電子カルテと診療記録データベース


 病院情報システムを計画するに当たって、私が医療情報部のスタッフに言ったことは、「医療を見えるようにしよう」ということであった。情報化とは、世の中がよく見えるようになることであり、見えることによって理解が深まり、評価も公正に行われて、進歩がもたらされるはずである。「ある医師がどのような診療を行ったか」「ある患者がどのような診療を受けたか」、これが見えることによって病院のレベルが向上したり、医療の進歩がもたらされるに違いない、これが医療の情報化だと捉えた。
 このためには、オーダリングシステムと検査のレポートだけでは不1分である。患者の訴え(S、SUBJECTIVE)、医師の診察所見(O、OBJECTIVE)、データに基づいて医師が下した評価(A、ASSESSMENT)、その結果としての診療方針(P、PLAN)など、医師の能力が問われる記録が入力されていないと見えたことにならない。新阪大病院の統一カルテには、このSOAPを記入する枠が設けられていて、医師は、診察ごとに4項目に分けて記述することになっている。病棟の研修医達もこの書式に従って熱心に詳しく記載してくれている。しかし、これをそのままワープロ入力すれば電子カルテになるかというと、それは早計である。前述したように、その前に医学用語の標準化とコード化というハードルがある。人の言葉をコンピュータに理解させることは情報科学共通の大きな課題であるので、本格的な電子カルテを実現するには相当な年月を要するであろうが、これを突破しないことには医療情報システムの発展は期待できない。




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Michitoshi INOUE / President, Osaka National Hospital
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