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 皮膚は表皮、真皮からなりその下に皮下脂肪織があります。
 表皮は数層の細胞からなる薄い組織で、表面から、角層、顆粒層、有棘層、基底層からなります。基底層は1層の細胞より成り、この基底層の細胞(基底細胞)が分裂してこの上の有棘層の細胞(有棘細胞)になります。有棘層は数層の細胞からなり表皮の大部分を構成します。有棘層の細胞は1〜数層の顆粒層の細胞になり、さらに角化した物質になって最外層の角質を形成します。基底細胞の間にところどころメラニン細胞があり、メラニン色素を産生します。
 真皮はコラーゲンなどの繊維組織からなり、微小な血管網、神経を有しています。
 また、皮膚の毛や脂腺、汗腺などの皮膚の付属器も真皮から表皮にかけて存在します。
 皮膚はこのように様々な組織を含みますので、皮膚癌には多くの種類があります。
 ここでは、代表的な皮膚癌、および前癌状態について紹介します。

皮膚の構造(図1)


表皮の構造(図2)




 表皮の基底にある基底細胞から発生する癌です。(図2)
皮膚癌の内最も頻度の高い癌の一つです。

原因
 はっきりした原因は不明ですが、紫外線による光老化が関与しているとされています。その他放射線や熱傷瘢痕が関与することもあります。





●症状

 通常のほくろに比べて青黒く、表面が真珠様の光沢をもつ腫瘤であることが多いようです。潰瘍状のこともあります。 眼瞼や鼻など顔面に好発します。

(図3)

(図4)下眼瞼の基底細胞癌



●病期分類
有極細胞癌(=扁平上皮癌)に準ずる。



●病期と治療方針
 少なくとも 3 〜 5mm 以上離して切除するのが原則です。まれに高齢者などで手術不可能な場合など、放射線を行うことがありますが、根治性で劣ると考えています。 通常、化学療法はめったに行いません。 病期U、Vで補助療法としてシスプラチン、アドリアマイシンを使用することがあります。 基底細胞癌はほとんどが局所に限局するため、病期分類や TNM 分類はあまり意味がないと考えられます。
切除範囲
リンパ節廓清
化学療法
病期T T1 : 5mm
(−)
(−)
  T2 : 5〜10mm
(−)
(−)
病期U T3 : 10〜15mm
(−)
(−)/(+)
病期V T4 : 10〜15mm
(−)
(+)
  N1
(+)
病期W M1
(+)



●予後
 皮膚癌の内最も予後はよいとされています。初回で完全に切除できれば再発率は非常に低くなります。
 転移は非常にまれで、原則としてまず転移しないとされています。
統計では基底細胞癌全体の0.01〜0.1%に転移がありますが、転移するのはほとんどが再発例や巨大な腫瘍の場合です。



 表皮の中間層をしめる有棘層の細胞から発生する癌です。(図2)
 皮膚癌の中でも比較的多いものです。

原因
 はっきりした原因は不明ですが、紫外線、慢性刺激、慢性炎症、ウイルス、放射線などが関与していることがわかっています。




●症状
 表面が疣状やびらんなどを示す皮膚色の腫瘤で、潰瘍状のこともあります。腫瘤が大きくなると悪臭を伴ってくることもあります。(図5,6)


(図5)


(図6)




●有棘細胞癌のTNM分類
T 原発腫瘍
  TX 原発腫瘍の評価不可能
  T0 原発腫瘍認めない
  Tis 上皮内癌(腫瘍細胞が表皮内、粘膜上皮内に限局)
  T1 腫瘍の最大径が2cm以下
  T2 腫瘍の最大径が2cmを越え、5cm以下
  T3 腫瘍の最大径が5cmを越える
  T4 深部皮膚外組織に浸潤する腫瘍

 N 所属リンパ節
  NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
  N0 所属リンパ節転移なし
  N1 所属リンパ節転移あり

 M MX 遠隔転移の評価が不可能
  M0 遠隔転移を認めない
  M1 遠隔転移を認める

病期
  0期   Tis         N0 M0
 I期   T1         N0 M0
 II期   T2         N0 M0
        T3         N0 M0
 III期    T4         N0 M0
        Tに関係なく    N1 M0
 IV期    T,Nに関係なく    M1

病理組織学的分化度
 GX: 分化度の評価が不可能のもの
 G1: 高分化型
 G2: 中分化型
 G3: 低分化型
 G4: 未分化型




●治療
 外科的切除が第一選択となります。病期にもよりますが通常1〜数cm離して拡大切除します。 N1では所属リンパ節郭清も行います。癌の切除後は組織欠損がやや大きく、縫縮は難しいため、植皮や皮弁などで欠損部をカバーします。 放射線治療にも反応しますが、根治性で問題があると考えます。病期U以上では症例によっては化学療法も併用します。病期Wでは症例ごとに変わりますが、外科療法、放射線療法、化学療法を併用した治療になります。 抗ガン剤として、主にペプレオマイシン、ブレオマイシンが使用されています。このほかに、最近ではシスプラチンも併用する方法も行われるようになってきました。



●病期別治療指針
病期 切除範囲 リンパ節廓清 補助療法など
in situ 0.5 cm  
T 1〜2cm  
U 1〜2cm T3では術後補助療法をすることあり
V(T4) 2〜3cm 化学療法、放射線療法の併用することあり
(N1) 2〜3cm 化学療法、放射線療法の併用することあり
      根治的リンパ節廓清
W     化学療法や放射線療法を主体とする集学的治療を行う



