研修会報告
平成22年度HIV感染症医師実地研修会
 大阪医療センターでは、増加を続けるHIV感染症患者に対してHIV専門医が少ないという状況を改善する為に、平成18年度よりHIV感染症専門医師養成コース(HIV感染症医師実地研修会)を実施しています。本年度も1ヶ月間におよぶ実地研修を実施しました。
実施時期: 平成22年10月5日(月)〜平成22年10月29日(金)
開催場所: 独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター
開催目的: 西日本のエイズ診療拠点病院に勤務する医師向けに、HIV感染症に関する最新の専門知識・治療技術を習得してもらい、HIV診療体制構築の充実を実践できる人材を育成する
対象: 西日本(北陸・東海・近畿・中四国・九州)ブロックのエイズ治療拠点病院医師(初期臨床研修医は除く)
参加者: 4名 (うち1名は 平成22年10月5日(月)〜平成22年10月15日(金)のみ)
内容: 講義・病棟実習・外来見学・NPO見学
講 師 一 覧
1) HIV感染症の疫学・抗HIV療法の考え方・薬剤耐性HIV変異 白阪 琢磨
2) HIV感染症の呼吸器病変 小河原 光正
3) HIV感染症の診断と告知 渡邊 大
4) HIV急性感染 渡邊 大
5) 外来・病棟 その他医療体制 上平 朝子
6) HIV感染症と皮膚疾患(外来) 田所 丈嗣
7) 外来での看護支援 下司 有加
8) 抗HIV薬の現状と服薬指導 吉野 宗宏
9) 日和見感染症診療(カポジ肉腫) 矢嶋 敬史郎
10) 日和見感染症診療(クリプトコッカス症、カンジタ症他) 矢嶋 敬史郎
11) HIV感染症と肝炎 三田 英治
12) 日和見感染症診療(ニューモシスチス肺炎) 笠井 大介
13) 日和見感染症診療 (HIV脳症、PML) 坂東 裕基
14) HIV陽性者の外科手術例 辻江 正徳
15) HIV陽性者肛門疾患 宮崎 道彦
16) HIV感染症に関連する頭蓋内病変の画像診断 油谷 健司
17) 薬物依存 仲倉 高広
18) HIV感染血友病患者の関節症の治療 吉田 礼徳
19) HIV感染症と眼科疾患 濱本 亜裕美
20) HIV感染症と口腔症状 有家 巧
21) STD診療 谷口 智宏
22) 日和見感染症診療(抗酸菌症) 谷口 智宏
23) 針刺しによるHIV暴露後対策 笠井 大介
24) 日和見悪性腫瘍 小川 吉彦
25) 陽性妊婦の看護支援 中野 志麻
26) HIVと薬剤耐性検査 木下 幸保
27) 在宅療養支援の実際 下司 有加
28) HIV感染症における呼吸器疾患診断 栗山 啓子
29) HIV感染症の看護(病棟) 鈴木 成子
30) HIVとカウンセリング 安尾 利彦
31) HIV感染症と精神科疾患 梅本 愛子
32) わが国におけるHIV母子感染の現状 多和 昭雄 ・ 尾崎 由和
33) 医療ソーシャルワーカーの役割と地域の課題 岡本 学
34) 薬害HIV・血友病診療 西田 恭治
35) 免疫再構築症候群(IRIS) 上平 朝子
36) 臨床栄養学 田中 勝久
37) 日和見感染症診療(CMV感染症) 米本 仁史
38) 特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権(MERS) 若生 治友
39) 特定非営利活動法人 CHARM 青木 理恵子
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参加者の感想文

市立岸和田市民病院
血液内科 竹内 麻子

 このたび大阪医療センターでのHIV感染症医師実地研修会に参加させていただきました。参加を快くお引き受けくださり、丁寧に指導していただきました大阪医療センターのスタッフの皆様、また送り出してくださいました岸和田市民病院の先生方には深く御礼申し上げます。

 4週間の研修で、前半の2週間は講義が主体でした。講義の内容はHIV/AIDSの基礎知識から、実際の症例を提示していただき、より実践的な内容まで非常に多岐にわたり、幅広く、内容の濃いものでした。また、教えてくださる先生方は医師だけでなく、看護師、薬剤師、MSW(ソーシャルワーカー)など、コメディカルの方々からもゆっくりお話を伺うことができ、大変参考になりましたし、実際の診療の流れのイメージがつかめました。その後実際に患者さんとの面談に同席させていただけたことも良かったです。

 後半の2週間はほぼ病棟で、入院患者さんに実際に診察をさせていただき、お話を聞かせていただきました。担当させていただいていた患者さんのほかにも、みたいと思った患者さんについてはすぐに応じてくださり、6人の患者さんの経過をみさせていただくことができました。比較的落ち着いた患者さんから、重症の患者さんまで、HIV感染症の合併症が非常に幅広いものであることを実感しました。私の専門とする血液内科の疾患とも関係するところが多いので、専門性を生かしたHIV/AIDS診療を行うことができるのではと感じました。また、担当医の先生にはいつも快く質問に応じていただけました。

 今回の研修を通じて、HIV/AIDSは今後増加していく慢性疾患として、すべての医療者が関わっていく必要があると感じました。ここで得た知識を、今後出来る限りフィードバックし、正しい知識を広めることができればと思います。

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呉医療センター
血液・腫瘍内科 沖川 佳子

 まず4週間に亘る研修にあたり、多忙の中、大阪医療センターの多くの先生方に専門家としてのご講義を戴いたことをはじめ、Co-medical専門職の方々、NPOの方々、そして診察見学にあたり御協力戴きました患者の皆様方に心より御礼申し上げます。

