【骨肉腫】 骨肉腫は10歳台の膝関節周囲に好発する代表的な悪性骨腫瘍で原発性骨悪性腫瘍のなかではもっとも頻度の高い疾患です。 病名は骨を形成する肉腫という意味です。最も多い型は骨内通常型ですが他にいくつかの亜系があり、骨内高分化型骨肉腫、円形細胞骨肉腫(稀)、表在骨肉腫、傍骨骨肉腫、骨膜骨肉腫、表在高悪性骨肉腫があります。また、放射線照射後などにおこる2次性骨肉腫も知られています。治療は骨内通常型骨肉腫には化学療法と手術を行います。亜系により化学療法を行わないのもあります。転移部位は肺がもっとも多く、肺転移がおこった場合は化学療法と手術を行います。 Fig.1骨肉腫症例のレントゲン 【軟骨肉腫】 骨肉腫の次に多く、大腿骨や骨盤に好発します。組織学的悪性度はグレード1〜3までの3つに分類されています。グレード1では良性の軟骨腫と区別がつきにくい場合があります。通常は手術のみの治療です。また稀に悪性度が急に高くなる脱分化型軟骨肉腫も知られています。 Fig.2 軟骨肉腫のレントゲン 【ユーイング肉腫】 小円形細胞肉腫といわれる疾患群の一つで難治性の腫瘍のひとつです。原始神経外胚葉腫瘍(PNET)は現在ではユーイング肉腫/PNET群として同一疾患群に入っています。骨肉腫よりやや年令が低く大腿骨、脛骨、腓骨、肋骨、鎖骨、脊椎などに発生し、しばしば発熱や白血球増多などの全身の炎症反応を伴います。治療の基本は化学療法で、手術、放射線を組み合わせていきます。転移は肺以外に骨にも多く治療中には厳重な管理をおこないます。当院では、血液内科の協力をえて、末梢血幹細胞移植を併用した超大量化学療法も行っています。 Fig.3 ユーイング肉腫のレントゲン 【臓器の癌】 臓器の癌が骨に転移をおこした病態を転移性骨腫瘍といいます。病変が小さい時には余り症状はありませんが、大きくなると局所の痛みを伴ったり、骨折をおこしたりします。また、脊椎の転移腫瘍が神経を圧迫すると麻痺症状をおこしてくる場合もあります。治療は放射線治療または手術で両者を組み合わせる場合もあります。原発巣は肺がん、乳がん、甲状腺がん、腎がん、肝臓がんが多くまた、骨の転移が最初の症状で後に元のがんが発見される場合もあります。 Fig.4 腎癌骨転移のレントゲン 【血液疾患】 骨に病変をつくる血液の病気としては、成人では骨髄腫とリンパ腫がよくみられます。治療は血液内科でおこないますが、骨の破壊が著しい場合に整形外科手術が必要な場合もあります。また、小児では白血病が発見される場合があります。
【軟部組織】 皮膚、皮下組織、筋膜、筋肉、血管、神経などの臓器以外の軟らかい組織の総称です。
【軟部肉腫】 皮下の脂肪組織や筋肉組織など軟部組織にできる悪性腫瘍の総称です。大腿、下腿、上腕などの四肢に多く、胸壁や後腹膜腔にできる場合もあります。腫瘍の種類は多く、悪性線維性組織球腫、脂肪肉腫、滑膜肉腫、平滑筋肉腫、悪性末梢神経鞘腫、血管肉腫、骨外性ユーイング肉腫が代表的な腫瘍でそれぞれにさらにいくつかの型が存在します。組織学的悪性度(グレード)は、細胞密度、壊死、増殖能により高悪性、中悪性、低悪性の3つに分類されます。転移部位は悪性骨腫瘍と同様に肺が最も多くなっています。
【小円形細胞肉腫】 骨にできるユーイング肉腫以外に、軟部にできるものとして骨外性ユーイング肉腫、横紋筋肉腫があります。病理組織学的にはリンパ腫や小児の神経芽細胞腫と鑑別を要します。 Fig.11 骨外ユーイング肉腫症例
【軟部肉腫】 アメリカでは年間約4500人の発生。全悪性腫瘍の0.7%。
