研修会報告
平成18年度HIV海外研修報告記(サンフランシスコ)
平成19年1月11日から1月24日にサンフランシスコで行われた研修報告です。
研修期間 平成19年1月11日(木)〜1月24日(水)
メンバー 歯科・口腔外科 有家 巧
  外科 柏崎 正樹
  麻酔科 天野 栄三
  泌尿器科 高橋 徹
  看護師 宮本 典子
  看護師 東 政美
目次(クリックするとリンク先へ飛びます) 報告者
はじめに
研修スケジュール
  有家 巧 (歯科・口腔外科医師)
1. トムワデル診療所
  宮本 典子 ( 看護師 )
2. カイザーメディカルセンター
  宮本 典子 ( 看護師 )
3. サンフランシスコ G H
  宮本 典子 ( 看護師 )
4. UCSF(パーナサス)
  柏崎 正樹 ( 外科医師 )
5. ライオンマーチンクリニック
  高橋 徹 ( 泌尿器科医師 )
6. ゲイアンドレズビアンセンター
  高橋 徹 ( 泌尿器科医師 )
7. プロジェクト オープンハンド
  東 政美 ( 看護師 )
8. TEPOT
  宮本 典子 ( 看護師 )
9. HIV/AIDS ケアを理解するための思想
  高橋 徹 ( 泌尿器科医師 )
10. セルフマネージメント
  東 政美 ( 看護師 )
11. UCSFにおけるインフェクションコントロール
  柏崎 正樹 ( 外科医師 )
12. 歯科診療所におけるスタンダードプリコーション (, )
  有家 巧 (歯科・口腔外科医師)
13. HIVとDrug依存・中毒について
  天野 栄三 ( 麻酔科医師 )
HIV感染症海外研修を終えて
  天野 栄三 ( 麻酔科医師 )
はじめに

 この度のHIV感染症研究者海外研修では多くの施設を見学し、様々な職種や立場の方からHIVおよびAIDSに関する講義および意見を拝聴しました。すなわちサンフランシスコゲイコミュニティー発祥の歴史的背景および地理的要因、HIV / AIDS拡大の社会的背景、サンフランシスコモデルといわれる患者支援あるいは行政の対応およびUCSFを中心とした医療体制など幅広く解説して頂きました。 2 週間という限られた期間ではありましたが、サンフランシスコに於けるHIV / AIDSに対する包括的な取り組みを知る大変貴重な経験となりました。

研修スケジュール
1/11(木)

午前;サンフランシスコ到着
午後; 1)Tom Waddell Health Center 見学( team meeting 、診察)
     2)Tenderloin Area Resource Center での HIV team meeting 見学

1/12(金)

講義; AIDS Care system (by Masami Kobayashi)
講義; Gay men's HIV prevention (by Charley Marsteller

1/13(土)

休み

1/14(日)

休み

1/15(月)

講義;Chronic disease Self Management (by Susan Conrad: MCC Healthier Living Program)
講義;Supplements, alternative medicine, medication, his life, medical system (by Mr. J.: HIV+ person)

1/16(火)

午前;Kaiser Medical Center見学
     1)講義;Diversity coordinate (by Mark Gaines: diversity coordinator)
     2)Kaiser HIV team meeting見学
     3)講義;Kaiser method of primary care (inpatient & outpatient),
           Clinical trials (by Dr. Follansbee)
     4)講義;Nurse coordinator job (by Ed Chitty: RN)
午後; 1)Lyon Martin見学
     What Lyon Martin does for women with AIDS (by HIV+ women and transgender)
     2)Gay and Lesbian Center見学
Option: UCSF Medical Center at Mount Zionにて手術室見学

1/17(水)

午前; San Francisco General Hospital
     講義; Opportunistic infection (by Dr. Rybkin)
午後 ; ; UCSF Medical Center at Parnassus
     講義; OBGY and HIV (by Maureen Shannon : NP)
     講義; Infection control (by Dr. Anthony Kakis)
Option; Dental clinic (Periodontist) にて診療見学

1/18(木)

Tom Warddell Health Center Primary Care Clinic 見学
      講義; ART lecture (by Dr. Dolbeck)
Option; 1) UCSF Medical Center at Mount Zion にて手術室見学
     2) Dental clinic (Oral Surgeon) にて診療見学

1/19(金)

Project Open Hand 見学
     Tour and Q&A (by Susan Canavan
TEPOT program 見学 (by Tooru Nemoto, PhD)
San Francisco General Hospital 見学
     講義; Child abuse (by Dr. Cohen : Radiologist)
     講義; SFGH (by Sue Felt : Epidemiologist)
     講義; HIV (by Dr. Royce : HIV/AIDS division)
     HIV primary care 見学
Option; 1) UCSF Medical Center at Mount Zion にて ICU 見学
     2) UCSF Medical Center at Parnassus, UCSF Children's Hospital における院内感染対策を見学

1/20(土)

Final presentations, Graduation ceremony

1/21(日)

休み

1/22(月)

休み

1/23(火)

帰国 ( サンフランシスコ発 )

1/24(水)

帰国 ( 関西国際空港着 )

