政策医療基盤技術開発研究室


室長 山崎麻美

 当研究室では、政策医療全般の推進に必要な、先進的医療の基盤となる技術の研究・開発とその臨床応用の確立を目指している。1999年より水頭症研究で開始した当研究室は現在、 1名の専任室員と6名の研究スタッフを有する強力な陣容に充実し、先天性水頭症の分子遺伝子学的研究神経幹細胞を用いた神経系の再生医療技術開発神経幹細胞バンクの構築、を3本柱に研究を進めている。また国立病院機構の高度総合医療施設に併設する臨床研究部の特徴を生かし、臨床の要求に密着した先進医療の基盤造りの牽引役として貢献できるよう、日々努力している。
 19年度は前述の3つの研究課題に加えて、先進的医療の実践の1つとして、脳神経外科が実施する「悪性脳腫瘍に対する活性化自己リンパ球療法」をサポートする体制を整えた。

先天性水頭症の分子遺伝子学的研究 遺伝子診断技術の進歩で原因不明であった先天性水頭症の一部メカニズムが少しずつ解明されてきた。その中でX連鎖性劣性遺伝性水頭症がL1 (エルワン)という細胞接着因子L1CAMの一つの異常で発生することが解明された。当研究室はL1CAM遺伝子解析を手がけている世界でも数少ない研究室である。

神経幹細胞を用いた再生医療 従来は治療が不可能であると考えられてきた脳や脊髄などの中枢神経組織の損傷、疾病を修復し、その神経機能を再生・回復させる有望な治療方法の1つが、近年、脚光を浴びているのが神経幹細胞(neural stem cell)という細胞を用いた中枢神経の再生医療である。私たちの研究室では、神経幹細胞を用いた中枢神経の再生医療の実現を目指し、ヒト神経幹細胞の生物学的特性の解析と、その細胞の培養技術の開発を行っている。

神経幹細胞バンクの構築 臨床研究部二階に設置されたCPC(セルプロセッシングセンター)では、再生医療の研究開発に応用することを目指し、ヒト神経幹細胞を培養し冷凍保存して いる。ヒト神経幹細胞を用いた早期の神経再生医療の実現を目指し、安全に高品質なヒト神経幹細胞をたくさん生産するための技術を研究している。またより倫理的に受容されやすい同種細胞として、ヒト胎盤組織由来幹細胞の再生医療への応用可能性を検討している。

活性化自己リンパ球療法 末梢血中のTリンパ球を抗CD3抗体とインターロイキン2を用いて増幅させ、点滴投与する細胞治療の1種である。再生医療研究で培った細胞培養のノウハウ、CPC管理体制を活用し、安全性の高い細胞治療を提供するため、治療用細胞の作成およびその品質管理を担当している。

2007年度研究発表業績】

A-0

MORI H, NINOMIYA K, KANEMURA Y, YAMASAKI M, KINO-OKA M, TAYA M. Image cytometry for analyzing regional distribution of cells inside human neurospheres. J Biosci Bioeng 103(4):384-387, 2007

 

KATO T, KANEMURA Y, SHIRAISHI K, MIYAKE J, KODAMA S, HARA M. Early response of neural stem/progenitor cells after X-ray irradiation in vitro. NeuroReport 18(8):895-900, 2007

 

NAKANO A, KANEMURA Y, MORI K, KODAMA E, YAMAMOTO A, SAKAMOTO H, NAKAMURA Y, OKANO H, YAMASAKI M, ARITA N. Expression of the neural RNA-binding protein Musashi1 in pediatric brain tumors. Pediatr Neurosurg 43(4):279-284, 2007

 

MORI H, FUJITANI T, KANEMURA Y, KINO-OKA M, TAYA M. Observational examination of aggregation and migration during early phase of neurosphere culture of mouse neural stem cells. J Biosci Bioeng 104(3):231-234, 2007

 

HATTORI Y, OHTA S, HAMADA K, YAMADA-OKABE H, KANEMURA Y, MATSUZAKI Y, OKANO H, KAWAKAMI Y, TODA M. Identification of a neuron-specific human gene, KIAA1110, that is a guanine nucleotide exchange factor for ARF1. Biochem Biophys Res Commun 364(4):737-742, 2007

 

KATO M, MIYA F, KANEMURA Y, TANAKA T, NAKAMURA Y, TSUNODA T.  Recombination rates of genes expressed in human tissues. Hum Mol Genet 17(4):577-586, 2008

 

A-4

金村米博山崎麻美水頭症発症の分子メカニズムMedical Science Digest 33(10):2-3, 2007

 

B-2

KANEMURA Y, SHOFUDA T, YAMAMOTO A, MORI H, OKANO H, YAMASAKI M: Gene expression profiling of human neural stem/progenitor cells and analysis of genes involved in differentiation. 5th ISSCR Annual Meeting, Cairns, Queensland, Australia, 20076

 

B-4

金村米博正札智子山本篤世 英樹岡野栄之山崎麻美ヒト神経幹細胞/前駆細胞およびその分化細胞における遺伝子発現特性の検討。5回幹細胞シンポジウム、淡路、20075

 

英樹正札智子山崎麻美金村米博ヒト神経幹細胞/前駆細胞のneurosphere形成が及ぼす増殖促進効果。5回幹細胞シンポジウム、淡路、20075

 

英樹正札智子山崎麻美金村米博ヒト神経幹細胞/前駆細胞のneurosphere形成過程の解析。25回日本ヒト細胞学会学術集会、東京、20078

 

正札智子 英樹山本篤世森内秀祐山崎麻美、有田憲生、金村米博脳腫瘍がん幹細胞選択的に発現する遺伝子の探索。8回日本分子脳神経外科学会、西宮、20079

 

英樹、紀ノ岡正博、田谷正仁、山崎麻美金村米博:ヒト神経幹細胞の分化率の評価。59回日本生物工学会大会、東広島、20079

 

英樹、山崎麻美金村米博:ヒト神経幹/前駆細胞の密度がニューロン分化に及ぼす影響。7回日本再生医療学会総会、名古屋、20083