研修会報告
平成23年度HIV感染症医師実地研修会
 大阪医療センターでは、増加を続けるHIV感染症患者に対してHIV専門医が少ないという状況を改善する為に、平成18年度よりHIV感染症専門医師養成コース(HIV感染症医師実地研修会)を実施しています。本年度も1ヶ月間におよぶ実地研修を実施しました。
実施時期: 平成23年10月3日(月)〜平成23年10月28日(金)
開催場所: 独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター
開催目的: 西日本のエイズ診療拠点病院に勤務する医師向けに、HIV感染症に関する最新の専門知識・治療技術を
習得してもらい、HIV診療体制構築の充実を実践できる人材を育成する
対象: 西日本(北陸・東海・近畿・中四国・九州)のエイズ治療拠点病院医師(初期臨床研修医は除く)で
所属施設長の推薦を受けた者
参加者: 6名 (うち3名は 平成23年10月3日(月)〜平成23年10月14日(金)まで)
内容: 講義・病棟実習・外来見学・NPO見学
                                       
講 師 一 覧
1) HIV感染症の疫学・抗HIV療法の考え方・薬剤耐性HIV変異 白阪 琢磨
2) HIV感染症の診断 渡邊 大
3) HIV急性感染 渡邊 大
4) HIV感染症と肝炎 三田 英治
5) HIV診療の医療体制 上平 朝子
6) HIV関連中枢神経病変-主にMRI所見と鑑別- 酒井 美緒
7) 外来療養支援の実際 下司 有加
8) 在宅療養支援の実際 下司 有加
9) 日和見感染症診療(カポジ肉腫) 矢嶋 敬史郎
10) 日和見感染症診療(カンジタ症、クリプトコッカス症他) 矢嶋 敬史郎
11) 臨床栄養学 浦田 正司
12) HIV感染症と皮膚疾患 田所 丈嗣
13) 日和見感染症診療(抗酸菌症) 大寺 博
14) 日和見感染症診療(ニューモシスチス肺炎) 大寺 博
15) HIVとカウンセリング 安尾 利彦
16) HIV陽性者肛門疾患 宮崎 道彦
17) HIVと眼疾患 濱本 亜裕美
18) 日和見悪性腫瘍 小泉 祐介
19) HIV感染症と物質依存 仲倉 高広
20) 陽性妊婦の看護支援 中野 志麻
21) HIV感染と腎障害 伊藤孝仁・中野知沙子
22) 針刺事故によるHIV暴露後対策 富成 伸次郎
23) STD(性行為感染症)の診療 富成 伸次郎
24) 日和見感染症診療(HIV脳症、PML) 坂東 裕基
25) HIV陽性者に対する外科手術 〜急性虫垂炎を中心に〜 宮本 敦史
26) HIVと消化器症状 小泉 祐介
27) 抗HIV薬の現状と服薬指導 吉野 宗宏
28) HIV感染症の呼吸器病変 小河原 光正
29) HIV感染症における呼吸器疾患の画像診断 栗山 啓子
30) HIV感染症の看護 病棟 鈴木 成子
31) わが国におけるHIV母子感染の現状 多和 昭雄・尾崎 由和
32) HIVと薬剤耐性検査 木下 幸保
33) HIV感染症と精神科疾患 梅本 愛子
34) 医療ソーシャルワーカーの役割と地域の課題 岡本 学
35) 薬害HIV・血友病診療 西田 恭治
36) 免疫再構築症候群(IRIS) 上平 朝子
37) HIV感染血友病患者の関節症の治療 玉城 雅史
38) HIVと歯科疾患 有家 巧
39) 日和見感染症診療(CMV感染症) 米本 仁史
40) HIV/HCV感染者の整形外科手術
−血友病症例での経験から−
竹谷 英之
41) 特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権(MERS) 若生 治友
42) 特定非営利活動法人 CHARM 青木 理恵子
43) 特定非営利活動法人 HIVと人権・情報センター(JHC) 桜井 健司
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参加者の感想文

独立行政法人国立病院機構 京都医療センター
呼吸器内科 金井 修

 平成22年度のHIV感染症医師実地研修には定員の関係で参加出来ず、今年こそは参加したいと思っていました。今年ついに念願が叶い、HIV感染症診療について1ヶ月間じっくりと研修させて頂く機会を得ることが出来ました。免疫感染症内科の先生方、他科の先生方、外来・病棟の看護師、薬剤師、臨床心理士、栄養士、ソーシャルワーカーの方々、そして今回病棟で担当させて頂いた患者様方に感謝致します。