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1. トムワデル診療所

 サンフランシスコは、市を9分割し、そのおのおのに診療所を設置しています。トムワデル診療所はその中のひとつで、外来のみの診療所です。サンフランシスコ公衆衛生局が直接基金を出している公的な機関です。公衆衛生局を裏側に回ると入り口があり、表の公衆衛生局の雰囲気とは全く異なる趣を呈しています。 周辺の低所得層の人たちにプライマリケアを提供するのがこの診療所の主な機能で、土地柄ホームレスやトランスジェンダーが多く、ホームレスの7割はアルコールまたは薬物依存症、8割は精神保健の問題があるとデータから推定されています。

 狭い入り口を入ると、左手に受付、右手のドアを入ると廊下があり、廊下の右側に診療室、左側には、カルテ庫、処置室、薬剤庫があります。この建物はこの診療所を設置するために立てられたものではなく、その時々で建物の中が変わっているということでした。

 診察室は10平方メートルほどの広さで、簡単な診療のための医療用具と机や椅子がある程度で、部屋数は10部屋程度でした。医師と看護師の予約は別々で、看護師の診療のための部屋は 1 つしか設置されておらず、空いた部屋を適宜使用されていました。アメリカは、継続投薬であれば看護師でもできるため、実際は薬だけをもらいに来る患者や、診察室の中に入ることさえ拒み、廊下で薬を受け取る患者もいました。 

 毎週木曜日の昼には、多職種による患者のカンファレンスが、 1 時間程度で定期的に行なわれていて、今回の事例は、黒人の男性のパートナーを持つ、覚せい剤を使用している白人男性の薬剤耐性を調べるという話や、医療保険が切れているためにこの診療所を受診中の 50 歳の白人建築家の予防接種の件などが検討、確認されていました。


 
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2. カイザーメディカルセンター

 会員制で予防や健康教育を中心にした全人的医療を目指しており、 メンバーの保険料を、雇用主が先払いすることで医療費を確保しています。

 カイザーは北と南の別法人単位に分けて運営しおり、 北カリフォルニア400万人の患者の診療にあたっています。カイザー・パーマネンテの外来病棟はジャパンタウンの近くのゲーリー通りに面していて、施設内は、英語のほかに中国語、スペイン語の表示があり、それぞれの文化に対応する担当者が設置されていました。サンフランシスコでは多民族が生活しており、サンフランシスコの人口の5%以上の人口を占める民族に対し、母国語での各種サービスが受けられるようなシステムになっており、診療も言語によりフロアーの設定がなされていました。

 カイザーではプライマリケアとして5つのグループにわけて診療が行なわれています。生活習慣病、慢性病(糖尿病や高血圧など)を扱うグループが 2 つ、中国語やスペイン語を話す患者に対応するグループが 2 つ、そして HIV 患者を担当するグループです。 HIV 患者への診療にはチームで当たっていて、医師、看護師、 HIV プログラムコーディネーター、薬剤師、ケースワーカー、ヘルスケアの専門家から構成されています。週 1 回火曜日の朝に 45 分ほどでカンファレンスを行っていて、患者についての検討や研究結果の紹介、時には講師を呼び、話をしてもらうなど行われていました。

 HIV 陽性患者は 1840 人でそのうち女性は 60 人で、そのほかの男性のほとんどが白人です。全米では 200 万人の HIV 感染者がいると推定されていて 25% の人たちは自分が感染していることを知らないとされています。

 また、カイザーでは、 HIV の女性の出産において早いうちに検査を行うことで、母子感染の予防に努めており、ほとんどが経膣分娩をしているのもかかわらず、感染率は 1% でした。しかし、 3 ヶ月で 25 人の新患患者があり、妊娠 38 週になって新患で来た患者が HIV 陽性者である症例もありました。そのため、臨床薬剤師は、 HIV 検査の方法、システムの変更等の検討の必要性をはなされていました。また、検査で陽性が判明したときにパートナーへの検査を勧めるシステムとして市の公衆衛生局のプログラム「匿名告知プログラム」があります。以前のパートナーへの連絡など、本人が連絡を取れないような場合に、患者や医療者が連絡をすれば匿名で相手に検査を勧めるシステムです。

 白人男性ナースのHIVコーディネーターは自分がHIV陽性であることを隠さず、診察室にはパートナーとの写真も飾ってありました。患者への告知の場合でも、自分自身を例にあげて、希望をもつように、生活スタイルを変えていくことと、必要な医療サービスを活用することで長い間健康を保つことができることを伝えていました。患者が来院すれば、セクシャルヒストリーや、性行為の内容、薬物についても詳細に問診を取り、血縁の家族についても聞き、街のコミュニティーや受けることができるサービスの紹介もしていました。また、白人女性のHIVコーディネーターは、新しい入院患者があれば、病棟へ訪問し医師や看護師との調整行っていました。


カイザーメディカルセンター


臨床薬剤師のレクチャーのあとに


PN 診察室


HIV コーディネーターと

 
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3. サンフランシスコ総合病院( SFGH )

