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ホーム最新の治療>早期胃がんの内視鏡治療の進歩
-IT(Insulation-Tipped)ナイフの導入-

胃癌は日本人に最も多いがんの1つですが、検診の発達などにより、その約50%が早期(胃の表層(粘膜と粘膜下層)に限局した)がんとして見つかり(欧米では20%)、早期がんでは95%以上で転移がないとされます。
リンパ節転移のない早期がんでは、内視鏡下に胃の表層を切除するだけで根治効果が得られることがわかってきており、手術と比べ体への負担がより小さい治療として注目されています。

このように、胃がんの内視鏡的胃粘膜切除術(EMR)は、転移のない早期がんを対象としますが、転移(特にリンパ節(LN))の有無は、まだ確実にわかる検査法がないため、手術例をもとに、大きさ・形(がん巣内潰瘍(ul)有無も含む)・深達度・組織型の組み合わせより経験的に転移の可能性を類推します。
これらの要素は、術前は内視鏡検査により診断されますが、例えば内視鏡で深達度sm(粘膜下層)とされたがんの正診率は約60%で、内視鏡診断は必ずしも正確でありません。
すなわち上記の因子は厳密には切除標本で決定されるため、内視鏡治療の際できるだけ一括に切除し、正確に術後組織評価をすることが重要です。
このようにEMRは、正確な術後診断のできる切除技術と、転移のない癌の厳密な選択により可能となるわけです。

2001年度版の胃癌治療ガイドライン(下表)によれば、標準医療として、EMRは、"一括切除された2cm以内(陥凹型はul(-))の分化型の粘膜内癌"に行われます。
これに加え、分割切除は癌遺残が多いため臨床研究レベルの治療とされ、前述以外の転移の極めて少ない癌(例えば、分化型・ul(-)で2cm以上、や ul(+)例)に対するEMRも臨床研究として認められています。
一方、胃癌取り扱い規約による根治度の評価では、"完全切除(EA)"として病巣周囲に1mm以上の正常粘膜を含むことが規定され、根治性からも胃粘膜をより大きくとる方法が要求されています。
当院では、平成6年より厚生労働省がん研究班で早期胃癌のEMR適応拡大に関する研究に加わり、現在まで約400症例のEMRを行ってきましたが、根治面だけでなく、適応拡大に必要不可欠な正確な切除後診断という面でも、一括切除が一層重要となってきました。

胃癌治療ガイドライン(2001年度版)
治療 適応の原則 具体的な的確条件 摘要
内視鏡的胃粘膜切除術(EMR) リンパ節転移が殆どないこと。腫瘍が一括切除できる大きさと部位にある。 分化型 M癌、肉眼型をとわず 2cm以下、ただし陥凹型ではUL(−)。 切除標本が再構成できるような分割切除は許容できるという意見がある。

最近、切除技術が大きく進歩してきており、新しく保険収載されたITナイフ(insulation-tipped diathermic knife)を使った方法もこの1つです。
ITナイフは、針状の電気メスの先端に2mmのセラミックの球をつけたもので、メスが筋層を突き抜けて穿孔を起こさないように工夫されています。
IT ナイフを用いたEMRの方法(
図@)は、"お好み焼き"の作り方と似ていて、まず病変の周囲の粘膜を切開し、次に、へらでひっくり返すように、粘膜下層を直接観察しながら、少しずつIT ナイフで切開していきます。IT ナイフ法はがんセンターを中心に800例以上行われ、利点としては、サイズの大きい腫瘍や潰瘍瘢痕を伴う例などでも一括切除できる点です。
出血・穿孔といった合併症の頻度が多いと報告されていますが、方法論は確立されつつあります。
EMRの方法(図@)


治療例の写真

〈症例1〉

〈症例2〉

このように、新しい切除技術により、より正確な治療後評価を得ながら、より大きく胃粘膜を切除することが可能となってきたことに加え、理論的根拠として、治療ガイドラインからも、一括切除を前提に、標準医療・臨床研究としてのEMRの位置付けが明確化してきております。
十分なinformed consentのもと、外科、病理の先生方と合同の術後病理カンファで、最終的な根治度の評価をし、治療を拡げていきたいと考えております。

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