整形外科

 

上田孝文

 

 整形外科は運動器疾患全般を扱う専門科であり、頚部・体幹から四肢・手指・足趾先端までその範囲は広い。また人口の高齢化に伴い、整形外科疾患を有する患者数は増加している。当科では、1)関節外科(とくに股関節・膝関節)、2)脊椎外科、3)骨・軟部腫瘍、4)小児整形外科の4つの領域を中心に高度の専門医療を提供するとともに、骨折やスポーツ外傷など一般整形外科疾患についても、当院総合救急部や地域医療連携室を通じて近隣の整形外科クリニック・病院とも連携しながら診療体制を整えている。昨年の年間手術件数は828件で、その内訳は、変形性股関節症や特発性大腿骨頭壊死症等の股関節疾患に対する人工股関節全置換術161例(再置換術21例を含む)、変形性膝関節症・関節リウマチに対する人工膝関節全置換術195例(片側膝人工関節置換術10例を含む)、その他の関節外科手術(骨切り術等)38例、骨・軟部腫瘍手術161例、脊椎外科手術138例、小児整形外科手術89例、その他の骨折・外傷等手術46例(大腿骨頚部骨折に対する人工骨頭置換術11例を含む)であった。

 専門領域のうち、骨・軟部悪性腫瘍(肉腫)に対しては大阪大学整形外科腫瘍グループの基幹施設として、専門病理医との密接な連携による正確な病理組織診断の元に、術前・術後の全身補助化学療法、放射線療法、腫瘍広範切除術および各種患肢再建術を組合せた集学的治療体系を駆使し、生命予後の改善と共に良好な術後患肢機能の再建に取組んでいる。

 小児整形外科の分野では、先天性股関節脱臼や先天性内反足などの乳児期までに多く見られる疾患から、脳性麻痺患者の足部変形やその他の四肢先天奇形など幅広い小児整形外科疾患に対して高度の専門的治療を提供している。また種々の骨系統疾患の症例集積が進んできており、とくに骨形成不全症に対する最小侵襲手術(MIS)としての経皮的髄内釘挿入固定術の開発により、本疾患の治療体系整備を行ってきた。さらに二分脊椎症例に対しては、脳神経外科や泌尿器科とも連携をとりつつ、整形外科的問題点とくに下肢の麻痺に伴う足部変形や股関節脱臼に対する外科的治療およびリハビリテーションに取組んでいる。

 また高齢者層の人口増加に伴い、今後さらに骨・関節変性疾患患者の増加が予想される。関節外科の分野においては、最小侵襲(MIS)による人工膝関節全置換術を積極的に開発・導入し、またコンピュータ支援下での術中ナビゲーションを用いた低侵襲でより精度の高い人工股関節全置換手術の導入も目指している。さらに脊椎外科分野においても、前方・後方からの脊髄・神経根除圧に加え、各種脊椎インストルメンテーションを併用しての固定手術も積極的に応用し、早期離床・スムーズな社会復帰を図れるよう専門治療を行っている。

 これらの整形外科専門診療レベルを維持し、今後さらに発展させるべく、治療成績を解析し学会発表や論文報告を積極的に行っていくとともに、整形外科専門医を目指す若手スタッフ・レジデントの一般整形外科診療を含む教育や手術トレーニング、医学部学生に対するクリニカルクラークシップも重視していくことにより、臨床診療・研究・教育のバランスの取れた運動器疾患に対する高度専門診療科を目指している。

 

2007年度研究発表業績】

A-0  

A. Kawai, A. Hosono, R. Nakayama, A. Matsumine, S. Matsumoto,  T. Ueda, H. Tsuchiya, Y. Beppu, H. Morioka, H. Yabe: Clear cell sarcoma of tendons and aponeuroses: a study of 75 patients. Cancer 109: 109-116, 2007

 

H. Obata,  T. Ueda, A. Kawai, T. Ishii, T. Ozaki, S. Abe, K. Tanaka, H. Tsuchiya, A. Matsumine, H. Yabe: Clinical outcome of patients with Ewing sarcoma family of tumors of bone in Japan: the Japanese Musculoskeletal Oncology Group cooperative study. Cancer 109: 767-775, 2007

 

E. Ch'ng, Y. Tomita, B. Zhang, J. He, Y. Hoshida, Y. Qiu, E. Morii, I. Nakamichi, K. Hamada, T. Ueda, K. Aozasa: Prognostic significance of CD100 expression in soft tissue sarcoma. Cancer 110: 164-172, 2007