 SFGHは公衆衛生局管轄下にある市立の公的病院で、「人道的医療の提供」「適正な価格効率」「多様な文化に合わせて」を使命として医療を提供しています。職員は5675人で、公務員3000人、大学からの派遣が1800人、研修医、レジデント、フェローが875人で医師の99%はUCSFから来ています。リサーチには年間予算が6500万ドルという莫大な予算も得ることができます。年間10万人の患者を診ていますが、入院患者の3分の1は保険がなく、失業者、高齢者、障害者が多くホームレスや移民など心理的・社会的に問題のある人がここへ来る傾向にあり、年齢分布は45から64歳が約3割を占め、男女比はほぼ同数で、ヒスパニックが29%、白人が25%、アフリカ系アメリカ人およびアジア人が20%となっています。患者さんの言語は多岐に渡るため50人の通訳が在籍し、ロシア語など20言語に対応ができます。(日本語はオンコール体制)

 救急医療にも対応し、年間5300人の急患のうち17%が入院となって、サンフランシスコ全域にわたる救急車搬送の21%を受けいれています。年間13000名の入院患者のうち、精神障害のある人は2割にも上ります。

 公立病院ということで保険を持っていない人たちの診療に当たっており、疾患として多いのは、1.高血圧 2.精神科 3.出産 4.HIVで、HIVにおいては、サンフランシスコのHIV患者の3分の1がここでケアを受けています。患者のケアプログラムも充実しており、女性が安心して受診できるよう女性クリニックが週に1回あったり、HCVを持っている患者のサポート、自己注射のサポートとさまざまなサポート体制がありました。


サンフランシスコGH正面


HIV外来棟入り口


HIVの救急外来


HIV診療スタッフと

 
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4. UCSF Medical Center at Parnassus, UCSF Children's Hospital
   UCSF Medical Center at Mount Zion

 UCSF Medical Center は、US News & World Report誌による全米病院ランキングでトップテン入りしており、それを示すポスターが施設内のあちらこちらに掲示されています。医師数は全体で900名を超えます。

 UCSF Medical Center at Parnassusは、15階建て、600床の本院と180床の「病院内病院」であるChildren's Hospitalとからなっています。癌や脳外科、循環器科等の数多くの専門科を有し、肝・腎・膵・心・心肺の臓器移植も行われています。外来部門は本院の対面の建物にAmbulatory Care Centerとして集約されており、AIDS treatmentなどの部門を有しています。

 ここで私たちはHIVの垂直感染予防、女性におけるHIV/AIDS、インフェクション・コントロールの講義を受け、院内感染対策の実情を見学しました。

 UCSF Medical Center at Mount Zionでは、その中核施設であるUCSF Comprehensive Cancer Centerが良く知られており、外科治療を中心に包括的な癌診療を提供しています。Cancer Resource Centerが中心となり、癌患者やその家族に対する情報提供やカウンセリングなどの充実したサービスが提供されています。ここでは癌手術、手術麻酔、ICU careを見学しました。

    
UCSF Medical Center at Parnassus, UCSF Children's Hospital


UCSF Medical CenterのMission statement (外来や病棟に掲示されている)


病室は大半が個室


ICU


病棟への薬剤の搬送は中央制御の自走車で


外来診察室


 

    
UCSF Medical Center at Mount Zion, ICUおよび手術室にて

 
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5. ライオンマーチンクリニック

 1970 年代のある研究から女性同性愛者が医療を受けにくい状況であることが分かり、 1979 年に女性同性愛者を専門に診るためのクリニックとして、女性によって創立されました。低コストの医療を提供していたことから同性愛以外の女性も受診するようになりました。現在の女性同性愛者の患者の割合は 10 %程度です。 HIV 陽性の女性や、また 1993 年頃からは性転換者で HIV 陽性の患者さんが受診するようになるなど、他のクリニックではあまり診察を受けられない方が多く受診するようになり、現在に至っています。主に予防医学的な側面から医療を提供しています。経営的には3分の1が医療保険からの支払いで、20−30%が政府からのグラント、残りは寄付で賄われているとのことでした。

 ここでは HIV 陽性患者さんの精神的サポートとしての治療モデルであるグループセラピーを行っており、その一つがランチを患者さん同士が食べながら話し合うというものです。このランチにわれわれもランチ ( 日本食のお弁当 ) 持参で参加しました。メンバーは女性への性転換者と思われる方が 3 人、それ以外は女性の方で合計 10 人程度でした。一人の transgender の人は、話すことが出来ないのか常に筆談で質問をしたり、回答を寄せてくれます。アメリカでは子供と親の会話の 50 % ( 以上? ) が予防など、 HIV/AIDS に関係することに費やされると言っておられました。もう一人の Transgender の方はテネシー州から移り住んできたそうですが、そちらでは同性愛者への偏見もあり、危険なこともあったそうです。その人の Minority が生きて行きやすいところがサンフランシスコであるということが印象的でした。


レインボーフラッグがはためくクリニックの看板


受付横に飾られたポスター

(サンフランシスコについて少し)
 街中を歩けばすれ違う人はそれぞれ人種や肌の色が違う。ここは多人種社会で欧米人以外にアジア系(今では5人に1人は中国人だそうです)、ラテン系、アフリカ系などの背景を持った人たちがたくさん暮らしている。もちろん分化的背景も異なるし、言語も異なる。 Minority(少数者)の人でも暮らしていきやすい町、それは民族という枠以外に同性愛や性同一性障害などのMinorityの人々にとっても生きていきやすいところのようです。