 この研修を振り返ると、この1ヵ月は本当に充実しており、期間としては短いくらいだと感じました。最初の2週間は主に講義でした。HIV感染症に関する医学知識についても再確認することが出来たほか、これまでに経験の無い疾患についても体系だてて学ぶことが出来たため、今後遭遇するであろう疾患に対してもある程度落ち着いて対処出来るようになったのではないかと思います。また講義の内容は医学的な面にとどまらず、HIV感染者の看護・介護、栄養、精神面、社会的な要素まで含まれていました。これまで自分ではあまりアプローチできていなかった側面についても目を向けられるようになった一方で、解決が容易ではない新たな課題が見えてきました。自分一人で解決するのではなく、コメディカルスタッフと協力しながら対処していきたいと思います。

 後半2週間は病棟での実地研修でした。今回最も驚いたのは、HIV感染症が進行し免疫不全状態となった患者様の入院中の安静度でした。当院では日和見感染症の発症を恐れるあまりに安静度をかなり強く制限していましたが、大阪医療センターでは外出許可されるほどに制限を緩めていました。自分が日和見感染症への過度の恐怖からこれまで患者様をかなり強く拘束してしまっていたのだと反省し、今後の病棟管理に生かしていきたいです。

 1ヶ月の研修を通して、様々な職種が協力してのチーム医療が高いレベルで完成されていることを実感しました。一朝一夕で出来る物ではないと思いますが、現状の課題を一つずつ解決していくことで、当院でも診療体勢の充実を図りたいと思います。一つの目標を実際に目にすることが出来たことが、今回の研修の最大の成果だと思います。

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沖縄県立南部医療センター・こども医療センター
内科 豊川 貴生

 今回、国立病院機構大阪医療センターにおいて1ヶ月におよぶHIV感染症医師実地研修に参加させて頂きました。国内でトップクラスのHIV診療実績を誇る大阪医療センターでの研修は大変充実しており、非常に多くのことを学ばせて頂きました。

 前半の座学では国内および欧米のガイドラインや最新の知見に加えて日々の臨床で悩むであろう要点を実際の症例を交えながら学ぶことが出来ました。特に日和見感染や抗ウイルス薬の副作用だけでなく、抗ウイルス薬治療により長期予後が改善したことに対応して、さらに重要性が増している全身の長期管理に関して、内科だけでなく眼科や皮膚科、外科といったコラボレーションが必要となるため、多様な科の先生方からコンサルテーションのタイミングや実際の治療法まで学ぶことが出来たことは大変参考になりました。

 後半の病棟実習では、実際に患者さんを受け持ちながら研修をさせて頂きました。特に当院ではまだ入院患者の数自体がそれほど多くなく、解釈の仕方やフォローの仕方になじみの薄い検査項目や、使用経験が乏しい薬剤の使い方に関してスタッフの先生の指導の下で生きた知識として学ぶことが出来たことが大きな収穫でした。また、入院時の大きな課題となる日和見感染の管理に関しても、自身が担当した患者の対応だけでなく、重症度別の対応の違いといったさらに突っ込んだ部分を、過去の症例のカルテなどを交えて教えて頂き、非常に知見を深めることが出来ました。

 外来実習では、限られた外来の時間でいかに的確に患者さんが抱える医学的、社会的問題点を汲み上げ、必要であれば他科やコメディカルと協同して解決にあたる方法、またいかにフォローアップしていくのか、という点を学ばせて頂きました。さらに関係する全スタッフが参加する外来カンファレンスでは、各職種がそれぞれの視点からどんなサポートが必要なのか、サポートするために利用できる社会資源は何かに関して活発な意見交換が行われることで、医学的な見地だけでなく文字通り包括的なケアが実践されており、複眼的なアプローチの必要性を考えさせられました。

 またいくつかのNPO見学の時間を研修に組み込んで頂き、薬害エイズの問題や、HIVを含めた外国人診療の問題、そして医療と行政、NPOとの連携のあり方など、院内での研修だけではつかみきれなかったであろうHIV診療を取り巻く諸問題について学ぶことが出来ました。