●治療による副作用、合併症、手術の後遺症
 鼠径部や腋窩部リンパ節郭清を行った場合、その末梢の下肢や上肢に術後腫れやだるいといった症状が起こります。とくに鼠径部郭清をおこなった場合の下肢の腫れの方が、腋窩郭清後の上肢の腫れよりも強い傾向があります。リンパ節を切除するために、リンパ液の還りが悪くなり、うっ滞し、浮腫の状態になるからです。術後弾性包帯で圧迫をおこない、マッサージを行うなどして症状の軽快をはかります。個人差もありますが、数ヶ月から数年で症状が軽快することがあります。
 化学療法の副作用として主なものは、ペプレオマイシンやブレオマイシンによる肺線維症です。全員に起こるわけではありませんが、比較的高率に見られます。これは肺の組織が線維化して硬くなり、酸素の血液への取り込みが悪くなる状態です。一度肺線維症になると元には回復しません。
 放射線療法の副作用としては照射部位の放射線皮膚炎や皮膚障害が主なものです。頭頸部への照射の場合、一時的に嚥下時のノドの痛みや味覚の消失がおこることがあります。その他、照射部位の組織は治癒力が低下するため、その部位にけがをしたり、手術をしたりすると傷が治りにくくなります。



●予後、転移率
 皮膚癌の内では予後は中等度になります。
 アメリカの統計(Armed Force American Registry of Pathology) によると
  有棘細胞癌全体では遠隔転移は2〜3%
  日光暴露部の有棘細胞癌ではもっと低く0.5%
  ただし転移した症例の75%は致死的である。
 となります。



 ボーエン病は、表皮内癌の一種です。有棘細胞という表皮内の細胞が悪性化し皮膚で増殖していますが、その増殖は表皮の中だけに留まっており、まだ真皮にまでは及んでいない状態です。 原因は不明です。中年以降に発症します。紅くてざらざらしていて円形だったり、いびつな形をしていたりします。見た目が湿疹に似ていることがありますが、薬を塗ってもよくならず、少しずつ広がっていきます。放っておくと深く侵入していきます。手術は、紅いところだけではなくその周り約1cmまでの正常な皮膚も含めて、また深さは脂肪のところで切除します。小さいものは縫い寄せで治せますが、大きいものは皮膚移植が必要となります。切除した後の転移や再発はまれです。



  日光角化症は、長期間にわたって日によく当たったところにできる前癌病変あるいは表皮内癌の一種です。多くは高齢者にみられ、長年紫外線を浴びると発症しやすく、日によく当たる顔や首、腕に出現します。唇にも見られることがあります。1センチくらいの大きさで、ぼんやりとした紅から茶色で、ざらざらしてかさぶたがついていることもあります。放っておくと広がることもあります。手術は、紅いところだけではなくその周り約5mmまでの正常な皮膚も含めて切除します。小さいものは縫い寄せで治せますが、大きいものは皮膚移植が必要となります。切除した後の転移や再発はまれです。



 狭義のパージェット病は、表皮内癌の一種です。パージェット細胞という悪性腫瘍細胞が皮膚で増殖していますが、その増殖は表皮の中だけに留まっており、まだ真皮にまでは及んでいない状態です。表皮の下にまで腫瘍細胞が浸潤するとパージェット癌になります。
 一般にはパージェット癌も含めてパージェット病と呼ぶことが多いです。ここでは癌も含めてパージェット病と呼びます。
 原因は不明です。乳頭や乳輪に生じる乳房パージェット病と、陰部や腋などに生じる乳房外パージェット病とがあります。乳房パージェット病は乳癌と同じように扱われるので、以下では乳房外パージェット病について説明します。
 乳房外パージェット病にかかることが多いのは、60歳代の男性です。陰部や腋などに紅くて湿ったものができ、かさぶたが付いていて、痒みがあります。見た目が湿疹やたむしに似ていることがありますが、薬を塗ってもよくならず、少しずつ広がっていきます。紅いところだけではなくその周り3cm以上の正常な皮膚も含めて広く、また筋膜の上まで深く、さらにリンパ節も併せて、切除しなければなりません。広い範囲の皮膚を切除するので、皮膚移植が必要となります。再発や転移も少なくありません。



●乳房外パージェット病のTNM分類と病期分類(案)
T 原発巣
  TX 原発腫瘍の評価不可能
  T1 腫瘍の大きさにかかわらず、表皮内癌の状態
  T2 腫瘍が基底膜を破って真皮内に微小浸潤
  T3 結節性の浸潤癌で脈管浸襲を伴わない
  T4 結節性の浸潤癌で脈管浸襲を伴う
N 所属リンパ節
  NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
  N0 所属リンパ節転移なし
  N1 片側の所属リンパ節転移あり
  N2 両側の所属リンパ節転移あり
M MX 遠隔転移の評価が不可能
  M0 遠隔転移を認めない
  M1 遠隔転移を認める



●病期
IA期 T1 N0 M0
IB期 T2 N0 M0
II期 T3 N0 M0
III期 T4 N0 M0
  T に関係なく N1 M0
IV期 T,N に関係なく   M1
  T に関係なく N2 M0



●病期と治療方針
  切除範囲 リンパ節廓清 化学療法
病期T 皮膚側 3cm (−) (−)
  粘膜側 1cm (−) (−)
病期U 皮膚側 3cm    
  粘膜側 1cm (+) (−)/(+)
病期V 皮膚側 3cm    
  粘膜側 1cm (+) (−)/(+)
病期W 姑息手術      
  皮膚側 3cm    
  粘膜側 1cm (−)/(+) (+)



●再建法
 主に分層植皮で切除部をカバーします。
 女性の外陰部の浸潤癌については、分層植皮でなく、大腿の内側からの筋皮弁で再建することもあります。

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