 
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6. ゲイ・レズビアンセンター

 ライオンマーチンクリニックから信号一つ隔てたところにある同性愛者のための情報などが得られるセンター。多くのパンフレット、情報誌などがそれぞれ男性同性愛者、女性同性愛者、性転換者ごとに分けられて置かれている。下はその一部です。その中に男性同性愛者が養子をもらって親に成るための情報誌などがありました。子供の立場に立てば何とも複雑なように感じました。子供の長期的な追跡調査が必要に思います。ここにはトイレが男性用、女性用、ユニセックス用の3種類があります。

    
センターの正面


置かれていた冊子

 
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7. Project Open Hand
    


 21年前に教会のボランティアがHIV患者で家族がなく、病気でもケアする人がおらず栄養低下から病状悪化をまねいていた患者に食事を提供することで、健康維持できるようにと7人のクライエントから始まった活動です。現在はHIV患者や高齢で自己管理の困難な人や精神衛生上の門題などから、体調や栄養状態悪化や社会との関わりなどを考慮して、食事の宅配や人との交流の場所と食事の提供、食材の配給や食生活から健康維持・増進できるような教育的な働きかけなど栄養師などもメンバーとなって行っていました。


<オープンハンドの実例>


11:00にオープンし受付をする


メニューをみてオーダー用紙に記載する
(英語・中国語・スペイン語で表記されている




オーダー用紙の食材をボランテイアが袋に詰める







整理番号順にクライアントに食材を配給する

在宅のクライアントへの給食宅配サービス


調理後に保温庫のついた車で宅配する



食事とコミュニケーションの場の提供
・食事の宅配はクライアントの状況に応じて、毎日宅配と外出が多いクライアントには冷凍した食事の宅配を1週間分ずつ宅配するなど調整していました。
・在庫管理などは、スタッフが行い余った食材などはリサイクルで肥料などにしていました。
・教育面では、食材の配給や食事の宅配にメニューなど栄養指導の用紙を一緒に入れたり、疾患や治療と栄養の関係から栄養教室や電話などでの栄養相談も行っていました。
・3食すべての食事の提供ではなく、1食/日として他は自己での栄養維持をするように支援することで、自己管理能力も維持できるようにしていました。


 
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8. TEPOT

 HIVのリスクの高い人たちへのアプローチを行っている団体で、サムサ(政府)から予算が出て活動を行っています。対象は主にAsian Pacific Islandの人たちです。なぜ、アジアかというと、理由として、アジアの人々はアメリカでは一般的にモデル的な人たちであると認識されていて、政府からの補助金が出ない状況にあります。しかしそれは一部の人たちのことで、言語の壁や不法滞在、文化による期待度の違いなどさまざまな問題が混在しているため、公衆衛生や医療は十分活用できていません。また、ドラッグを乱用したときにも薬物は隠しておくべきという考え方があり、病院にいくことも少なく、医療機関からの介入も少なく、さらに文化的な影響もあり、特に女性はHIVのテストを受けに来る人が少ないのが現状です。

 TEPOTはその対象の現状のリサーチや各サービスの提供、既存のサービスの紹介、知識の普及を行っています。

 対象の中でも特に、ゲイの人、MSM、女性のセックスワーカー、不法ドラッグ使う人、トランスジェンダー、刑務所にいる人などハイリスクグループを調査します。調査の場所は地方の学校であったり、公園、セックスワーカーの働いているところ、カストロなどです。また、そのときHIVの検査も勧めます。

 予防の啓発活動では、学校に行き若い人たちに予防行動の基本についてデモストしたり、楽しく学べるようにゲームをしたり、パンフレットの紹介や、予防物品を実際に触ってもらいます。ゲイパレードや日本街フェアへ出かけていき、予防のコマーシャルにも努めます。コンドームの使用で痛みがあることがある場合にはジェルを使用することを教え、無料で配布したりもします。



TEPOTの人たちと


予防物品の紹介

 
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9. サンフランシスコのHIV/AIDSケアを理解するための思想

 HIV患者さんであるチャーリーさんの講演から
  ① ソーシャルモデル
  ② メディカルモデル

 サンフランシスコは特別な地域で、それはHIVと、麻薬やアルコールなどの薬物中毒の両方を持っている(二重診断されている)患者さんが多い。こういう患者さんをケアするための方法として①と②があります。

 ①は例えば中毒患者となってしまうような精神衛生上の問題を治療する必要があるとの考えから出発しています。同じ境遇の人たちで話し合う機会を作るなどのグループセラピーがあり、既述のライオンマーチンクリニックでのランチなどです。②はハームリダクションといわれる、現状を認めて今より悪くならないようにするという思想に基づいています。例えば麻薬注射のための注射針の回しうちや再使用をさせないようにするための注射針の交換制度です。現在の日本ではなかなか難しそうな制度ですがこのような方法を用いてサンフランシスコではHIVの新規の患者を大きく減少させてきた実績があります。



