誤診を発見するには・・・


 医療情報システムの発展には、医学用語の標準化という大きなハードルが立ちはだかっている。このハードルを越えないと、コンピュータによって誤診を防止することは難しい。しかし、コンピュータに頼る前にやらなければならないことも少なくない。
 いったい、誤診はどのように発見されるのだろうか。1、経過を観察している途中に主治医が自分で気づく。2、教授や部長の回診のときに指摘される。3、患者が別の医者にかかったときに発見される。4、最後まで気づかず、死後の病理解剖でわかる。1、の場合は比較的良性の誤診である。最初から確定診断を下せることは多くなくて、多くの医師は、いくつかの病気を念頭に置きながら検査や治療を始める。経過を観察しながら正しい診断にたどり着くのである。といっても、診断できたときには手遅れだったのではやはり誤診である。2、と3、の場合はよくある。たまたま代診の医師が気づいたとか、患者が医者のハシゴをしてやっと診断された、という場合である。大きな病院だと、回診や症例検討会の機会に診断が改められることが多い。4、は患者にとって悲劇である。
 そこで、誤診を早く発見するためには、自分が注意するだけでなく、自分の行った診療行為について別の医師の評価を仰ぐ心掛けを持つことである。医師同士が相互評価を行うことによって誤診を防ぎ、学習にもなるからである。このためには、診療の記録(カルテ)が密室に置かれることなく、どの医師や看護婦にも見れるようにしておかなくてはならない。ある医師がどのような診療を行ったか、ある患者がどのような診療を受けたか、これを見えるようにすることが大切である。見えることによって、他人から評価を受けることができ、評価は教育に結びつき、その医師の診療能力の向上をもたらす。大学病院の病棟詰め所には、入院中の患者のカルテが並べられていて、指導医が常に目を光らせているし、大勢の研修医や学生も閲覧できるから、主治医が独善的な診療をして大失敗するようなことは滅多にない。


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Michitoshi INOUE / President, Osaka National Hospital
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