放射線治療は、眼に見えない放射線という物質を巧みに操ることで腫瘍性疾患を消滅・縮
小させるものです。うまく使えば手術や化学療法以上に素晴らしい力を発揮します。もちろ
ん欠点もありますから、他の治療との連携が非常に重要です。そして、患者さんの意識があ
る状態で行うことが多いので、患者さんに協力していただくことが必要不可欠です。患者さ
んと同じ目的に向かって一緒に努力していくということを大切に考えています。ですから我
々の最初の仕事は、患者さんとの信頼関係を作ることです。

 
放射線治療は、主人公のいない本当の意味でのチーム医療です。まず放射線腫瘍医が治療を
するかどうか、どれくらいの量の放射線をどこに、どうやって投与するかを考えます
(放射線治療が良く選択される疾患については、当病院のがんのホームページに詳しく掲載
されておりますのでご参照ください)。そのうえで、診療放射線技師や医学物理士が計画・
計算を行い、実行していきます。放射線治療を熟知した看護師が、患者さんが不安なく円滑
に治療に進めるようサポートしていきます。

 
放射線腫瘍医は常勤1名および非常勤1名、診療放射線技師が専任1名およびローテート3
名、看護師
1名で構成されています。2006年のうちに、常勤腫瘍医1名と専任技師1名を増員
予定です。また、近年その必要性が訴えられている医学物理士の常勤採用を目指しており、
資格取得を目指す若手が非常勤で採用され、物理的側面からのサポートをしてくれています
そして、重要な「チームの一員」であるのが治療装置です。直線加速器(リニアック)2
台と第三世代の小線源治療装置(高線量率イリジウム線源)1台が頑張ってくれています。
2000年から2005年末までの間に全ての治療装置・そのサポート機器が更新され、現在、弱点
の少ない、良い状態です。

2005年は体の外から治療する外部放射線治療を3
91
件(新患337名)、体内から直接治療する小線源
治療を
79件(組織内照射70件、腔内照射9件)行い
ました。

外部放射線治療は、乳腺が三分の一を占めていま
す。乳癌の治療方針については、乳腺外科医・病理
医・放射線診断医、化学療法看護師、薬剤師、診療
放射線技師などで構成する集学的カンファレンスで
の討議を通じて決定しています。頭頸部癌について
は、より正確に安全に治療するためにシェルという
固定具や歯科技術を用いた特殊な歯型などを患者さ
んごとに作成しています。放射線治療を熟知した歯
科医との連携の良い点が我々の自慢で、適切なアド
バイスと技術支援を受けることで、患者さんに喜ん
でいただいています。
 また、少数ですが脳腫瘍に対するリニアックを用
いた定位放射線治療も行っています。

 

2005年の外部放射線治療の内訳

 

小線源治療(特に組織内照射)は、放射線の長所
を最も良く引き出してくれる治療です。治療用のア
プリケータチューブを腫瘍病巣を取り囲むように留
置し、コンピュータによる精密な計画を行うことで
、腫瘍に対して短期間に大量の放射線を集中させる
ことができます。通常の外部放射線治療では、治癒
させることが困難な腫瘍でも高い治療成績をあげる
ことができます。

 70件のうち、半数近くを占めるのが前立腺癌で
す。前立腺癌については、ヨード線源を用いた永久
挿入法が有名ですが、当科ではイリジウム線源を用
いて、線源を一時的に挿入する方法を用いています
。この方法のもっとも優れた点は、患者さん以外(
ご家族の方や治療スタッフ)の誰も被曝しないとい
う点です。
また、ヨード線源と比べると、進行した
癌でも治療することができるというのも利点です。
以前は、この治療は内容は良いのだけれども治療中
がやや辛いというイメージがありましたが、
今では

2005年の組織内照射の内訳

 
良されて、治療期間中でも、立ったり歩いたりす
ることが可能になりました。また、当院ではアプリ
ケータを挿入した状態で
MRIなどの撮影を行い、各
内臓の輪郭を精密に把握したうえで治療を行ってい
ます。治療による副作用が以前の方法よりさらに減
っており、患者さんにも貢献できています。

乳癌の方にも臨床試験の形で組織内照射を行って
います。これは短期間に治療できるという点に着目
し、遠隔地に住まれている患者さんや仕事・育児・
介護で通院が困難な患者さんに
1ヶ月以上かかる外
部放射線治療の代わりに行うというものです。乳房
温存手術と同時にアプリケータを留置して、手術後
1週間以内に治療が完了することができます(手術
後に傷口がきっちりふさがってから、留置する
場合
もあります)。ところが、初期に考えた方法で
治療

を行ったところ、2割くらいの患者さんに傷口のトラブルがおきてしまいました。そこで、
方法を改善してからは、安全にできています。

現在患者さんには、その長所と短所を良くご理解していただいたうえで治療をおこなって
います。本邦にはこの治療を行うことのできる施設は少ないという問題がありますので、我
々は何とかして乳癌の患者さんにより多くの治療の選択肢を提供できるよう努力し、安全で
優れた治療であることを立証していきたいと考えています。

ケロイドなどの良性疾患は、本来放射線治療の良い適応とは言いがたいところがあります。
悪性腫瘍以外の方に被曝させるのは、非常に勇気が要ります。しかし、他の治療でうまくい
かないケロイドの患者さんについては治療を行っています。ケロイドを形成外科の先生に切
除していただき、傷口のところにアプリケータを留置します。切除の直後と翌朝に治療をし
て、それでチューブを抜いたら終了です。痛みやかゆみがとれること、美容的に改善される
ということは大きな利点であると考えています。