チャーリーさんと研修参加者

 
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10. Self Management Program



 慢性疾患も持つ人々が、快適で有意義な人生を送れるように、自己管理能力を高めるプロセスを同じ慢性疾患を持つ人々のグループで実際に行動しながら学ぶプログラム。


・ プログラム:1週間に1回3時間を7週間行う。
・ 疾患ごとのピアグループに慢性疾患を持ちリーダートレーニングを受けたリーダー2人を中心にメンバー自身が3ヶ月〜6ヶ月以内に行える問題解決するための行動目標を設定する。
・ 目標達成に向けて、毎週具体的な行動目標をあげて実施したことを翌週に評価・修正を繰り返し行い、問題解決し目標達成できるように支援する。
・ 目標が達成できない場合は、その顕在化した問題だけでなく、潜在化している問題を患者自身が見出せるように、リーダーは支援する。
・ 問題の原因を考慮しながら、同じ疾患を持つメンバー同士で考えられる解決策をリストアップして、意見交換を行い、その中から患者自身が自分の問題解決策のヒントを見出し、行動に移し問題解決・目標達成へと導く。
・ 基本的には医療関係者の直接的な介入はなく、患者が問題解決において医療的なアドバイスが必要なときに初めて医療的な介入をする。
・ 重要なのは、目標達成した成功体験だけでなく、そのプロセスを学ぶことでプログラム終了しても人生におけるさまざまな問題を同様にセルフマネージメントできるようになること。
・ 疾患に伴う身体症状と心理的な関係性についても認知心理学を用いてコントロールできることも学び、体調自己管理について知る。



 
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11. UCSFにおけるインフェクションコントロール

場所;UCSF (Parnassus), Room A-429
講師;Anthony Kakis, DPM, CIC (Infection Control Practitioner)


 2002年に報告された、ERで肺炎の為に緊急挿管された患者から医療従事者へのGroup A Streptococcusによる院内感染のアウトブレイク事例から説き起こし、院内感染対策の重要性とその考え方、具体策をレクチャーしていただきました。








 CDCは全入院患者の5% (200万人)に院内感染が生じており、その1/3は予防可能で、年間2万人から9万人が死亡していると推計しています。

 院内感染(Healthcare Associated InfectionとNosocomial Infectionは同義)対策の基本理念は、Standard Precautions(標準予防策)とTransmission Based Precautions(感染経路別予防策)の2つです。

 Standard Precautionsで最も重要なことはHand hygiene(手指衛生、手洗い)です。どんな場合に手洗いが必要か、およびその方法についてCDCガイドラインに則って解説していただきました。興味深いデータとして、UCSF Medical Centerにおいて、部門別に医師の手指衛生遵守率を手指衛生教育の前後で比較した結果、9カ所のICUでは教育前58%から教育後61%、6カ所の小児ICUでは59%から72%、Mount Zion Hospital ICUでは47%から79%となっており、教育により遵守率が向上することが示されました。しかし、看護師よりも医師の遵守率が低いことが指摘されています。

 UCSFでは、アルコール含有速乾性擦式消毒剤として保湿成分を含んだゲル状の製品を使用しています。








 また、UCSFでの取り決めとして、乾燥した血液が付着した包帯などのドレッシング材は、感染性廃棄物ではなく通常の廃棄物に分類されています。




 感染経路別感染対策に関して、UCSFでは、付加的な予防策が必要な患者の病室には接触感染、飛沫感染、空気感染と区別された表示がなされています。










 医療従事者の針刺し事故対策に関しては、安全装置付き静脈留置針の導入を始めとして医療従事者の安全に配慮した物品を選択していること、鋭利廃棄物専用の廃棄ボックスが全病室に備えられていること、24時間対応の院内針刺し事故ホットラインが整備されていることが示されました。






 いずれの対策もCDCガイドラインに沿った内容で、当院でもその概念は取り入れられています。当院との差異はその具体策の充実度でした。19日(金)にUCSF Medical Center at ParnassusおよびUCSF Children's Hospital施設内を感染管理の観点から見て回る機会を得ました。一般病棟はもとより、各科のICUやPICU、透析、臨床検査部など様々な部門を見学しました。病棟の大部分が個室で、2人部屋が少数のみというUCSFと当院とでは環境の相違があるものの、各個室の壁の床から1m以上の高さに鋭利廃棄物専用の廃棄ボックスが設置されていることなど、学ぶべき点が多々あり有意義でした。またレクチャーで示された内容は実行されていることが確認できました。

 UCSF Medical CenterにおけるMRSA対策について質問したところ、基本的にはstandard precautionsが必要充分であるとの立場でした。隔離や環境の消毒など特別な対策は取っていません。

 また、HIV+ caseでの手術でもprecautionsは通常通りで、手技上も特別な配慮はしていません。術者と直接介助看護師との間にいわゆるセーフティーゾーンを設けるなどの議論もありますが、そういった対策は不要との認識でした。


 
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12. 歯科診療所に於けるスタンダードプレコーション(その1)

 歯科医師に対する特別プログラムとして歯科診療所の感染対策について見学する期会を与えられたため、一般歯科診療所に於けるスタンダードプレコーションの実際について報告いたします。

 ユニオンスクエア北側Sutter Streetに面した450 Sutter Building 23階で開業されている歯科診療所で、感染予防対策の実際について見学させていただきました。一等地で開業される歯科診療所だけあって診療所内は清潔で、診療台は4機、診療室は全て個室となっていました。



