ロボットを導入した中央病歴室

 統一カルテの様式を検討している間に、病院の設計のほうはどんどん進行していた。中央診療部門、外来診療部門、病棟診療部門、管理サービス部門の4つの部会で、機能を考えながら、それぞれ施設部建築課長に注文を出すわけである。機能より先に面積の取り合いである。こうなるとみなさん雄弁で、薬剤部も、手術部も、もっと広くしてくれないとインテリジェント化は難しいと主張する。外来の診察室や待合い室も広くしたい。病棟では、個室を多くして、ナースステーションや研修医室を広く、また、患者が食事をしたり家族と面会できるデイルームも作りたい。サービス面では、廊下を広く、自動販売機は凹ませて置けるように、レストランはよい場所にできるだけ広く、エレベーターも多いほどよい。といった具合である。どれももっともな注文であるが、全体の面積が決まっているから、病院長や移転問題委員長の調整は大変であった。中央病歴室も頑張った。武田助教授が、カルテの総量、今後増えるであろう病歴情報量についてのデータを示し、これ以上狭いとカルテを預かることはできないと1800Fを要求した。また、カルテを自動的にピックアップして各診療科へ送り出すには、ロボットが必要だと主張した。武田君の主張にはなかなか説得力があって、病院長も受け入れてくれた。
 こうした経緯を経て、中央病歴室は地下1階に広い部屋を獲得することができた。おそらく日本の病院ではいちばん広い病歴室であろう。まず、平面図をご覧いただきたい(図  )。Aの場所には、過去6カ月以内に受診したことのある患者のカルテが保管されている。これをアクティブカルテと呼んでいるが、約6万5千冊ある。このカルテは、シングルピッカーといってジュークボックスをとてつもなく大きくしたような機械に格納されている。レコードの代わりにカルテを取り出してくる機械である。患者が来院すると、自動再診受付機から入力された患者のID番号を受けて、6万5千冊のカルテの中から選び出し、速やかに取り出してくる。ここまでは既に実施している病院がある。阪大病院の新しいところは、取り出したカルテを、自動的にその患者が受診する診療科行きの自走台車に積み込んでしまうことである。自走台車は天井裏の見えないところを通って外来ステーションに向かうわけである。取り出されたカルテを人手で自走台車に積み込むと多くの労力を要し、そんな人の余力は国立大学病院にはない。そこで、シングルピッカーのメーカーと自走台車のメーカーが協力して、自動積み込みのシステムを開発してくれた。一方、過去6カ月以内に受診していない患者のカルテは、Bの場所に設置されたシステマトリーブという格納庫に納められている。これはシングルピッカーほど早くはないが、半自動式のカルテ庫である。Cの場所は、入院中に病棟で作られたカルテを保管する場所で、ここには看護記録も一緒に保管されている。Dの場所は、病歴閲覧室で、カルテを研究や教育のために利用したいときにはこの部屋でだけ閲覧できることになっている。この部屋に入るには資格が決められていてカード錠でチェックしている。あらかじめ患者名かID番号を記入して申し込んでおくと、病歴掛がカルテを取り出しておいてくれる。カルテを研究室や自宅への持ち出すことは厳禁である。Eの場所は、病歴管理掛の部屋で、中央管理移行にともなって、医事課から13名の職員が配属された。
 中央病歴室の説明が長くなったが、大きな病院でカルテを中央管理することはこれくらい大変なシステムと場所と人手が必要なことを知っていただきたかったのである。




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Michitoshi INOUE / President, Osaka National Hospital
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