 今回の一ヶ月に及ぶ研修を通して、HIV診療へ従事するにあたって感じていた漠然とした不安から、今後診療を深めていく上で必要な課題は何であるのか、という課題の具体化へ大きな一歩を踏み出すことができたと実感しています。規模は小さいながらも沖縄の中核病院である自院で出来ること、また中核拠点病院と連携して実施するべきことは何かなどまだおぼろげではありますが形が見えてきたように思います。まだまだ学ぶべきことは多くありますが、今回の研修で得た経験を糧に、しっかりとHIV診療の一端を担えるよう鋭意努力していきたいと考えています。

 最後になりましたが、研修期間中は感染症内科の先生方をはじめ、他科の先生方、看護師、薬剤師、検査技師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカーといったコメディカルの皆様、そしてNPOスタッフの皆様、お忙しい中ご指導頂きまして、本当にありがとうございました。

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奈良県立医科大学付属病院
感染制御内科 山田 豊

 このたびはHIV感染症医師実地研修会に1か月にわたって参加させていただきました。 大阪医療センターのスタッフの皆様、各NPOスタッフの皆様、また診察見学にご協力いただいた患者様方に深く御礼申し上げます。

 前半は講義、後半は病棟研修が主体でした。講義は初日から豊富な経験と最先端の情報に裏付けられた重厚な内容で、ついていくのがやっとの感がありました。感染症の研修を開始して半年の私には、1か月の研修期間中に消化しきれなかった部分もあると思います。知識のupdateに遅れない程度に時間をかけて咀嚼させていただきたいと思っています。また、コメディカルの皆様の講義の中では、国内外の社会復帰プログラムや長期療養のことなど、HIV患者の社会的なハンディキャップや疎外感についても考えさせられました。疾患の予後や感染性などでは説明できない、理不尽な差別を受けていることは、HIV診療に携わる者として忘れてはならないと思います。

 後半の病棟研修では、数名の患者様の担当をさせていただいた他、回診や緊急入院などさまざまな機会に多くの患者様をみさせていただきました。患者様の数も多ければ病態も多様であり、HIV患者のことだったら何でも診る、という雰囲気が伝わってきました。多様なバックグラウンドの先生方が協力しているブロック拠点病院だからこそ可能なことだと思いました。この研修で学んだことを自施設でどのように活かしていくのか、しばらく模索していくことになると思います。

 最後になりましたが、大阪医療センターのスタッフの皆様、各NPOスタッフの皆様、また診察見学にご協力いただいた患者様方に改めて深く御礼申し上げます。

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京都府立医科大学
感染制御・検査医学教室  藤友 結実子

 大阪医療センターでのHIV感染症医師実地研修会に、定員を超える応募者があったにもかかわらず参加させて頂き、本当にありがとうございました。感染症内科の先生方、スタッフの方々、いろいろな科の先生方、看護師、薬剤師、検査技師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカー、カウンセラーなどたくさんの方にお忙しい時間をさいて頂き、大変感謝しています。

 今回の研修を受けるまで、私はHIV感染症の患者さんを自分で診たことがなく、疾患について本で読んでも漠然としたイメージしか持てていませんでした。またHIV感染の社会的な背景から、HIV感染症・AIDSについて身構えてしまうところがあったのも正直なところです。今回2週間みっちり、どんな教科書にものっていないような実臨床に沿ったHIVの講義をうけることができ、質問にも快く答えて頂き、それだけでも十分に感謝しているのですが、1番よかったのは、HIV感染症を感染症の中の一つの疾患として大変興味を持てるようになったことです。HIVと聞いて身構えることはなくなりました。チーム医療の中で医師がその役割を果たすには、患者さんの背景を知ったうえで、偏見なく公平に医学的な観点で患者さんとその疾患をみることができるのが大事ではないかと、当たり前のことですが、再認識しました。

 さらに、HIV感染症の患者さんの問題は、医療だけでなく社会的な背景・偏見を含むため、チームとして関わっていかなければならないということを実感したのも今回の実習のおかげです。大阪医療センターでは、看護師、薬剤師、検査技師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカー、カウンセラーなどそれぞれの専門職の方々が連携をとりながらチーム医療をされておられ、大変感心しました。今後、地域の拠点病院としてHIV感染症診療をしていくにあたり、大阪医療センターのチーム医療をお手本としながら、いろいろな専門職の方と協力して人材育成や医療関係者の啓蒙活動など、自分にできることから始めていけたらいいなと考えています。

