膝関節外科クリニック
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大阪医療センター
宮本 隆司、岩本 圭史、川島 邦彦

変形性膝関節症(OA)や関節リウマチ(RA)や大腿骨または脛骨の骨壊死(ON)に対する手術的治療法として人工膝関節全置換術(TKA)を、内側型変形性膝関節症や大腿骨内顆骨壊死に対する手術的治療法として単顆型人工膝関節置換術(UKA)を行っています。

@ 最小侵襲手術手技(minimally invasive surgery, MIS)による
   人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty, TKA )

中高年の患者さんが悩まされる膝関節痛の原因として代表的なものに変形性膝関節症があげられます。保存的治療を行っても症状が改善しない場合の手術的治療として、古くは骨切り術という方法によって下肢の外観を内反(O脚)から外反(X脚)に矯正するような手術方法もありましたが、骨癒合までに約2ヶ月もかかるため、現在では膝関節にインプラントを入れて術後早期に歩行を可能とする人工膝関節置換術が主流となっています。この人工膝関節置換術の術後成績も向上・安定化し、今や人工膝関節の耐用年数は15年から20年に達し、それ以上に期待ができるとも報告されてきています。

近年、この人工膝関節置換術を受ける患者数が増加するとともに年齢層も拡大してきましたが、その長期成績の良さに甘んずることなく、さらに傷の大きさを小さくし、軟部組織への操作を極力抑えて、術後の疼痛をより少なくかつ術後の機能回復をより早くしようとする手術概念と手術器械がアメリカで開発されました。これが「最小侵襲手術手技(minimally invasive surgery, MIS)による人工膝関節置換術(total knee arthroplasty, TKA )(図1)」といわれるものです。

当科では2004年に日本でいち早くこのMIS TKAを導入するとともに、ただ単に傷の大きさを小さくし、小型の手術器械を用いてTKAをするというのではなく、真に軟部組織への侵襲が少ない手術進入法を独自に模索してきました。 そもそも従来のTKAの手術では大きく関節切開を加えて膝蓋骨を外側に脱臼(ひっくり返す)させて人工関節を入れていましたが、MIS TKAでは関節切開を最小限にとどめて膝蓋骨を外側に亜脱臼(ずらせる)させるだけで全ての操作を行います(図2)

また、その際に膝蓋骨の近位部(上方)につながる大腿四頭筋および腱に何らかの侵襲を加えざるを得ませんが、その切開部位と方向にはいくつかの方法があります。当科では当時MIS TKAには用いられていなかったtrivector retaining approachという手術進入法に目をつけ、このapproachをMIS TKAに応用できないかと、実際にアメリカに渡って技術を持ち帰りました。このapproachは大腿四頭筋を構成する3方向の成分のうち中央と内側の成分の境界を進入するもので、筋や腱へのダメージを最小限にとどめるものです(図3−右)

さらに、従来のTKAでは大きく関節切開を加えて関節全体を露出して手術を行っていましたが、MIS TKAでは関節切開を最小限にとどめながらもmobile window techniqueといって、小さい傷であるがゆえに膝の内側を操作する時には内側部だけに筋鈎を入れて展開し、外側も同様に外側のみ展開するという手技を駆使します(図4)

実際のMIS TKAの手術手順としては、まず膝前面に約9cmの皮膚切開を加えます(図3−左)。次に膝蓋骨の内側縁に沿って切開を加え、大腿四頭筋腱の内側約1cmに沿って内側広筋を約2〜3cm切開します(前述図3−右)。それによって膝蓋骨を外側に亜脱臼させて膝関節を露出することが可能となります。その後は終始mobile window techniqueを駆使しながら手術を進めます(前述図4)。大腿骨・脛骨・膝蓋骨の順に骨切りを行い、人工関節のそれぞれの部位のインプラントを骨セメントにて固定します(図5、6)。また、当科では全身をシールドした術衣を身に着けて約90分間で迅速に手術を終えますが、さらに空中落下細菌の混入を避けるためにインプラントを固定する前と固定した後にそれぞれ2リットル、計4リットルのジェット洗浄を行い、徹底して感染予防に努めています。ちなみに現在まで2500例以上のTKAを行っていますが、術後早期の感染例は0例です。

また、術後疼痛対策としてクーリングマシンを装着して膝を冷却するとともに、麻酔科の協力により大腿神経ブロックを用いて術後の疼痛を極力軽減するように努めています。さらに、術後安静臥床時に生じる可能性のある深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)の予防策として、弾性ストッキングの装着、フットポンプで足底静脈叢のマッサージを行い、血栓予防薬の投与も行っています。

関節内に留置したドレーンは翌日に抜去し、その日から関節可動域訓練・筋力増強訓練・歩行訓練を開始し、約3週でリハビリのメニューを終了して退院していただいています。 手術では、術前の下肢の外観がたとえ重度の内反(O脚)を呈していても正常へと矯正し、関節辺縁に形成された骨棘(骨性の突出)を切除するとともに、拘縮(固さ)を解離して破綻した靱帯のバランスを整えるため、術後は疼痛が改善するのはもちろんのこと、変形や可動域も改善します(図7)。特に、現在行っているMIS TKAを始めてからは、大腿四頭筋の筋力回復が早く、さらに術後に杖をつく必要がなく、一足一段の階段昇降が可能になっている患者さんが増えています。

 

A 最小侵襲手術手技(minimally invasive surgery, MIS)による
単顆型人工膝関節置換術(unicompartmental knee arthroplasty, UKA)

前述したMIS TKAは末期の変形性膝関節症や関節リウマチの膝に対して行う手術ですが、末期にはまだ至っていない変形性膝関節症や大腿骨内顆骨壊死の膝に対しては、膝の内側部だけを人工関節に換える単顆型人工膝関節置換術(unicompartmental knee arthroplasty, UKA)(図8)をやはりMISにて行っています。

この手術はTKAよりさらに低侵襲であり、切開は約5〜6cmで(図9−左)、術後出血も疼痛も少なく、大腿四頭筋および腱はまったく切開しないため(図9−右)、術後の筋力回復もさらに早く、約2週で退院される患者さんもいます。UKAを受ける患者さんは術前から比較的可動域か良いため、術後に疼痛や変形が改善する(図10、11)とさらに可動域も改善して、中には正座が可能となる患者さんもいらっしゃいます(図12)

 

おわりに

このように当科では人工膝関節置換術に関しては全例にMISを適用し、丁寧にかつ細部にわたってこだわりをもった手術を行うように常に心がけておりますので、おそらく日本で最も進んだ、かつ安定した医療を提供させていただいているものと自負しております。また、実際に多くの患者さんやそのご家族、さらにはご紹介していただいたかかりつけ医の先生方からも大変満足していただいております。
中高年の患者さんで、保存的治療を受けても残念ながら症状が改善しない患者さんがいらっしゃいましたら、かかりつけ医の先生を介して当院の地域医療連携室に診察予約を取っていただくか、もしくは紹介状等なくても直接受診していただいても結構ですので、ぜひ一度当科にご相談ください。

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