ユニオンスクエアから望む医療ビル


診察室

 スタッフの感染予防に対する教育は充分に行われており、感染予防対策について実際の手順に従って説明して頂きました。歯科診療台および周辺器機、すなわち切削器具、ライトハンドル、ライトスイッチ、歯科診療台の安頭台および背板もほぼ全てディスポーザブルのビニール製品で覆っています。

 診療後はアシスタントがマスクおよび手袋を着用しディスポーザブル製品を廃棄します。その後手袋を更新し、BIREX(フェニール系消毒薬で、清拭後最低10分間自然乾燥させる)を診療台、スピットンおよび診療台周囲の床面に噴霧し清拭します。ただしアシスタント側の吸引管や3way シリンジはビニールで覆われていなかったのが気になりました。注射針およびメスの刃はワンタッチ式の廃棄器具ではありませんでしたが、使用済みの診療器機は消毒域に搬入され、不潔な器具は決して清潔域に混入することがないよう配慮されていました。高級感が漂う歯科診療所ではありましたが、患者さんの動線はカーペットになっており清掃に障害がありそうと思える所もありました。歯科用切削器具(エアータービンなど)の使用に当たってはウォーターライン内の汚染物質の逆流が問題となり、一たびバイオフィルムが形成されると院内感染の感染源となります。そのため逆流防止弁や陽圧噴霧などで対応しますが、当該歯科医院に於いてはチェアーサイドにプラスチックボトルによる介所が設けられ、ウォーターライン内の汚染にも注意を払っていました。








ビニール製品を廃棄し、診療台および周辺を清拭

 
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歯科診療所に於けるスタンダードプレコーション(その2)

 Van Ness通り2001の4階で開業されている口腔外科診療所を訪問しました。陳先生は中国系アメリカ人2世でUCSF歯学部のご卒業、父親も顎顔面口腔外科医です。診療所内は清潔で、診療台は4機、診療室は全て個室となっており、本医院の床は全てリノリウム製であると思われました。今回は実際の抜歯操作とその後片づけを見学しました。



診察時


小手術時

 前日の歯科医院と同様のディスポーザブル製品で、体液汚染に対する診療台周辺の環境を整えていました。大阪医療センターと明らかに異なる点は、切削器具にありました。セントラルパイピングされたエアートームを使用し、硬組織の削除時にはアシスタントがシリンジで注水しており、我々が手術室で行っている方法と酷似していました。この方法であればエアゾルの飛散に関しては最小限に留める事ができそうですが、手術の操作性には問題があります(エアータービンハンドピースの方が圧倒的に操作性は高い)。我々の外来診療室でも明らかな出血を伴う小手術では、エアータービンからの注水をなくしアシスタントに注水してもらう方法もエアゾルによる汚染の軽減には一案と思われます。



切削器具(エアートーム)

 他方の歯科医院では確認できませんでしたが、口腔外科の術者は患者さん毎にガウンを更衣していました。使用済みの診療器機は消毒域に搬入され、不潔な器具は決して清潔域に混入することがないよう配慮されていたのは前日見学した歯科医院と同様でありました。エアートームであればウォーターラインが存在せず、バイオフィルムによる院内感染の感染源とはなりません。



診察後のメイテナンス


オートクレーブルの左側が不潔域、右側が清潔域

 いずれの開業歯科医院でもOSHAの勧告に十分配慮された院内環境の確保と対応がなされていました。

 日本では歯科医院の滅菌、消毒設備の不備を理由に、HIV/AIDS患者さんの歯科治療を拒否するという事態がいまだに生じており、そのため患者さんが感染の自己申告をせずに歯科を受診することが多いようです。口腔外科を除く一般歯科治療に於いても歯の切削時や歯石除去、歯形を取るときでさえも歯肉から出血し、歯科治療は観血手術の連続といっても過言ではありません。OSHA(米国職業安全保健局)では1.広範囲の病歴聴取2.汚染防止計画の立案3.ユニバーサルプリコーション4.B型肝炎予防接種5.暴露後の評価、追跡6.患者の消毒レベル含嗽7. 消毒レベル手洗い8.ディスポーザブルフェイスマスク9. ディスポーザブル手袋10.アイガード11.保護衣など32にのぼる項目で歯科医院用院内感染予防ガイドラインが制定されています。大阪医療センター歯科口腔外科に於きましても、より充実した院内感染予防態勢を確立し、安心できる医療サービスを提供したいと考えております。

 
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13. HIVとdrug依存・中毒について

 アメリカ、そしてサンフランシスコでは、さまざまな理由でdrug依存・中毒に陥っている人々が沢山おり、その中にはHIV positiveの患者さんが多数おられるのが現状です。日本でも近年、drug依存・中毒の問題が取りざたされる機会が多くなってきていますが、今後は日本でもdrug依存・中毒に陥っている人々の中にHIV positiveの患者さんが増えてくることも予想されます。

 今回のこのHIV感染症海外研修プログラムの中で、幸いにもdrug依存・中毒に陥っている人々の治療を熱心に行っている施設を見学し、「HIVとdrug依存・中毒」について研修できる機会を頂きました。

 一般に通常の手術中や術後に使う鎮痛剤としての麻薬の量はそれほど多いものではなく、主に緩和医療において癌性疼痛に用いる麻薬の量に比べるとはるかに少ないものです。すなわち、緩和医療で使用する麻薬の量はその疼痛の程度によって必要量は漸増し、rescue doseを含めると大量の麻薬が必要となることもあります。