 

S. Toyosawa, M. Yuki, M. Kishino, Y. Ogawa, T. Ueda, S. Murakami, E. Konishi, S. Iida, M. Kogo, T. Komori, Y. Tomita: Ossifying fibroma vs fibrous dysplasia of the jaw: molecular and immunological characterization. Modern Pathol  20: 389- 396, 2007

 

K. Onoue, I. Kudawara: Osteoid osteoma with cartilage formation of the distal phalanx in the toe.   Orthopaedics 30: 670-671, 2007

 

H. Miki, W. Yamanashi, T. Nishii, Y. Sato, H. Yoshikawa, N. Sugano: Anatomic hip range of motion after implantation during total hip arthroplasty as measured by a navigation system. J Arthroplasty 22: 946-952, 2007

 

H. Aono, T. Ohwada, N. Kaneko, T. Fuji, M. Iwasaki: The post-operative changes in the level of inflammatory markerlumbar interbody fusion. J Bone Joint Surg (Br) 89: 1478-1481, 2007

 

H. Aono, M. Iwasaki, T. Ohwada, S. Okuda, N. Hosono, H. Yoshikawa: Surgical outcome of drop foot caused by degenerative lumbar diseases. Spine 32: E262-E266, 2007

 

S. Takenaka, T. Ueda, N. Naka, N. Araki, N. Hashimoto, A. Myoui, T. Ozaki, T. Nakayama, J. Toguchida, K. Tanaka, Y.  Iwamoto, A. Matsumine, A. Uchida, M. Ieguchi, M. Kaya, T.  Wada, I. Baba, I. Kudawara , Y. Aoki , H. Yoshikawa  Prognostic implication of SYT-SSX fusion type in synovial sarcoma: A multi-institutional retrospective analysis in Japan. Oncol Rep 19: 467-476,  2008

 

A-2   

上田孝文:軟部腫瘍の診断/診断の手順.最新整形外科学体系20.骨・軟部腫瘍および関連疾患.越智隆弘,糸満盛憲,越智光夫,高岸憲二,戸山芳昭,中村利孝,三浪明男,吉川秀樹、48-51、中山書店、東京、2007

 

北野元裕、川端秀彦:特発性若年性骨粗鬆症.最新整形外科学体系21.骨系統疾患 代謝性疾患.越智隆弘,糸満盛憲,越智光夫,高岸憲二,戸山芳昭,中村利孝,三浪明男,吉川秀樹、226-227、中山書店、東京、2007

 

A-3  

竹中美樹、岡本禎晃、池田賢二、橋本陵、上田孝文、黒川信夫、高木達也、上島悦子:整形外科領域における大量癌化学療法に対する5-HT3受容体拮抗剤の効果比較。がんと化学療法 34403-4072007 

 

北野元裕、川端秀彦、和田麻由子、吉田清志:Ponseti法により治療した先天性内反足の再発症例の検討。日本小児整形外科学会雑誌 1635-382007 

 

三木秀宣、菅野伸彦:【人工関節置換術における合併症とその対策】 人工股関節置換術後の脱臼と対策 コンピュータ支援技術を用いた新しい脱臼治療の展開。関節外科 261366-13722007 

 

西原俊作、大園健二、李勝博三木秀宣、坂井孝司:Zimmer Modular Revision Hip Systemを使用した人工股関節再置換術の臨床成績。Hip Joint 33264-2682007 

 

A-6   

上田孝文II-13.骨・軟部.がん治療認定医教育セミナーテキスト・第1 森 武生、135-140、日本がん治療認定医機構教育委員会、2007

 

B-2  

T. Ueda, S. Kakunaga, Y. Oka, Y. Oji, A. Tsuboi, N. Hashimoto, A. Myoui, K. Aozawa, H. Sugiyama, H. Yoshikawa: Tumor Immunotherapy Targeting WT1(Wilms' Tumor Gene) Peptide for Bone and Soft-Tissue Sarcomas: A Preliminary Report. 43rd Annual Meeting of the American Society of Clinical Oncology (ASCO), Chicago, June, 2007

 

T. Ueda, S. Kakunaga, A. Tsuboi, H. Sugiyama, H. Yoshikawa: Tumor Immunotherapy Using WT1(Wilms' Tumor Gene) Peptide Vaccine for Bone and Soft-Tissue Sarcomas: A Preliminary Report.  5th SICOT/SIROT Annual International Conference, Marrakech,  August, 2007

