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●超縮小手術を可能にするセンチネルリンパ節生検の臨床応用に向けて
a )背景
癌に対する外科的治療
本邦においては悪性新生物の罹患率ではもともと胃癌の発生率が高かのが、近年では乳がんや大腸がん、肺がんの罹患率が急速に増加しています。本邦死亡原因の第一位である癌の治療対策の促進は国民的要望であり、また急がれる国家的医療課題でもあり、政策医療の重要な一部門です。
原発性癌に対する外科的治療は治療戦略上最も重要な治療法であり、これら原発性癌症例の約6-7割の症例では外科的切除が行われています。外科的切除は通常原発巣切除とリンパ節廓清を行なうことが基本です。しかし、リンパ節郭清は手術侵襲を大きくするため、術後合併症発生の頻度を増し、患者のQuality
of Life (QOL)を著しく損なう原因の一つとされています。原発乳癌症例ではリンパ節転移を伴わない症例は6割であり、不必要な郭清がかなり行われており、乳癌以外の癌疾患でも同様な状況です。癌のリンパ節転移を術前に正確に診断する方法がどの癌腫においても確立されていないために、ほぼ全例にリンパ節廓清は施行されているのが現状です。リンパ節転移を正確に診断できれば、不必要なリンパ節郭清を省略し、術後合併症が少なく、Quality
of Life (QOL)の向上した外科的治療戦略を展開することが可能となります。
b)リンパ節転移診断のためのセンチネルリンパ節生検-センチネルリンパ節仮説原発腫瘍から流出するリンパ流が最初に到達するリンパ節をセンチネルリンパ節と呼びます。癌のリンパ節転移は、原発巣から癌細胞がリンパ流にのってセンチネルリンパ節に到達し、転移が形成され次々と転移が広がっていくと考えられています。それゆえ、センチネルリンパ節に転移が形成されていなければ、それより下流のリンパ節に転移が広がっていないと判断できます。
-センチネルリンパ節の検出方法
色素や少量のTc-99mコロイド製剤を原発巣周囲に注入するとコロイドはリンパ管に流入し、通常ではセンチネルリンパ節に集積します。色素やガンマカメラやガンマプローブを用いて放射能を検出することによりセンチネルリンパ節を容易に検出でき、それらをガイドに容易に摘出することができます。外科疾患領域では乳癌で最も研究が進んでいます。
c)当科での研究の進捗状況
色素法単独ではセンチネルリンパ節の同定率は70%で、センチネルリンパ節に転移なしと判定されながら非センチネルリンパ節に転移を認めた偽陰性率は20%と極めて憂慮すべき結果でした。この反省から2000年11月よりTc-99mコロイド製剤を併用した研究に取り組んでいます。現時点では30例と検討症例がまだ少ないのですがセンチネルリンパ節の同定率は97%で、偽陰性率は0%と満足いく結果です。これは欧米での報告とほぼ同様であります。
d)臨床応用に向けて
欧米ではすでにセンチネルリンパ節生検を利用したリンパ節郭清の省略の是非に対する大規模無作為比較臨床試験が開始されていますが、標準的治療法に組み込まれるのはまだ数年先になるものと思われます。本邦においては種々の障害からこのような臨床試験が全く計画されていません。むしろ、本邦では欧米のevidenceにただ乗りしてセンチネルリンパ節生検が臨床応用されていくものと思われます。最近、欧米だけではなく本邦においても患者サイドからセンチネルリンパ節生検を利用した非郭清手術の申し出が徐々に多くなっています。しかし、まだ臨床的有用性が比較臨床試験で明らかにされていない段階でなし崩し的に臨床応用されることに憂慮する立場から、当院では臨床試験(自主研究)としてセンチネルリンパ節生検を利用した非郭清手術に取り組む準備をしています。
(増田 慎三)
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