 癌性疼痛に対して鎮痛剤として大量の麻薬を投与しても依存症や中毒になりにくいことが解っています。Morphine(モルヒネ)のような麻薬が投与された場合、癌により身体に炎症をきたしている状況ではドパミンの脳内濃度の上昇が少なく、依存症の原因となるドパミンが分泌されにくくなりますが、逆に炎症がない健康な人が麻薬をはじめとしたdrugを投与されるとドパミンの脳内濃度が急激に上昇します。ドパミンは行動の動機づけ、習慣づけを行う物質で同時に快楽も得られます。大量に分泌された場合は強烈に動機づけされ習慣となり、依存・中毒に陥ってしまうと考えられているのです。

 つまり、癌性疼痛で苦しむ患者さんにはむしろ、積極的に麻薬を投与してあげ、疼痛をしっかりと緩和してあげることが重要性だと考えられます。それと同時に麻薬をはじめとしたdrug依存・中毒に興味を感じました。手術麻酔にしろ緩和医療にしろ麻薬を日常茶飯事に処方する我々麻酔科医(anesthesiologists)はそれと密接に関係するdrug依存や中毒の薬物学的・社会的・疫学的問題をしっかりと認識する必要があると考えられます。

 ある種の薬物の摂取により多幸感を感じたり(正の強化効果)、不安や苦痛から解放されたり(負の強化効果)すると、人は再びその薬物を探し求めるようになります(薬物探索行動)。このように薬物がもたらす正の強化効果や負の強化効果を求めて、薬物摂取の要求に打ち克つ事が出来ず(自己抑制の破綻)、結果的には薬物の使用を繰り返すことになります。連用するに従って薬物に対する欲求は益々激しくなり“強迫的な使用”(精神依存)へと拍車がかかってきます。

 モルヒネでは、さらに“身体依存”に陥ります。この状態で薬物を中断すると、呼吸停止や痙攣を含めた激しい禁断症状(withdrawal syndrome)が現れます。この不快な禁断症状から回避・離脱する為に、また薬物の摂取を試みるようになり、依存が形成されます。

 覚醒剤を数ヶ月に渡って乱用すると、幻視、幻聴、被害妄想などの症状を呈し、覚醒剤精神病を誘発します。これらの症状は治療により一時的には治りますが、症状の再燃は小量の覚醒剤の再使用や心理的ストレスによって容易に起こるようになります。このように覚醒剤の反復使用が脳内に持続的な変化を起し、症状再燃の準備性は長期に渡って保持される様になります。

 同様のことが大麻(マリファナ)乱用にも認められます。大麻喫煙していない時でも、幻視・幻聴や妄想などの精神症状が持続してみられます(大麻精神病)。感情の平板化、関心・自発性の減退、思考内容の貧困化などの無動機症候群を呈する人格変容は大麻乱用の特徴です。

 サンフランシスコ市内の街角に多数点在するMethadone(メサドン) clinicはこうしたdrug依存・中毒に陥っている人々を熱心に治療している貴重な施設です。

 Methadoneという薬は日本では未認可であるために、あまり聞きなれませんが、モルヒネやヘロイン(ヒドロモルフィン)中毒の統御やHIV 感染率の減少などのharm reductionには有効であると考えられています。Methadoneは代謝されるのが遅く非常に高い脂溶性を持つオピオイドで、モルヒネ系の薬剤よりも持続時間が長いのです。Methadoneの典型的な半減期は24−48時間ですから、ヘロインの解毒や維持療法の際は1日に1度のみの経口投与で済むため、間隔を空けれる点、注射針を使わなくて良い点でアメリカではモルヒネやヘロイン中毒の治療に用いられています

 訪問したMethadone clinicでは、診療にあたっていたM.D.が快く出迎えてくださり、わずかな時間を割いて質問に答えてくれました。


<以下、M.D.への質問とその答え>
 HIVとdrug依存・中毒というテーマを考えた時に、まず自分の中で最初に浮かんだ疑問は

①「以前からdrug依存・中毒に陥っている人がHIVに感染する傾向が強いのか、あるいは逆にHIVに感染した人が不安や恐怖などの精神的逃避からdrug依存・中毒に陥ってしまう傾向が強いのか」でした。
→ 答えは明確で、サンフランシスコ(アメリカ)においては前者が圧倒的に多いとのことでした。

 drugによる多幸感、high tentionの状態からnon-safer sexや針の使いまわしを行い、HIVの感染が広がっていくことは確かに容易に考え得ることでした。サンフランシスコでは今やHIVはchronic diseaseのひとつといわれ、HIVが原因で死に至るcaseはまれとなっていますが、以前(1980年代)のようにHIV=deathを意味する時代であったら、後者のようなcaseもあったのではないかと想像します。

② 前者のような状況を打開する方法は?
→ 社会的な要因が多くなかなか根本的解決には至らないのが現状である。

 特にHIV positiveでdrug依存・中毒に陥りやすい人は単に意思が弱いということではなく、遺伝的・生物学的な要素、家族背景(abuse等)、精神保健上の問題を抱える場合などが大きな要因を閉めることが多いということだと考えます。

