口腔外科

1.解剖 | 2.頻度 | 3.発生部位 | 4.症状 | 5.受診
6.検査と診断 | 7.治療 | 8.手術後の障害・後遺症 | 9.転移
10.入院治療 | 11.予防と検診 | 12.目で見る口腔領域のがん



 1.解剖

口腔は上下のあごの骨、上下の歯列、歯ぐき(歯肉)、頬、口唇、口蓋(上顎)、口腔底(舌の下)、唾液腺、筋肉などから構成されており、神経や血管が豊富な場所です。
舌には味を感じる味蕾といわれる特別な器官も存在しています。
口腔と顎下や首(頸部)のリンパ節とは密接な関係があります。
虫歯や口腔内の細菌による感染症や腫瘍でこれらのリンパ節が腫れます。

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 2.頻度

口腔領域の「がん」は身体全部のがんの中で約2~3%の率で発生しています。
当院での受診年齢は歯肉がんでは37歳~88歳、平均62.42歳で、
舌がんでは28歳~80歳、平均56.35歳でした。

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 3.発生部位

口腔内のどこからでも「がん」は発生します。
もっとも多くみられるのは歯ぐきのがん(歯肉がん)と舌がんです。
歯肉がんは歯ぐきのどこからでも発生し、舌がんの大部分は舌の縁(歯に当たる所)の中央から後方にかけてよく発生(好発部位)します。
頻度は少ないのですが、頬粘膜、口腔底(舌の下)、口蓋(上顎の粘膜)でみられ、最も少ないのは口唇です。

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 4.症状

口腔腫瘍の一般的な特徴は、ほとんどの場合初期には痛みを感じることが少なく(無痛)、また無痛性の腫脹がみられます。
それ故に口腔という限られた場所での腫瘍は普段の生活(食生活を含めて)や仕事になどに影響がみられないのが普通です。
また口内炎と誤診され易く、患者さんも口内炎だから直ぐ治るだろうと思い放置している場合が多く見受けられます。
それ故に来院時には腫瘍が大きくなりすぎている場合や周囲組織への強い浸潤を伴う症例がしばしば見られます。
しかし、舌がんの約1/3から半数は刺すような痛みを伴い、ある種の唾液腺がんはあごの下から側頭部へかけ強い痛みが放散するものもあります。
あごの骨に発生した悪性腫瘍はしばしば唇やオトガイ部のしびれ感など神経障害や歯痛、歯が浮いた感じなどが出現します。
顎の下や首すじの無痛性のグリグリ(リンパ節)は口腔腫瘍と大いに関係があります。

口腔には前がん病変という粘膜の病気がしばしば見られます。
前がん病変とは普通の口腔粘膜病変に比べて放置しておけば「がん」に移行する率が高い病変を言います。
口腔粘膜は通常ピンク色をしていますが、白色・紅色・黒色などピンク色以外の粘膜の着色は要注意です。

主な病変は下記の二つです。
白板症
歯肉(歯ぐき)・舌・頬粘膜などによく見られます。
症状は粘膜上に白色で、やや盛り上がったザラザラ感のある病変で、こすってもとれないのが特徴です。この病変の約3%~5%はがん化するといわれています。
紅板症(紅色肥厚症)
舌・歯肉(歯ぐき)・その他の粘膜
症状は境界がかなり明瞭な紅色(赤色)をして、ビロード状や表面はつるっとしている病変です。この病変は約半数はがん化するといわれ、極めて危険な病変です。
悪性リンパ腫も口腔内のどこの部位からでも発生します。
特に歯肉から発生している症例では、しばしば歯からの感染と誤診されがちです。

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 5.受診

次のような症状があれば先ず口腔外科を受診して下さい。
口腔は狭い領域ですが、病気(疾患)の種類は非常に豊富で多種多様です。顔や口腔内の無痛性の腫れだけでも色々な病気が見られます。慎重な鑑別診断を要します。

口腔がんの患者さんの訴えで多いのは以下の通りです。
・義歯(入れ歯)が入り難くなった。
・義歯(入れ歯)が当たって歯ぐきが痛い。
・通院している医院や診療所で治療を受けている口内炎がなかなか治らない。
・歯がグラグラでよく出血する。歯痛や歯ぐきからしばしば出血する。
・口が開きにくい。
・物が飲み込み難い。
・家族や友達に顔が腫れていると言われた。


上記のようなことや顔・頚部(首)・顎の下・歯ぐきの無痛性の腫れ、唇の腫れ、歯が自然に抜けた、口腔からの出血、唇やオトガイ部の知覚異常(しびれ感など)、嚥下時の違和感、口腔粘膜の色の変化などに気づかれましたら歯科口腔外科を受診してください。

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 6.検査と診断

口腔がんの検査には大きく分けて病変部の細胞の採取とレントゲン写真やCT・MRI等の画像診断を行います。
細胞の採取はメスで「がん」の一部を採る検査(組織生検)と「がん」の所を綿棒などでこすって検査(細胞診)する方法があります。
これは「がん」がどのような母地から発生しているか決めるのに重要な検査で、しかも治療方法の選択にも影響する重要な検査です。
口腔がんの90%以上が扁平上皮という組織から発生しています。当科では口腔がんの診断に関して病理医、放射線科、耳鼻咽喉科、形成外科等と症例検討を行っています。舌がんなどの症例では時として食道や胃の早期がんを伴っていることもあり、消化管の内視鏡による検査を行うこともあります。

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 7.治療

口腔がんの治療は「がん」がどの様な組織から成り立っているかにより多少違いがあります。
一般的には、
1):放射線治療・・・単独でも治療可能
2):放射線治療+化学療法
3):2)+手術(形成外科手術を含む)
4):手術単独(形成外科手術を含む)

以上の組み合わせで行っています。どの治療法を選ぶかは患者さんと医師とで充分話し合って行われます。

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 8.手術後の障害・後遺症

口(口腔)の機能は食物を噛み砕き(咀嚼)、飲み込み(嚥下)、食物を味わい(味覚)、言葉をしゃべったり(発音・構音)、鼻とともに呼吸路として人間が生きていくうえで最も重要な役割をしています。
治療-口腔がんの治療の項を参照-により上記の機能の一部が損なわれることがあります。これらの機能障害や顔貌の変化は形成外科的手術の導入や術後の入れ歯(義歯)の装着によりかなり改善されます。
術後は定期的に厳重な経過観察が必要です。必要に応じて血液検査、組織検査、エックス線撮影など画像診断を行います。

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 9.転移

口腔がんも他の「がん」と同じように転移します。一番多く見られるのはオトガイ下リンパ節、顎下リンパ節、頚部首筋のリンパ節(以上領域リンパ節)です。その他では肺に転移します。

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 10.入院治療

治療法により二週間から三ヶ月を要します。

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 11.予防と検診

不適合な歯のかぶせや入れ歯、虫歯の鋭端部等によるしばしばの傷に気をつけること(慢性的な刺激)。
タバコの吸いすぎ、アルコール飲料の過度の摂取などにも注意しましょう。
口腔内を絶えず清潔にしておくことも重要です。
口腔に関心を持ち、一年に一回ぐらいは口腔内全般の検診をお薦めします。

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 12.目で見る口腔領域のがん

下顎歯肉がん1 下顎歯肉がん2 上顎歯肉がん
舌がん1 舌がん2 下唇がん
口唇がん 舌白板症からがん 頬粘膜がん