B. AJCC(American Joint Committee on Cancer) Cancer Staging (軟部肉腫) 軟部肉腫を腫瘍の大きさ(5 cm以下を小、それより大きいものを大とする。)と深さ(筋膜を含まずこれより表層にあるものを浅、筋膜より深層にあるものを深とする。
【骨シンチグラム】 テクネシュウムというラジオアイソトープを注射し、約3時間後に全身の骨を検索する方法です。骨肉腫では局所に強い取込みが見られます。原発巣以外の病変を検索するのに有効です。 Fig.5 骨肉腫の骨シンチグラム 【腫瘍マーカー】 骨軟部腫瘍の領域ではその腫瘍に特異的な腫瘍マーカーはほとんど知られていません。骨肉腫で、治療前にアルカリフォスファターゼが高値を示す場合はマーカーになります。またユーイング肉腫でLDHが上昇する時があります。
【生検術】 腫瘍の一部の組織を採取する手技を生検術といいます。生検針を用いる針生検と小切開を加えて行う切開生検の2つの方法があります。 骨腫瘍の場合は針生検で診断する場合もあるのですが、軟部腫瘍の場合にはしばしば組織診断が困難である程度の組織の量が必要で多くは全身麻酔下の切開生検を行うことにしています。また、軟部腫瘍で浅いところにあって小さい腫瘍は腫瘍を全部とってしまいます(切除生検)。病理組織診断が良性であれば治療は終了となります。悪性の場合ですと更に大きな追加の切除が必要となります。
【化学療法】 抗癌剤を用いた全身化学療法(点滴)のことです。骨肉腫では、アドリアマイシン、シスプラチン、イフォマイド、メトトレキセートを、軟部肉腫ではイフォマイド、アドリアマイシンを使います。 【腫瘍広範切除術】 Fig. 6 骨肉腫 【人工関節】 Fig.8 腫瘍用人膝関節(京セラ) 【術中体外照射法】 腫瘍広範切除した組織に放射線を照射し、その後その骨を戻して固定する方法。腫瘍は体外に出された状態で照射されるので切除が正しく行われていれば再発率は理論的には人工関節置換術と同じである。術後の合併症としては感染、骨の癒合不全(照射した骨は死んだ組織になるので生きた骨よりはつきにくい)、骨折がある。 Fig.9 照射骨 Fig.10 術後レントゲン
2) 大腿部軟部肉腫(病期 III) 術前の検査、生検および診断は骨肉腫と同様です。軟部肉腫の場合、術前の化学療法は原則として2回ですが効果がないと判断された場合には1回で手術を行うこともあります。 術後は原則として6回の化学療法をおこないます。
【軟部肉腫】 軟部肉腫の最近の治療成績 (海外) UCLA 5年生存率 71% (当院) 1995年〜2000年 四肢発生の (AJCC stage(特)〜(企)) 軟部肉腫 47 例 3年生存率 89% 5年生存率 71%
【人工関節の耐用性】 腫瘍用の人工関節の歴史は新しく国内では1980年頃より行われるようになりました。初期の頃は、合併症として人工関節のゆるみ、切損、感染、骨折が見られましたが、インプラントデザインの変更や手術手技の改善により合併症の頻度は減少しています。現在は主に骨セメントを用いず、制御型で術中に長さが自由に調整できるタイプの人工関節を使用しています。制御型の人工関節の場合、結合部のポリエチレンが5年から10年の間にどうしても磨耗が生じ、関節の不安定性がでてきます。従って磨耗がでてくるとポリエチレンだけの入れ替えが必要となります。若年者で手術をした場合、術後の経過期間が長いので合併症に対してなんらかの追加の手術が必要になるかもしれません。