 

T. Ueda, I. Kudawara, S. Kakunaga, N. Tamai, N. Hashimoto, A. Myoui, K. Hamada, T. Fujimoto, N. Naka, N. Araki, Y. Aoki, H. Yoshikawa: Clinical Outcome of Limb-Sparing Surgery for Patients with Osteosarcoma of Proximal Tibia. 59th Annual International Congress of the Egyptian Orthopaedic Association, Cairo,  November, 2007

 

H. Aono, M. Iwasaki, T. Ohwada, S. Okuda, K. Ariga, T. Fuji : Clinical outcome for pyogenic spondylitis in recent years.  Annual Meeting of the International Society for the Study of the Lumbar Spine, Hong Kong, June, 2007

 

H. Aono, T. Ohwada, M. Iwasaki, K. Ariga, T. Fuji  : Spinal epidural hematoma after spinal decompression surgery. Eurospine, Brussels, October, 2007

 

SB Lee : Mid-Term Results of AFJ System. 2007 Pacific Rim Orthopaedic Update, Oahu, August, 2007

 

S. Nishihara, N. Sugano, T. Nishii, T. Sakai, H. Miki, H. Yoshikawa : Five-year follow-up assessment of the pelvic flexion angle after total hip arthroplasty. 54th Annual Meeting of the Orthopaedic Research Society, San Francisco, March, 2008

 

B-3  

上田孝文:骨・軟部悪性腫瘍に対する集学的治療体系の進歩とその最前線。 80回日本整形外科学会学術集会、神戸、20075月 

 

上田孝文:整形外科領域の悪性腫瘍−肉腫の診断と治療−。 45回日本癌治療学会総会 教育セッション「がん治療update」、京都、200710

 

上田孝文、矢部 啓夫:骨・軟部悪性腫瘍に対する多施設共同研究の現状と今後の展開-骨・軟部肉腫治療研究会(JMOG)での経験を中心に-。 40回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会、甲府、20077月 

 

B-4  

久田原郁夫玉井宣行上田孝文竹田雅司真能正幸小西英一:骨・軟部腫瘍における術中迅速病理診断の意義。 40回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会、甲府、20077月 

 

山崎良二久田原郁夫玉井宣行上田孝文:咽頭扁平上皮癌の転移性膝蓋骨腫瘍。 40回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会、甲府、20077月 

 

藤本圭一玉井宣行久田原郁夫上田孝文:全人工股関節置換術施行後に右大腿骨近位線維肉腫を発症した1例。 40回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会、甲府、20077月 

 

久田原郁夫上田孝文小西英一真能正幸軟部組織腫瘤が初発であった原発不明神経内分泌腫瘍の1。 6回日本臨床腫瘍学会学術集会、福岡、20083月 

 

北野元裕、川端秀彦、田村太資:Ponseti法により治療した先天性内反足の3才以上に達した症例の検討。18回日本小児整形外科学会学術集会、神戸、200711

 

三木秀宣、菅野伸彦、大竹義人、山村在慶、鈴木直樹、米延策雄、吉川秀樹:四次元動作解析システムによる人工股関節全置換術後脱臼患者の脱臼原因判定への応。 16回日本コンピュータ外科学会、広島、200711

 

宮本隆司上田孝文廣島和夫Trivector Retaining ApproachによるPosterior-stabilized Mobile Bearing MIS TKA。 32回日本膝関節学会、札幌、20076

 

西原俊作三木秀宣李勝博、大園健二:高齢者に対してVerSys Enhanced Taperステムを使用したセメントレス人工股関節置換術の臨床成績。 34回日本股関節学会、金沢、200710

 

青野博之、岩崎幹季、大和田哲雄、奥田真也、有賀健太、富士武史:近年の化膿性脊椎炎の治療成績。 36回日本脊椎脊髄病学会、金沢、20074

 

宮本隆司吉田礼徳上田孝文Patellar clunk syndromeの治療経験。 38回日本人工関節学会、沖縄、20082

 

宮本隆司吉田礼徳上田孝文、玉城雅史、渡辺哲、富田哲也、菅本一臣:臨床成績および動態解析からみたOxford knee におけるhigh flex femoralの有用性。 38回日本人工関節学会、沖縄、20082

 

宮本隆司吉田礼徳上田孝文:重度変形膝に対するtrivector retaining approachを用いたminimally invasive semiconstrained TKA。 38回日本人工関節学会、沖縄、20082