③ drugから完全に離脱できるのはどのようなcaseか?
→ Methadoneを用いながらharm reductionをうまく行えたcase。
  Self controlによって自力で離脱できるcaseは極めてまれである。

 HIV positveで多種多様なdrugから自分の強い意思と宗教の信仰により離脱したJoeさんのようなcaseはまれなのだと思いました。Methadoneもオピオイドであり、当然耐性と依存性が生じうるもので、禁断症状は同量のモルヒネやヘロインに比べ緩慢で軽いが著しく長引くようです。ヘロイン中毒者の中には、ヘロインよりもMethadoneから抜け出すことのほうが難しいと感じる人もあり、Methadone維持療法では投薬によって症状が快方に向かうとは限らないため、投与は定期的に行われないように計画されることが多いとのことでした。

④ drugから離脱してもまた時間が経てば逆戻りしてしまうcaseは多いのか?
→ 人によって個人差が大きく2~3ヶ月後であったり5年後であったりさまざまだが、やはりもとの状態に戻ってしまうcaseが多い。

 さまざまな差別をinternalizeせずにself-estimate(自己価値)を高めるようにもっていくharm reductionをしっかり行えるような体制の確立が重要と考えられます。それにはHIV program co-ordinatorの方のbackupが重要になると考えます。

⑤ 日本でも最近、drugをやる若者が増えてきているが、何か良い予防策は?
→ これも社会的な要因が大きく影響するが、低年齢層への薬物乱用汚染が拡大されつつある傾向を念頭に家族教育・学校教育での予防が重要となる。

 しかし、むしろ我々大人・親・教育者(医療関係者も含む)自身のdrug乱用に対する無知と危機意識の薄さにこそ問題があり、そのことが今日のdrug乱用に拍車を掛けている面も否定できないと考えます。よって我々自身がもっと積極的にdrugのもつ怖さを知る必要があると考えます。

⑥ drug依存・中毒患者と常に向き合って治療していくのは大変な仕事だと思われるが、Dr.としてのmotivationはどこにあるのか?
→ drug依存・中毒に陥っている患者さん達は心の痛みを持っている。医師としてそれを取り除いてあげたいと思うのが一番の望みだ。当たり前のことだが、患者さんが良くなっていくのを見るのが嬉しくてこの仕事に携わっている。

 言葉でいうのは簡単なことだが、実際にはせっかくよくなった患者が再び逆戻りしたりして、つらいことも多いだろうと感じました。同じことが繰り返される状況でも常に前向きに取り組まれている姿勢を見習わなくてはと思いました。

<まとめ>
 アメリカでも日本でもdrug(一部のdrugは除く)は勿論違法だが、drugに対する認識やdrug依存・中毒への対応はアメリカのほうが日本より進んでいるように感じています。それはすなわちHIVに対する認識にも同じことが言えると思います。drug依存・中毒に陥っている人々の多くがHIVに感染するという疫学的方程式の解答はこのサンフランシスコを見れば自ずと得られるような気がします。そしてそれは快楽を求める若者を中心にdrug依存・中毒者が増えてきている日本の状況を見れば、Methadone clinicのような施設を設け(まず、日本でもMethadoneの認可がおりることが先決ですが)、長期的離脱を図れるようなシステムを構築することが、すなわち今後このままでは増加の一途をたどるであろうHIVの感染率を少しでも下げることにつながっていくと思います。


 
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HIV感染症海外研修を終えて

 今回のHIV感染症海外研修に参加させていただくにあたり、参加前までの認識としては漠然と、我々医師・看護師はそれぞれの分野での専門性をより追求した知識や経験を得ることのみを前提に考えていたように思います。しかし、実際に研修に参加し、プログラムを推進してくださったコーディネーターのかたを中心に、さまざまな施設でさまざまな人々に接し学んでいくうちに、その認識がいつの間にか別のものに変わっていることに気付きました。すなわち、それぞれの分野でのスペシャリストが日本では経験できない知見を広めることは勿論大切なことなのですが、それ以前に一人の医療従事者として、また一人の人間としてHIV/AIDSという疾患とどのように向き合っていくべきなのかを立ち止まってじっくりと考えることのほうが重要であることに気付いたのです。それには敢えて自分の専門分野以外のことに焦点をあて、出来るだけ多くを知り、また経験することが必要であったのです。二週間というわずかな期間ではありましたが、綿密に組んでいただいたプログラムのおかげで、我々は実際にそれを実践し体得することができました。そしてそれは計り知れない貴重な財産となりました。今後HIV拠点病院の一員としてHIV/AIDSという疾患に真正面から向き合い、この経験を総合的チーム医療の貢献に役立てていきたいと強く思っております。

 なお、本研修の機会を与えて下さった厚生労働省医政局国立病院課および御指導頂きました独立行政法人国立病院機構本部、国立病院機構大阪医療センター廣島院長・白阪部長をはじめ関係者の皆様に感謝いたします。現地では小林まさみ氏、 David Wiesner 氏に研修期間中のコーディネート及び、通訳、御指導等を頂いたおかげで大変充実した研修を終えることができました。深く感謝致します。また研修参加にあたり、病院内外の関係者の皆様にも多大なる御尽力を賜りました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 
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