臨床研究センター

センター長 是恒之宏

平成17年度より国立病院機構内で新たな研究業績評価が開始されたが、当院は平成18年度2位以外はすべて1位を獲得している。この業績評価は、治験、臨床研究プロトコール作成、特許の取得、競争的研究費の獲得、論文著書、国内外の学会発表などの総合力で分析される。日常臨床が多忙を極める中で、治験を含めた臨床研究への積極的な大阪医療センターの取り組みが評価されたものと考える。平成20年度より、当院および九州医療センターはその業績を認められ、臨床研究部から臨床研修センターへランクアップとなった。それにともない、組織は15室から29室と改変し、これまで治験管理センターとして病院内の組織であった治験管理部門を新たに臨床研究も含めた支援室、臨床研究推進室として研究センターの元におくこととなった。これまでと同様、文部科研に応募を希望する医師については、併任発令を行い、これに対応した。また、院内の多くの医師が臨床研究に携わっていること、本部からの研究助成金を研究業績に応じて一部分配することにより研究推進を図る目的で、平成18年度より医長以上の併任、英文論文筆頭著者併任をおこなうこととしている。平成21年度よりスタッフ以上の併任をおこなっている。

平成21年度の構成は以下のとおりである。

 

 

 

 

EBM先進医療研究開発部

幹細胞医療研究室

幹細胞医療研究室では、ご理解をいただいた患者様の各種検体よりヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製・樹立を行い、再生医療の実現化に向けた技術開発を中心とした研究を実施している。iPS細胞の作製に最適な細胞ソースの探索と作製方法の改良、作製したiPS細胞の品質評価法について検討を行うとともに、iPS細胞から効率的に神経幹細胞へと誘導する方法の開発を進めている。

再生医療研究室

再生医療研究室では、各種ヒト細胞を応用した「細胞治療」を新しい先進的な医療として確立させることを目標に、治療に使用する各種ヒト細胞の培養・加工プロセスの開発、治療用ヒト細胞の品質管理並びに安全性評価に関する技術開発などの研究を行なっている。また、ヒト幹細胞を応用した薬剤毒性評価系の開発と新規治療薬候補化合物の探索を目指した基礎的研究を実施している。

分子医療研究室

分子医療研究室の主な研究課題は先天性水頭症の分子遺伝子学的研究(X連鎖性遺伝性水頭症における神経接着因子L1CAM遺伝子解析、分子生物学・幹細胞生物学の手法を用いた水頭症発症の分子メカニズムの解明)と胎児期水頭症の診断と治療ガイドライン確立(胎児期水頭症の診断と治療のガイドライン第1版改訂作業、胎児期水頭症の英語版発行)である。今年度特に力を入れて取り組んだ研究課題は、多施設共同研究として、胎児診断における難治性脳形成障害症の診断基準の作成 であった。

がん療法研究開発室

 現在、がん治療においては、オーダーメイド医療という語に代表されるように、各個人のがんの種類や病態の特徴に応じた医療が期待されている。病気や病態の違いも多くは分子異常の違いによって生じるものと考えられている。そこで、本研究室では、外科手術時などに得られたがん組織を利用してがんにおける分子異常を探り、それに基づいた新たながんの診断や治療戦略の開発をめざしたtranslational researchを行っている。そのための具体的プロセスとして、1) 基礎研究との有機的な共同研究:臨床材料を用いて得られた研究結果と臨床資料との対応、臨床材料を用いた網羅的遺伝子解析や網羅的ペプチド蛋白解析、糖鎖解析を利用した発がん、増殖、転移に関わる責任分子の抽出、同定し、治療標的分子を明らかにする。2) 分子異常に基づいた新たな腫瘍マーカーの開発。3) 抗がん剤や放射線治療の感受性や耐性に関与する分子の分離とその臨床応用を計画している。4)これまでの基礎研究や臨床研究によって得られた成果を応用すべく、全国規模の多施設共同臨床試験に積極的に参加するとともに自主的臨床試験研究の企画も行っている。

臨床疫学研究室

臨床疫学研究室では、臨床疫学・アウトカムリサーチの実施基盤を確立し、データの集積・解析を行いつつエビデンスを形成し、コストベネフィットを解析する形態の臨床研究を行っている。特に循環器疾患診療に関する薬剤・機器臨床試験等、当院の政策医療の1つである循環器病の診療に役立つ臨床研究を推進している。平成21年度も厚生労働科研、国立病院機構EBM推進のための共同研究、国立病院機構共同研究などの公的助成や民間助成を得て成果を上げている。

医療情報研究室

医療情報研究室では、医療へのIT応用に関するソフト、ハードの両側面の研究を行っている。整形外科領域におけるシミュレーションを用いた研究、病院において実稼働している病院情報統合システムを用いた研究、病院情報システム本体の機能拡張に関する独自の研究を実施する一方、治験・臨床研究や医療安全に関するシステム的検討、シミュレーションや統計などの情報科学の医療応用に関する研究を行っている。また、ネットワーク技術や画像処理技術の応用・改良など、情報処理の基盤技術に関連した研究も行っている。

 

エイズ先端医療研究部

海外同様、わが国、特に大阪でもHIV感染症患者数は増え続けており、毎年、新規HIV感染者、エイズ患者数は増加の傾向にある。治療の進歩によってHIV感染症の予後は大きく改善されたが、エイズ医療では多くの課題が未だ残されている。約20年以上前に血液製剤で感染した患者の多くはC型肝炎との重複感染であり治療が困難な例が多い。その後、増えている性感染症としてのHIV感染症患者では20歳代、30歳代が多く、社会的、経済的に不安定な者も少なくなく、セクシャリティーなどマイノリティーでの課題も抱えている。当研究室では、この様な多くの課題の中で、HIV感染症治療、エイズ医療の分野を中心とした研究を進め、主に厚生労働科学研究費補助金エイズ対策事業、財団法人友愛福祉財団の調査研究事業、独立行政法人国立病院機構の共同研究等に取り組んできた。エイズ先端医療研究部はエイズ先端医療開発室(白阪が室長を兼務)とHIV感染制御研究室(渡邊大室員)から成り、前者は医療についての研究、後者は基礎的研究を主に行っている。服薬アドヒアランスの向上・維持に関する研究班、HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究班では分担研究者と共にHIV感染症のチーム医療の在り方、エイズ看護の在り方、長期療養の問題等と取り組んで来た。今後もエイズの治療と医療に付き研究を進める。

 

臨床研究推進室

臨床研究推進室は、GCP省令施行に伴い、治験の円滑な実施とその質を保証することを目的として平成114月に「治験管理センター」として開設され、本年度で11年目を迎えている。平成20年度からは臨床研究部が臨床研究センターに昇格したのを機に、「治験管理センター」から「臨床研究推進室」へと新たに組織および名称変更を行った。 

臨床研究推進室には「治験管理部門」「臨床試験支援部門」があり、治験管理部門では従来同様、治験事務局、IRB事務局の役割を兼ねるとともに、CRCは治験・製造販売後臨床試験の開始から終了まで支援を行っている。「臨床試験支援部門」の本格的な体制整備はこれからであるが、現在は医師主導治験と医師主導臨床研究においても倫理審査に関わり、管理・支援を行っている。