 

三木秀宣西原俊作李勝博、菅野伸彦:Modular Neck System prosthetic impingement 防止に対する有用性のシミュレーション評価。 38回日本人工関節学会、沖縄、20082

 

西原俊作三木秀宣、坂井孝司、西井孝、菅野伸彦、大園健二:人工股関節全置換術後における骨盤傾斜角の5年追跡調査。 38回日本人工関節学会、沖縄、20082

 

吉田礼徳宮本隆司上田孝文:人工膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症予防対策としてのXa凝固因子阻害剤の使用経験。 38回日本人工関節学会、沖縄、2008年2月

 

B-5  

上田孝文:日常診療における骨・軟部腫瘍診断のためのポイント。 1回大阪港整形外科勉強会、大阪、20076月 

 

上田孝文:骨・軟部悪性腫瘍に対する患肢温存療法の変遷と進歩。 7回京都府立医大サルコクラブ(肉腫研究会)、京都、20079

 

B-6 

久田原郁夫上田孝文:低血糖症状を示した後腹膜solitary fibrous tumor111回関西骨軟部腫瘍研究会、豊中、20076

 

久田原郁夫上田孝文岩佐葉子小西英一真能正幸:左膝蓋骨骨腫瘍。112回関西骨軟部腫瘍研究会、豊中、20079

 

久田原郁夫上田孝文:鎖骨上窩発生の滑膜肉腫。113回関西骨軟部腫瘍研究会、豊中、200711

 

久田原郁夫反対側そけい部に転移したそけい部軟部肉腫114回関西骨軟部腫瘍研究会、豊中、20082

 

西原俊作三木秀宣李勝博、大園健二:高齢者に対してVerSys ETを使用した人工股関節置換術の臨床成績。 16回関西股関節研究会、大阪、20074

 

三木秀宣:股関節のコンピュータ動作解析−THA後脱臼に関する検討−。 16回関西股関節研究会、大阪、20074

 

三木秀宣Chiari osteotomy for acetabular dysplasia in young patients。 3回股関節研究セミナー、兵庫、20078

 

山崎良二北野元裕上田孝文:広範囲骨欠損を伴う化膿性骨髄炎の一例。 35回大阪骨折研究会、大阪、20076

 

秋本泰芳上田孝文北野元裕:軽微な外力により橈骨頭単独脱臼を生じたEhlers-Danlos症候群の1例。 第36回大阪骨折研究会、大阪、200712

 

岡本泰典久田原郁夫上田孝文:軟部腫瘍と鑑別を要したアキレス腱部滑膜炎の1例。 第33回大阪整形外科症例検討会、大阪、20078

 

北野元裕上田孝文Jones type 4脛骨列欠損症の1例。 41回近畿小児整形外科懇話会、大阪、20082

 

藤島弘顕北野元裕上田孝文、樋口周久、名倉温雄:放射線全身照射後に発症した大腿骨頭すべり症の1例。 41回近畿小児整形外科懇話会、大阪、20082

 

B-8  

上田孝文:運動器疾患における最近のトピックスと当科での取り組み。 22回おおさか健康セミナー、大阪、20079

 

三木秀宣Modular Neck System Prosthetic Impingement 防止に対する有用性。 THAセミナー、札幌、20079

 

三木秀宣:コンピュータ支援 人工股関節手術。 箕面市整形外科病診連携懇話会、箕面、20077

 

宮本隆司Trivector RetainingアプローチによるMIS-TKAMIS-TKA Seminar in Osaka、大阪、20075

 

宮本隆司:膝関節の痛みと最新治療ーより早い社会復帰を目指してー。  4回最新医療情報セミナー、釧路、20074

 

宮本隆司'High-Flex Femoral'。  2007 Japan Oxford Instructional Course in Sapporo、札幌、20076

 

宮本隆司MIS TKAー有用性の確認と安全な手術手技の確立をめざしてー。Pre-recorded Video Seminar in Nagoya、名古屋、20077

 

宮本隆司MIS TKAー有用性の確認と安全な手術手技の確立をめざしてー。Pre-recorded Video Seminar in Sapporo、札幌、20079

 

宮本隆司MIS TKAー有用性の確認と安全な手術手技の確立をめざしてー。Pre-recorded Video Seminar in Tokyo、東京、200710

 

宮本隆司MIS TKAー有用性の確認と安全な手術手技の確立をめざしてー。Pre-recorded Video Seminar in Wakayama、和歌山、200712