 私は今回は前半2週間の講義のみでしたが、来年1月の病棟実習を大変心待ちにしています。講義して頂いた内容を自分のものにできるよう頑張りたいと思っていますので、後半2週間もよろしくお願いいたします。

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大阪市立大学医学付属病院
血液内科 吉田 全宏

 この度、大阪医療センターでのHIV感染症医師実地研修会に参加させて頂きました。本年度は沢山の希望者がいたため、私は講義と病棟実習を2週間ずつ別の時期に研修させて頂くこととなりました。2週間の講義を終えての感想を綴らせて頂きます。

 最初に、貴重な時間を割いて非常に熱心に指導いただきました大阪医療センターのスタッフの皆様と、快く送り出して頂いた大阪市立大学のスタッフの先生方に深く御礼申し上げます。

 私が今回の研修に参加する動機となったのは、当院でHIV治療の経験が乏しいため、私の病院で診断したAIDs関連リンパ腫の患者様に転院して頂かざるを得なかった経験からでした。HIVが慢性疾患となった今HIV感染患者数は増える一方であり、HIVを診る機会は今後さらに増えると思い、自分達でもHIV診療を行いたいという思いで参加しました。

 2週間みっちりと知識と経験を教えて頂きました。大阪医療センターはHIV診療の歴史も古く、医師・看護師・薬剤師・MSW・カウンセラー・検査技師の方々がまさにチーム医療で診療を行っていることを様々な職種の目線から教えて頂きました。特に印象的だったのは、感染症科以外の先生方のHIV診療への理解・協力体制が整っていることでした。また、それほどのチーム体制を整えるまでの実際の苦労や現在の問題点に関する生の意見を聞かせて頂いたことは、今後自施設でHIV診療を行うにあたり、どのような点で衝突や問題が生じやすく、それに対してどのように対処すればよいのかが分かり、非常に勉強になりました。

 入院カンファレンスへの参加や病棟回診では、血液内科をしていてもあまり診ることの無いAIDs関連リンパ腫の方が非常に多いのに驚きました。感染症科のスタッフの中には様々なサブスペシャリティーを持っている方がおり、医師の中でも得意分野を分担しながら診療を行っていることもまたチームとしての理想型だと感じました。

 その他に、同時に研修を行った他施設から参加されていた5名の先生方の、それぞれの施設での現状や今後の展望に関する意見を交換し合えたことも非常に勉強になりました。非常にチーム体制が整った大阪医療センターはHIV診療の理想型ではありますが、これほどの体制を一から整えるのは並大抵のことではありません。限られた人員・チーム体制で診療を行っている他施設の先生方の現状をお聞きできたのは、HIV診療を行う第一歩を踏み出す際に背中を押して頂いたような経験でした。

 大阪医療センターでのHIV感染症医師実地研修会は、既にHIV診療をバリバリと行っている先生方にも、これから始めようという先生方にも非常に勉強となる機会だと感じました。 講義を受講し非常に多くのことを学べましたが、病棟実習でさらにガイドラインや知識以上に必要な現場の感覚を勉強させて頂くことを楽しみにしております。2週間お世話になりましたスタッフの方々には重ね重ね御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。

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京都大学医学部付属病院血液・腫瘍内科
松井 佑亮

 大阪医療センターでHIV感染症医師実地研修会に参加させていただきました。心より感謝しております。

 HIV感染症は、ヒトの保存本能に関わるものが主要な感染様式であり、そこに予防や治療の介入をすることの難しさがあると思います。医学だけでなく、宗教、倫理、社会、生活など多面的・多角的な見方が必要です。大阪医療センターでは、複数の診療科の医師、看護師、薬剤師、MSW、栄養士、カウンセラーときには通訳の方なども交えチームを組み、複数の視点からそれぞれの患者さんを診ていらっしゃるところが印象的でした。

 また、患者さんの入院の契機となる病態が変遷してきていることを実感いたしました。現在、HIV感染症の治療はARTの出現によりウイルスを完全にeradicate出来ないまでも慢性疾患と呼ばれる状況まで来ています。しかし、一方で腫瘍の発生がひとつの大きな問題となっています。今後のHIV診療を充実させるためには、現在診療に携わっている医療従事者だけではなく、全科にわたる知識の啓蒙拡大が必要であると考えております。

 教えていただいたことを活かして少しでも多くの方のお役に立てればと思っております。ありがとうございました。

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