精神神経科

越智直哉

 本院精神神経科は、臨床部門において平成15年度までは神経内科、精神科の2部門を統合し、神経内科部門ではパーキンソン病、多発性硬化症などの神経難病の診療を中心に行ってきた。しかし平成16年度より、全科的リエゾンサービスを中心とした医療提供を中心とし、原則として科独自の入院患者はとらない方針に変更した。従って入院が必要な神経難病の新規の取り扱いを中止することになり、精神科を中心とした診療体制となった。入院部門では、他科に入院中の患者のメンタルケアが中心となっている。それに伴い特に@HIV感染患者の抱えるさまざまな精神的問題の対応、Aがん患者のメンタルケアをより充実させるための緩和ケアチーム、B救命救急センターに搬送される自殺未遂患者に対する精神的なサポートに力を入れている。
 研究分野においてもそれら3部門の臨床研究に力を入れている。平成16年4月に責任医長の交代があり、臨床部門も様変わりしたため、それ以降に研究を開始した分野が多く、平成16年後半頃からそれらの研究発表を行うことができるようになってきた。
@HIV
 当院は全国有数のHIV感染者を取り扱っており、他院では困難な研究課題に取り組むことが可能である。HIV感染に伴って、患者はさまざまな精神的影響を受ける。精神面に対する影響因子として@HIV感染という事実を知らされることによる心的反応、A抗HIV薬の精神面に対する副作用、BHIV脳症、免疫低下に伴う合併症など、疾病による脳への器質的な影響、C患者の性格要因、D患者を取り巻くさまざまな社会的要因、などが考えられる。昨年度より厚生労働科学研究費助成金エイズ対策研究事業の分担研究班となり、「抗HIV療法に伴う心理的負担、および精神医学的介入の必要性に関する研究」を行っている。今後もHIV感染者を取り巻く多岐の精神的問題点をさまざまな視点から研究を行なっていきたい。
A緩和ケア
 総合病院における精神科として、がん患者の伴うさまざまな精神的問題を研究することは非常に大きな使命である。特に本院は多くのがん患者を扱っており、がん患者を心身両面から総合的にサポートする医療体制の構築が必要であった。平成16年7月に精神科医を専任医師として含む緩和ケアチーム「癌サポートチーム」が活動を開始している。平行して緩和ケアの臨床研究も開始し、いくつかの研究発表を行なっている。
B救命救急センターとの連携
 救命救急センターに入院する患者には、環境の変化によるICU精神病や自殺未遂患者など精神科の関与が必要な症例が多い。特に日本では最近、自殺による死者の増加が社会問題化しており、自殺未遂で搬送される患者のメンタルケアをどう行なっていくかは非常に重要な業務である。それに関連して平成18年度4月から厚生労働科学特別研究費助成金、自殺関連うつ対策戦略研究「自殺企図再発予防に対するケースマネージメント、およびITを利用した支援に関する無作為化比較研究」を開始する予定である。


【2005年研究発表業績】
A-0
MIZUTA I,IKUNO T,SHIMAI S,HIROTSUNE H,OGASAWARA M,OGAWA A,HONAGA E,INOUE Y.:The prevalence of traumatic events in young Japanese women、J Trauma Stress18(1)、33-37、2005

KAWAGUCHI S,UKAI S,SHINOSAKI K,ISHII R,YAMAMOTO M,OGAWA A,MIZUNO MATSUMOTO Y,FUJITA N,YOSHIMINE T,TAKEDA M:Information processing flow and neural activations in the dorsolateral prefrontal cortex in the Stroop task in schizophrenic patients.A spatially filtered MEG analysis with high temporal and spatial resolution、Neuropsychobiology51(4)、191-203、2005

A-3
越智直哉:精神科医療のリスクマネージメント「感染患者、キャリアのリスクマネージメント」、臨床精神医学、34、2005

小川朝生、広常秀人、越智直哉、武田雅俊:SSRI/SNRIのその他の疾患への応用(慢性疼痛)、臨床精神医学34(10):1405-1414、2005

篠崎和弘、小川朝生:うつ病とECTとTMS、精神科6(6)、科学評論社、2005

A-5
越智直哉、小川朝生、滝沢義唯、西村輝明:抗HIV療法に伴う心理的負担、および精神医学的介入の必要性に関する研究、厚生労働科学研究費助成金エイズ対策研究事業「多剤併用療法服薬の精神的、身体的負担軽減のための研究班」平成16年度研究報告書、35-37、2005

B-4
小川朝生、里見絵理子、田中登美、山中政子、赤井裕子、松岡暖奈、沢村敏郎、越智直哉、辻仲利政:緩和ケアチームはせん妄の症状緩和に効果的である、日本緩和医療学会総会・日本サイコオンコロジー学会総会、横浜、2005年6月

里見絵理子、小川朝生、山中政子、田中登美、福井久美子、赤井裕子、松岡暖奈、沢村敏郎、辻仲利政:大阪医療センター緩和ケアチーム「がんサポートチーム」の活動報告と介入効果、日本緩和医療学会総会・日本サイコオンコロジー学会総会、横浜、2005年6月

田中登美、山中政子、福井久美子、赤井裕子、松岡暖奈、小川朝生、里見絵理子、沢村敏郎、辻仲利政:緩和ケアチーム「がんサポートチーム」におけるがん看護専門看護師の活動と今後の課題、日本緩和医療学会総会・日本サイコオンコロジー学会総会、横浜、2005年6月

松岡暖奈、里見絵理子、小川朝生、山中政子、田中登美、赤井裕子、沢村敏郎:緩和ケアチームにおけるMSWの重要性、日本緩和医療学会総会・日本サイコオンコロジー学会総会、横浜、2005年6月

小川朝生、里見絵理子、田中登美、赤井裕子、山中政子、松岡暖奈、越智直哉、辻仲利政:大阪医療センター緩和ケアチーム「がんサポートチーム」の活動、第18回日本総合病院精神医学会総会、横浜、2005年11月