例会、大阪市、2005年9月

櫟原崇宏、林伊吹、西川周治、川上理郎:異所性縦隔内甲状腺を伴った甲状腺濾胞腺腫の1例、日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第294回例会、大阪市、2005年9月

林伊吹:頭頸部癌に対する化学療法の進歩 第一選択のメニューをさぐる、第16回北摂頭頸部腫瘍懇話会、高槻市、2005年11月

川上理郎:症例検討 原発不明癌に対する対応、第16回北摂頭頸部腫瘍懇話会、高槻市、2005年11月

長谷川恵子、川上理郎、西川周治、櫟原崇宏、林伊吹:甲状腺神経鞘腫の1例、日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第295回例会、大阪市、2005年12月

西川周治、林伊吹、櫟原崇宏、長谷川恵子、川上理郎:気管癌の1例、日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第295回例会、大阪市、2005年12月

櫟原崇宏、林伊吹、西川周治、長谷川恵子、川上理郎:診断、治療に苦慮した原発不明癌の1例、日本耳鼻咽喉科学会大阪地方連合会 第295回例会、大阪市、2005年12月

B-8
川上理郎:頭頸部腫瘍とその臨床(総論)、第6回おおさか健康セミナー、大阪市、2005年2月

林伊吹:頭頸部腫瘍とその臨床(各論)、第6回おおさか健康セミナー、大阪市、2005年2月

川上理郎:スギ花粉症について、第6回おおさか健康セミナー、大阪市、2005年2月

B-9
川上理郎:NHKラジオ「関西ラジオワイド 季節の健康」、副鼻腔炎 7月27日、アレルギー性鼻炎 8月24日