 この4週間の感想ですが、学ぶほどに正直HIV感染症は難しい病気だと思いました。疾患や治療が専門的で難しいというのではなく、いろいろな社会的背景と密接に関わっているために、目の前の病気を治療することだけでは必ずしもこの病気に関わる諸問題の根本的な解決にならないという点が、です。

 今回一番初めの総論の講義で、白阪先生は我々に、「この病気を本当に『自業自得』」としてしまってよいのか?」という問いかけをされました。実際HIV感染症については薬害エイズの歴史、STDとしての疾患背景、未だに続く社会的偏見などもあり、この疾患の現状に対し様々な方が多くの考え方、捉え方をされていることもまた事実であると考えます。その中で今回の実地研修会を経て感じたのは、知識を得ていざ自分がこの疾患と向き合うにあたって、与えられた環境でマニュアル通りに淡々と仕事をこなす受身の診療でなく、私自身がどのように目の前の現実を捉え、何を問題と考えて今後どのように取り組んでいくのか、そうした自分自身の立ち位置、主体性をまず多くの関係者から問われるのだということでした。

 HIV感染症の患者様が抱えるいろいろな問題を解決するには、医師の力だけでは不十分で、チームとしての力がどうしても必要であることは自明です。その点大阪医療センターではチーム医療としてそれぞれの専門職が密接に連携をとりながら診療にあたり、効率よく全人的な治療、対応が行えていることに深い感銘を受けました。ですが一方でブロック拠点病院としての制約や限界があり、今後患者数の増加や高齢化などを考えるとき少数の専門病院のみで全てを背負うことは不可能です。私が診療を担当する地方の一拠点病院では、まだ多くない患者様に対して現在できることに限りはあると思います。それでもブロック拠点病院のHIV専門医の方々と共に、地域の拠点病院として何ができるかを考えながら、院内チームの人材育成や地域の医療関係者の方々への啓蒙活動を通じて、受け入れの裾野を広げることにより、最終的に多くの患者様により良い医療を受けられる機会を提供していければと考えます。

 この4週間、短期間ではありますが非常に密度の濃い研修をさせて戴きました。改めて日々細やかな御配慮を戴きました感染症内科の先生方と臨床研修センターのスタッフの皆様に心より御礼申し上げます。どうもありがとうございました。

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独立行政法人国立病院機構姫路医療センター
呼吸器内科 三村 一行

 今回、大阪医療センター感染症内科にて約1ヶ月HIV感染症医師実地研修に参加させて頂きました。研修期間中は感染症内科の先生方をはじめ、看護師、薬剤師、検査技師、臨床心理士、そして医療ソーシャルワーカーなど院内・院外含め非常に多くの方々にお忙しい中ご指導頂きまして、本当にありがとうございました。

 研修の内容としては前半の2週間は感染症内科をはじめ呼吸器科、消化器科、外科、皮膚科、眼科、整形外科、産科、小児科、歯科口腔外科、放射線科、精神科など各科においてHIV/AIDS診療に携わる先生方やコメディカルスタッフの方々から臨床で本当に役に立つHIV/AIDS診療についての講義を受け、そこで得られた知識を後半2週間の病棟実習で深めていくというものでした。また研修期間中に外部のNPO団体への訪問研修も行い、薬害や外国人HIV患者の歴史や現状を知ることができたのは本当に貴重な体験でした。

 HIV/AIDS診療に関わらず、実際の医療現場ではガイドラインやEBMにのっとった診療だけでは対応が困難な症例や状況にぶつかることが多々あるのが現状です。そのような状況においては、疾患に対する非常に多くの臨床経験の中で得られた知見や様々なコメディカルと一緒にチームとして対応していくことが大切だと個人的には感じていましたが、今回の大阪医療センターの研修では、そのような非常にバランスのいいHIV/AIDS診療が行われており、感銘を受けました。この経験を自施設に戻って是非生かしていきたいと思います。

 最後になりましたが、大阪医療センターでのHIV感染症医師実地研修は感染症内科の先生方をはじめ、様々な職種の方々がひたむきに、でも楽しく診療にあたっている中で行われており、貴重な経験ができると思いますので、是非多くのHIV/AIDS診療に携わる医師の方々に受けて頂きたいと思います。

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神戸大学
感染症内科 岡 秀昭

 現在、勤務する施設では、感染症を専門として診療をしており、新規のHIV紹介患者さんも増加傾向であることから、今まで以上に修練したい分野であると考えていたところ、この企画を知り、集中して学ぶよい機会であると思い応募いたしました。

 本年度は定員を超える応募者があったということでありましたが、スタッフの皆様方のご厚意で、前半2週間の講義のみの研修に参加させて頂くことができました。

 普段は、診療ガイドラインというレシピを忠実に実践する診療を心がけておりましたが、本当にこのようなことを他の施設はしているのであろうか?、経験の豊富な施設はどうしているのであろうか?という、実診療におけるさじ加減を確認したいという主目的で研修に臨みました。実際のところ、期待以上の収穫を得ることができました。

 少人数の質問しやすい講義で、疑問点をたくさん気軽に伺うことができ、経験豊富なスタッフより懇切丁寧にご指導を賜ることができました。教科書には載っていない、診療におけるパールも複数入手することができました。また、カウンセリングなど、大阪医療センターのHIV診療のサポート体制の充実にはたいへん驚きました。このような充実したサポート体制をモデルとして、構築していくことができればという目標もできました。

 さらに、同時期に受講した他施設からの様々な専門分野の研修生との優雅なランチタイムを過ごしながらの議論も大変に刺激になりました。

 病棟実習への参加ができなかったことは残念ではありましたが、研修で学んだ知識を、自施設へ持ち帰り、現場の患者さんへ還元することで今後に生かして参りたいと考えております。

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